連載
#37 夜廻り猫
夏休み最終日…「明日が 来なきゃいい」 夜廻り猫が描く居場所
夜の繁華街のカフェで、男の子がひとりでじっと下を見つめています。「明日なんて来なきゃいいのに」。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られ、ツイッターで「夜廻り猫」を発表してきた漫画家の深谷かほるさんが「居場所」を描きました。
心の涙の匂いをかぎつける猫の遠藤平蔵は、繁華街を夜周り中、
男の子がひとり、コンビニのイートインスペースにいるのに気づきます。
「そこなおまいさん、泣いておるな? 心で」と声をかけると、男の子はポツリポツリと打ち明けます。
学校ではクラスメートからいじめられていますが、父には「いじめられるやつが弱い」と言われます。
母はいじめに気づいているようですが、心配をかけたくなくて「ふざけてるだけ」とごまかしています。
「居場所がないんだ」
遠藤はただ隣に座って、男の子の話に耳を傾けます。
明日からはまた学校が始まります。
「明日なんて 来なきゃいいのに」
男の子の言葉に、遠藤はただ「うん」と言葉をかえすしかできなかったのでした。
「子どもの居場所」をテーマに漫画を描いた深谷かほるさんは「つまづいてしまったら、『居場所』はないだろうな……と思います」と話します。
例えば、交通事故に遭ってけがをしたら救急車を呼べますが、
「精神的な危機に陥ったときには、逃げ込める場所がありません。子どもでも駆け込んでいい、休める場所が欲しいです」と指摘します。
「いざという時に避難出来る場所があるということは、子どもだけでなく、あらゆる人に安心を与えると思います」
【マンガ「夜廻り猫」】
猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。
遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。姑獲鳥(こかくちょう)に襲われ、けがをしていたところを遠藤たちが助けました。
ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。
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深谷かほる(ふかや・かおる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。2015年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始めた。第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受賞。単行本5巻(講談社)が4月23日に発売された。
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