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火鍋味の激辛歯磨き粉、中国SNSで話題 「言葉で表現できない辛さ」
火鍋味の歯磨き粉!? そんな冗談のような商品を中国の老舗メーカーが発売し、中国版ツイッターの微博(weibo)で話題です。オンライン限定で4千セットを売り出したところ、その日のうちに完売。高値での転売も始まっています。人気店とコラボし、「中辛」から「変態辛」まで3段階の辛さのラインナップ。中国中央テレビ局(CCTV)も紹介する人気ぶりです。発売の背景をメーカーに聞きました。
話題の歯磨き粉を販売したのは、重慶市に本社がある「登康口腔護理用品有限公司(登康)」です。国有企業で、「冷酸霊(レン・スワン・リン)」という中国では定番の歯磨き粉ブランドを展開しています。
中国の歯磨き粉市場は近年、「高露潔」(コルゲート=Colgate)や「佳潔士」(クレスト=Crest)など海外のブランドがシェアの上位を占め、冷酸霊は全体の1割弱です。一方、「冷」や「酸」が使われている商品名からも分かる通り、知覚過敏対策の歯磨き粉としては評価が高く、この分野で比較すると中国国内市場の6割以上を占めています。
「今年は会社設立80周年であるため、記念イベントの一環として、話題になる仕掛けがしたかった」とマーケティング部の陳華(チェン・ホワ=37歳)部長。冷酸霊の機能性をアピールするため、味覚の刺激になる「冷熱酸甜」と掛け合わせた商品の企画を思い着いたそうです。
その第一弾が「熱」、つまりhot=辛さで、「激辛なら火鍋だ」と四川省成都発の有名店「小龍坎」とのコラボが実現し、火鍋味の歯磨き粉が開発されました。
辛さを出したり、知覚過敏を防いだりする技術は、これまでのノウハウを持つ登康が開発。コラボした小龍坎は、味の監修をしました。より火鍋に近づけるため、山椒のしびれる感覚まで再現させたそうです。
辛さの種類は三つです。まずは、一般の人が受け入れられる「中辛」で、パッケージには唐辛子マークが二つ。次が辛い料理が好きな人が多い、四川省出身者を意識した「四川風微々辛」で、唐辛子マークは四つ。唐辛子マーク六つの三つ目は、中国でも最上級の辛さを示す「変態辛」となっています。
「変態辛」は一体、どれほどの辛さでしょうか。歯磨き粉のチューブを押すと、ゼリー状のペーストの中に赤い粒がいっぱい。この赤い粒が辛さの元だそうです。陳部長に聞くと、「言葉で表現できない辛さですね。四川出身の人は、本当に辛さに強いですから」。ただ、オンラインでは様々な人が買うことを考えて、辛さを少し控えめにしたそうです。
半年以上の開発期間を経た「火鍋歯磨き粉」は、アリババが運営する中国最大規模のECサイト「天猫」で5月10日から発売される予定でした。3種類のセットで、29.9元(約500円)です。
しかし、5月7日に先行発売をしたところ、weiboなどを通じて注目が集まり、15時間で3900セット近い注文が。「予定の4000セットに迫ってしまい、発売日までに完売してしまう勢いだったため、ストップをかけた」と陳部長。本来の発売日だった10日には急きょ、200セットを追加販売しましたが、11秒で完売しました。
そして今、中国のネット上では手に入れられなかった人が商品を欲しがり、転売サイトでの取引もされています。中には、販売価格の20倍近い568元の値付けがされる人気ぶりです。
今回の発売にあわせてweiboで告知をし、ユーザーからも「歯磨きしたら火鍋が食べたくなる」などといった反応があったことから、ある程度の話題性があることは実感していたという陳部長。それでも、「こんなに大きな反響は、予想を遥かに超えました」と驚いています。
中国のSNSで話題になった火鍋味の歯磨き粉。陳部長によると、コラボ先との契約もあり、通常販売する予定はないとのこと。一方、80周年の記念イベントは年間を通じて行われ、「まだまだコラボが続くよ」と話します。
「私たちは『冷熱酸甜』の四つの味覚すべてでコラボをする予定です。今回の熱に続き、冷、酸、甜についても、有名ブランドとコラボする案ができていて、開発を進めています」
他のコラボ商品も含め、日本進出の可能性もあるのでしょうか? 陳部長によると、日本向けの販売をする構想は現時点ではありませんでしたが、最後にこう答えてくれました。
「日本にも『チョコレート味』の歯磨き粉があると聞きました。本場の四川火鍋の歯磨き粉や、ほかの歯磨き粉を使ってみたい日本人がもし多ければ、例えば天猫の国際プラットフォームに商品を置くことも検討していきたいと思います」
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