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けもフレ声優が「一生、面倒見る」と決めた相手 外来動物迎える信念

アニメ「けものフレンズ2」に出演する声優・本宮佳奈さん。外来動物のデグー「きすけ」(右)を溺愛する理由と、育てる覚悟について深掘りしました
アニメ「けものフレンズ2」に出演する声優・本宮佳奈さん。外来動物のデグー「きすけ」(右)を溺愛する理由と、育てる覚悟について深掘りしました 出典: ぷろだくしょんバオバブ提供

目次

 7日に放映が始まる、動物をモチーフにしたアニメ「けものフレンズ2」。メインキャラクター「フェネック」役を務める声優・本宮佳奈さんは、自身も外来動物「デグー」と暮らしています。野生の環境を再現するため、24時間冷暖房が欠かせない生活。ツイッターでは「動物を安易に飼わないで」と呼びかけつつも、「旦那みたいな存在」と言えるほど溺愛しています。「生き物を家族としてお迎えする責任を果たしたい」。本宮さんの信念から、動物を飼う意味について考えてみました。(withnews編集部・神戸郁人、野口みな子)

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「事実婚カップル」ツイッターで名物に

 2017年に大ヒットしたアニメ「けものフレンズ」への出演を経て、知名度を高めた本宮さん。3万人超のフォロワーがいるツイッターアカウント(@motomiyakana)には、自宅で飼うデグー「きすけ」(♂)の話題が、連日のように登場します。


 デグーはチリ原産のげっ歯類で、愛らしい外見と、人なつっこさが特徴です。近年、国内でも人気が高まっています。

 本宮さんはツーショットをたびたび公開。「私の旦那さんです」と「宣言」し、フォロワーからも「事実婚カップル」と呼ばれるなど、今や名物になっています。

 同時に、外来種ゆえの飼育の難しさや、動物と接する時の心構えを発信。安易に飼うことを戒める投稿も少なくありません。今回、背景にある思いについてインタビューしました。

「賢さ」と「可愛さ」のとりこに

――きすけくんが、本宮さんのもとに来たのはいつごろでしたか

 2014年11月です。9月生まれで、今は4歳。デグーの寿命が7~10年と言われていて、人間に当てはめると30~40歳くらいでしょうか。

ケージ内の「部屋」に寝そべり、くつろぐデグーの「きすけ」
ケージ内の「部屋」に寝そべり、くつろぐデグーの「きすけ」 出典: ぷろだくしょんバオバブ提供

――デグーを飼いたいと思ったきっかけは

 直前に、飼っていたハムスターが息を引き取ってしまい、いわゆる「ペットロス」になりました。その時、偶然デグーの動画を見たんです。名前を呼ばれ、駆け寄ってくる姿が印象的で。その賢さや、ハムちゃんにそっくりな姿のとりこになりましたね。

 どこで会えるか分からず、里親募集のウェブサイトなどを調べた結果、あるペットショップで取り扱っていると分かったんです。動物好きの父と、迷わず車を走らせ向かいました。

――きすけくんの、どんな点にひかれたのでしょう

 ショップのサイトに「なでなでが大好きな子」と書いてあって、まさにデグーのイメージ通りだなと。実際に会っても、ただただ可愛くて、一目ぼれしてしまいました。

きすけの魅力を語る時、表情がひときわ明るくなる本宮さん
きすけの魅力を語る時、表情がひときわ明るくなる本宮さん 出典: ぷろだくしょんバオバブ提供

踏まないで!家族で部屋に「壁」を建設

――国内に野生のデグーはいませんが、飼う上で難しい点などありますか

 驚いたのは、「とにかくお金がかかる」ことです。元々涼しい山岳地帯に住んでいるので、夏は24時間冷房を付けっぱなし。一方で寒さも苦手なため、冬になると豆電球型のヒーターをフル活用しています。

 運動量が多いことから、ケージは高さが約100センチある、モモンガやリス用を購入しました。他に大きめの回し車や、伸びた歯を削れるよう「かじり木」も完備しています。コードなどを噛んでしまうこともありますから。

人が来ると近寄り、「ぷりぷり」と鳴いてあいさつするというきすけ
人が来ると近寄り、「ぷりぷり」と鳴いてあいさつするというきすけ 出典: ぷろだくしょんバオバブ提供

――本来の生活環境を再現できるよう、工夫されているんですね

 その通りです!さらに生態を理解する必要もあります。デグーは群れで暮らす動物で、コミュニケーションを大切にするんです。でも、きすけにはデグーの仲間がいません。だから家族がいる時はリビングに放して、話し掛けたり、毛づくろいしたりしています。

 「事件」もありました。一度、母がきすけを踏みそうになったことがあって。行動範囲を限るため、柵とプラスチック製の段ボールシートで、部屋に「壁」を造りました。家族総出で部屋のレイアウトを変えたんです。

