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AKB48、アジアで異変 どんどん増える「姉妹」、今も人気はあの曲
タイの首都バンコクで1月、AKB48とアジアで活動する姉妹グループ、計7組によるライブがありました。記者はアイドルにうとく、タイやミャンマーなど東南アジアを取材拠点としながら、そんなにグループが増えているとは不勉強ながら知りませんでした。主催者によると、海外の全グループとAKBが一堂に会するライブは初めて。会場で感じたのは、ところ変われど変わらぬファンの熱い思い。そして、「本家」へのリスペクトでした。(朝日新聞ヤンゴン支局長兼アジア総局員・染田屋竜太)
AKBグループの海外展開は2011年、インドネシアのJKT48に始まります。続いてバンコクにBNK48ができました。今回集まったのは他に、ベトナム、フィリピン、上海(中国)、台湾から。
最古参のJKTに関しては、2018年5月にインドネシアのジョコ大統領が「胸がドキドキする」などとツイートして話題になりました。
大統領府によると、ツイートは「担当者による誤り」。ツイートしたスタッフは解任されてしまったそうで、真相はよく分かっていませんが、インドネシアでは大きな話題になったそうです。
タイのBNKも大人気。メンバーは毎日のようにテレビで見かけ、街中でも様々な宣伝用看板を飾っています。
火がついたのは日本でもヒットした「恋するフォーチュンクッキー」で、YouTubeのミュージックビデオは本家AKBに肩を並べる1.6億回の再生回数を誇っています。
2018年には、MNL48(フィリピン・マニラ)、AKB48 Team SH(中国・上海)、AKB48 Team TP(台湾・台北)、SGO48(ベトナム・ホーチミン=サイゴン)の4グループが立て続けにできました。
年末にできたSGO48には、7000人を超える応募があったそうです。
地元のベトナムネットメディアは「当初ははやらないと思っていたSGO48になぜこんなに人気が集まったのか」という記事を掲載。「単に見た目がいいアイドルではなく、みんなで成長を見守ろうという文化が新しかった」と分析しました。
応募者の中から1次、2次の選考ごとに顔写真付きで通過者が発表されたことが、「ファンの応援したいという気持ちを駆り立てた」とみています。
さて、「AKB48グループ アジアフェスティバル 2019」と題されたライブ。会場は「インパクトアリーナ」という、バンコクでも最大規模のホールで開かれました。
午後7時のライブ開始に先立って会場を訪れると、すでに多くの人がホールを取り巻いています。
多く見かけるのは地元・BNKのメンバーの名前が書かれたシャツの人たちですが、中にはAKBメンバーの名前と「大好き!」などと日本語で書かれたシャツやプラカードを持ったタイの人も。
用意された約1万席はほぼ満席で、十数社の報道陣がカメラを構えていました。男性客の方が多いとは言え、女性の姿もかなり多かった印象です。
大音量で開始を告げるアナウンスが流れると、会場全体が揺れました。空気が震える感触がして、オープニング曲が。
ずらっと全てのグループがステージに登場し、歌ったのは、AKBのメジャーデビュー曲「会いたかった」。BNKのファーストシングルでもあります。
観客からは、歌詞の途中にコールが入ります。全ては聞き取れなかったのですが、タイ語あり日本語あり。一緒に歌うお客さんもいて、一気に盛り上がりが過熱します。
曲が終わると、各グループの紹介。AKBメンバーは日本語で、BNKはタイ語で、他のグループは英語でのあいさつでした。
BNKへの声援が大きいのはもちろんなのですが、同じくらい、いやそれ以上に大きな声が上がっていたのがAKBのメンバーが話す時でした。AKBのメンバーが話す日本語は場内放送でタイ語に訳されます。本人の発言からちょっと遅れて上がる歓声が印象的でした。
パフォーマンス中も、スクリーンには、歌っている各グループメンバーの顔写真と名前が表示され、BNKはもちろん、AKBのメンバーの時も会場が盛り上がります。
七つの国と地域の人がそれぞれのグループが応援しつつ、同じ曲を一緒に歌う。
大げさかもしれませんが、「アイドルは国境を越える」なのでしょうか。
これを聞いていて、思いだしたことがありました。本家AKBの「恋するフォーチュンクッキー」のYouTubeで、タイ語でこんな書き込みがありました。
タイではドラえもんのワンピースやシャツを着ている人をしょっちゅう見かけるし、好きな外国料理では、日本料理が6割の人の支持を集めてダントツの1位。親日性を感じることはたびたびあります。
この中に「日本発アイドル」が加わったのかな、そう思わされました。
一時は社会問題とまで言われたAKBの人気は、日本ではやや落ち着きつつあります。ライバル「坂道シリーズ」の人気上昇も話題です。でも、この日感じたのは長姉の貫禄でした。
ライブのアンコールでは、AKBメンバーが「タイといったらやっぱりこの曲でしょう」と言って、「恋するフォーチュンクッキー」を披露。いつまでも歓声が鳴りやみません。
終演後の会場周辺は、バンコク名物の渋滞が輪をかけてひどくなっていましたが、帰途につく観客の表情はとても晴れやかでした。
元気がないと言われがちな日本ですが、AKBグループのアジアでの活躍に学ぶところがあるかもしれません。
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