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マスク100万枚寄付、アリババ会長に「中国も足りてないのに……」
新型コロナウイルスが広がる中、中国屈指の富豪でアリババの会長のジャック・マー氏が、マスク100万枚を日本に寄付すると発表したことが、思わぬ波紋を呼んでいます。SNSでは「中国もマスクが足りていないのに……」という声が投稿。ネット上では、マー氏の行動を支持するかどうかアンケートが実施されました。10万人が参加した「投票」結果から、変化しつつある両国の草の根の交流を考えます。
ジャック・マー氏は大手IT企業アリババの創業者であり、会長でもあります。かつて英語の教師を勤めた経歴があり、中国版ツイッター微博のアカウント名は「郷村教師代言人-馬雲」(農村教師の代弁者ー馬雲)。フォロワー数は2555万人を超えています。
3月2日、マー氏は自らのアカウントを通して、写真とともに、日本へ寄付する100万枚のマスクを公開しました。ツイートは2.5万件以上のコメントと108万以上の「いいね」を集めました。
「馬雲回贈日本100万只口罩」(ジャック・マーが日本へ100万枚のマスクを返礼しました)がハッシュタグ付きで話題になり、4.3億のビューと6.1万以上のコメントが集まりました。
ジャック・マー氏のこの行動に対し、「素晴らしい!」「さすがだ」という意見がある一方、「中国もマスクが足りていないのに……」「私はまだマスクを手に入れていない……」などの声も寄せられています。
マー氏の行動に、フォロワー数200万人を超える「鶏毛蒜皮」というアカウントは、投票活動が呼びかけました。
「私たちが新型コロナウイルスを戦って一番たいへんな時期に、日本から多くの支援物資が届けられました。いま、日本でも感染拡大の危機に面しており、馬雲氏が日本へ100万枚のマスクを寄付しました。あなたは支持しますか」
投票には三つの選択肢がありました。
(1)支持。日本はこの前に助けてくれたのでお返しをしないといけない
(2)支持しない。中国国内でもまだ資源が足りていない状態だから
(3)何とも言えない
3月3日の午後6時の時点では、10.6万人が投票。(1)の、マー氏を支持するという意見が9万5千を超える結果となりました。
マー氏の行動を支持する中国の人々の中で大事にされているのが「礼尚往来」(リーサンワンライ=礼を受けたら、礼で返す。礼において「往来」することが大切)という言葉です。
1カ月前、中国で新型コロナウイルスの感染が拡大している中、日本から多くの支援物資が届けられました。物資の箱には「応援する、そばにいる」という意味の漢詩も書かれていたことは、中国で話題になりました。
日本で感染が拡大すると、中国では、「投我以木瓜、報之以瓊瑶」という言葉(※注)とともに、恩返しの機運が高まりました。
※注)『詩経』の一節で、「私に果物をくれて、あなたに玉石を報いる」という意味)
マー氏が送る100万枚のマスクの箱には、「青山一道、同担風雨」(チン・シャン・イー・タオ、トン・ダン・フン・ユー)という言葉が書かれています。
これは、日本からの支援物資に書かれていた「青山一道同雲雨、明月何曾是両郷」(※注)、という詩から変化したものです。
※注)青山がつながり同じ風雨を受け、頭上の明月も一緒のため、違うところ身を置くことを感じていない
マー氏は、マスクの寄付について、アリババとしての行動だけでなく、中国の人々の気持ちの現れだと強調しました。
領土問題、歴史問題でギクシャクすることもある日中関係ですが、新型コロナウイルスに対しては連携の動きが生まれています。在日華人からは「武漢からの恩返し」などと呼びかけ、寄付されたマスクを渋谷駅や武蔵小杉駅などで無料配布する取り組みも生まれています。
大きな危機に対して、国境を超えた草の根の交流が生まれているようです。
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