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コラム

初めての保育園、我が子に「ごめんね」言わないで 保育士が語る理由

保育園に預け、いざ仕事へ!…と思ってもなかなかしがみついて離れてくれない子ども。現役保育士が対応を伝授します。

子どもを預け、いざ仕事!…と保育園を後にしようとしても子どもが離れてくれないこと、あります=写真はイメージです
子どもを預け、いざ仕事!…と保育園を後にしようとしても子どもが離れてくれないこと、あります=写真はイメージです 出典: pixta

目次

新型コロナウイルスの流行で気ぜわしい日々が続きますが、春は入園シーズン。お父さんお母さんにとっては、「保育園の入園が決まり一安心」と同時に「保育園に慣れてくれるかな?」と、次の心配が頭をよぎる頃です。長年保育の現場で働く私がこの時期、保護者の方に毎年話すのは、「保育園に預けたお子さんが泣いても、謝らないでほしい」ということです。保育園に預けた後に深まっていく親子関係についてもお伝えできればと思います。

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私は、東京都内の認可保育園で園長をしながら、保育士のスキルアップを図る日本保育士研修センターを運営するNPO法人「こども発達実践協議会」の代表理事を務めている河合清美と申します。長年保育の現場にいた私から、初めてお子さんを保育園に預ける保護者の方々に向けたコラムをお届けします。

「ママがいい!」保育園で泣く子ども

4月、保育園では、登園時のお子さんが、「ママがいい!」と、泣く姿をよく見かけます。

「こんなに泣いているのに…かわいそう…」と後ろ髪をひかれる思いにもなり、お母さんは「こんな小さいのに預けていいのかな?」など不安な気持ちになりますよね。 

そんなときはまず、深呼吸をし「大丈夫」と自分にも子どもにも語りかけてみましょう。
「大丈夫」と言葉にすることで、安心感につながります。

ただ、「泣かれてしまうと仕事に遅刻してしまう…」そんなお母さんは、お子さんが遊具に気を取られている間に、そっと行ってしまうこともあります。「気が付かないうちに」という気持ちはわかりますが、この方法はできれば避けたいです。

なぜなら、「お母さんやお父さんがいない」と気が付いた時のお子さんは、「知らない間に置いて行かれた」という気持ちになってしまう可能性が高いからです。そうすると、お子さんの不安はますます大きくなります。

泣いていても笑顔で「行ってきます!」

少し脱線しますが、お子さんがそれだけ泣くということは、お子さんと保護者の方との『愛着関係』がしっかりと結ばれていることを意味します。

出産後、夜中に起きて授乳したり、お子さんが歩けるようになるまでは、抱っこやおんぶを沢山したり、肌と肌を触れ合わせながら愛情を注いできたお父さんお母さん。自分のことより、赤ちゃん優先の24時間が愛着関係を築いてきたのです。

話を戻して……。登園時、お子さんが泣いて離れないときの対応です。

私から提案したいのは、「はじめのうちは泣いてもいい」ということです。
しっかり顔を見て、笑顔で「行ってきます!」と声をかけることが大切です。お子さんが泣いても、「行ってきます」と言い、後はさっぱりと保育園を出てみてください。

泣く気持ちに合わせすぎて長居をするのも、「泣いたらお母さんは行かないかもしれない」と期待させる可能性があります。
仕事を開始するからには保育者の力を借りるべき時です。預けると決めたのですから、思いきって保育者に託しましょう。
 
日本保育士研修センターで活動の一コマ
日本保育士研修センターで活動の一コマ

「ありがとう」の声かけで協力者の意識

また、お迎えのときにも「泣きポイント」があります。

子どもたちは、保護者がお迎えに来た時にも顔を見て、「自分を見て!」と言わんばかりに泣くことがあります。
泣いた顔を見ると「ごめんね」と言いたくなりますが、笑顔で「ただいま。待っていてくれてありがとう」と声をかけ、抱きしめてみてください。 

「ごめんね」という言葉は、「悪いことをしたときに謝る」という意味で理解している子どもが多いですから、その声からは、子どもに被害意識を感じさせてしまいます。

一方、「ありがとう」は「感謝」を意味します。
「ありがとう」の声を聞いたお子さんは「さみしかったし、泣いていたけど、保育園で元気で過ごしていた」という気持ちになり、大好きなお母さん、お父さんの仕事の「協力者」となることを感じていきます

また、子どもはしっかりと抱きしめられると、脳からオキシトシンというホルモンが分泌されます。オキシトシンは別名「愛情ホルモン」と呼ばれていて、安心感で心が満たされます。抱きしめている大人の脳からもオキシトシンは分泌されるので、仕事の疲れも和らぎます。そうすると、その後の時間の過ごし方にも互いにゆとりが生み出されますよね。

「行ってくるけど戻ってくる」、人生の土台に

「行ってきます」と「ただいま」はセットであることを意識して子どもと関わってみてほしいと思います。

 それは「行くけど戻ってくる」という、子どもの認識につなげていくためです。
「行くけど戻ってくる」がわかると、親子の信頼の一部が構築されます。「基本的信頼感」は、今後の人生の土台としてとても大切です。

また、「早く泣かないようになって」と焦らなくても大丈夫です。
保育園の入園をきっかけに、親子関係を「愛着関係」から「基本的信頼感」につなげていくチャンスにしましょう。感じ方は一人一人のお子さんによって違うので、他の子と比べなくても大丈夫です。

「昨日は、泣いていた」「今日は保育士に抱かれていれば泣かずにいられた」――。毎日泣き方が少しずつ変化することを成長の一足ずつとして感じとったり、抱きしめた時に伝わってくる緊張感がやわらいでいくことを感じ取ったり、日々のささやかな変化に目を向けてみましょう。
 
代表理事を務めるNPO法人「こども発達実戦協議会」が運営する、日本保育士研修センターの活動ブログには、保育士向けの「対応事例」も掲載しています
代表理事を務めるNPO法人「こども発達実戦協議会」が運営する、日本保育士研修センターの活動ブログには、保育士向けの「対応事例」も掲載しています 出典:日本保育士研修センターの活動ブログ

入園前に準備できることも

もしかしたら、入園時期までもう少し時間がある方もいるかもしれません。入園前にご家庭でできることもあるんですよ。

例えば、トイレに行くときや預けて買い物に行くとき。
お子さんと少し離れる時間があるときはチャンスです。「行ってきます」「ただいま」の言葉を意図的に使っておくと、「行ってきます」といったん離れても「ただいま」と戻ってくることを覚えていきます。

見える場所にいるかいないかという、「目に見える関係」から、離れていても心はつながっているという「目には見えない関係」をしっかり構築することに意識を向けていくと、「小さいのに保育園に預けてかわいそう」という考え方は、和らいできます。

一緒にいる時間は短いけど、その分強い絆をつくっていけばいいのです。

沢山のことを伝えようとすると、子どもにはプレッシャーがかかります。逆効果になることもあります。
 
①目を見て笑顔で「行ってきます」
②笑顔で「ただいま!待っていてくれてありがとう!」ギュッ
私はこの毎日の小さな積み重ねを丁寧に行うことを推奨しています。
入園の際にこのことをお勧めすると、ゴールデンウィーク前にはほとんどの子が保育園を大好きになってくれます。お子さんには成長していく力があると信じて、入園の時期にだけ感じることができる成長を楽しんでいただきたいです。
 

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