 室内でのマーキングへの対応も必須ですね。おしっこで仲間に情報を伝える習性があるためで、きすけは縄張りを主張するためにやるみたいです。部屋の四隅でおしっこをするので、そこに毎日新しいペットシートを置いています。

部屋に設けられた「壁」。きすけは段ボールシートを食い破ったり、すき間から向こう側に出てしまったりすることも
部屋に設けられた「壁」。きすけは段ボールシートを食い破ったり、すき間から向こう側に出てしまったりすることも 出典: ぷろだくしょんバオバブ提供

「ウチにお迎えした以上、わがままで良い」

――もはや、人間がきすけくんに合わせて暮らしている印象です

 おっしゃる通りですね!(笑)でも、私にとっては自然なことと思っています。「好き」という気持ちが原動力なので、何一つ不自由させたくないんです。小学1年の頃から、合わせて12匹のハムスターを飼ってきたことが大きいかもしれません。

きすけを懐に抱く本宮さん
きすけを懐に抱く本宮さん 出典: ぷろだくしょんバオバブ提供

 分け隔てなく可愛がってきたつもりなのですが、きすけをお迎えする直前に亡くなった、「マールくん」というジャンガリアンハムスターは一層特別な存在でした。亡くなったことが悲しくて悲しくて、当時のアルバイト先で涙してしまい、仕事にならなかったほどです。

 声優として芽が出ない期間が長く、両親に言えない弱音を聞いてもらったことが、たくさんあります。一方、時間が無くて十分に構えず、愛情を注ぎきれたか、自信が無い部分もあるんです。

 その分、きすけには、絶対に毎日幸せだと思って欲しい。「ウチにお迎えした以上、わがままで良い」と考えています。

――家族として、日に日に愛情が深まっている様子ですね

 本宮家の人々は、みんなきすけが大好きですよ。話し掛けると、「ぷりぷり」と鳴いて答えてくれますし。元々動物が苦手だった母親も、今では大ファンです(笑)。

きすけの写真集「#デグーのきすけ」。本宮さん自ら撮影を手がけ、飼育情報なども盛り込んだ。昨年夏に同人誌即売会「コミックマーケット」で販売すると、多くの人が買い求めた=神戸郁人撮影
きすけの写真集「#デグーのきすけ」。本宮さん自ら撮影を手がけ、飼育情報なども盛り込んだ。昨年夏に同人誌即売会「コミックマーケット」で販売すると、多くの人が買い求めた=神戸郁人撮影

啓発ツイート、根っこには「もどかしさ」

――本宮さんはツイッターで、「動物を安易に飼わないで」などと呼びかけていますね

 私の投稿を見て、「デグーを飼いたい」を言ってくれる人がいるんです。すごくうれしいのですが、「本当に飼育できる環境にあるのか」ということも、きちんと考えて欲しくて。

 動物って、愛らしいだけではないし、育てる上で困難もある。可愛さを発信するなら、「ちゃんと育てて」と伝えていくこともセットにしないと。お世話を途中で投げ出さず、最後まで責任を持てるのか、自分に問いかけてもらえれば……という思いが背景にあります。

――以前、「私には何もできずもどかしい」ともツイートされていました

 猫が虐待されたというニュースを見た時のものですね。私にできるのは、自分の意見を発信することだけ。直接「やめて」と言えないのが、すごくもどかしく感じられたんです。

 問題が起きた時、「こんな動物は育てられない」と思い込むと、不幸につながってしまう。自分に原因がないか、習性によるものではないかと、一度立ち止まって欲しいと思います。



動物は「帰る意味をくれる存在」

――動物と暮らすというのは、その生き方を人間の都合に合わせ、変えてしまうことでもあります。迎える側に求められる責任とは何でしょうか

 まずは、お迎えする子の過ごしてきた環境や、生態を知ることでしょうか。生活の場を、それに近づけたり、合わせたりすることが重要です。

 犬といった身近な動物であっても、たくさん運動させなければいけないなど、配慮すべきことはたくさんあります。個体ごとに、最善の飼育方法を考えなくてはいけないと思います。

――動物との生活を考えている人たちに、伝えたいことはありますか

 お迎えした子と、ちゃんと向き合って欲しいです!動物は、愛すれば愛するほど、きちんと応えてくれます。

 実はきすけって、最初は人見知りだったんです。でも一緒に過ごすうちに、すごく人が好きになりました。注いだ愛情の分、彼なりに返してくれたのかな、と考えることがあります。

 動物の写真つきツイートを見ると、愛されている子って、顔がキラキラしているんですよね。彼らは本当に、癒やしと、家に帰る意味をくれる存在だと思います!

きすけとツーショットを撮る本宮さん
きすけとツーショットを撮る本宮さん 出典: ぷろだくしょんバオバブ提供

巡り合えた命を、全力で愛する

 出演作のファンとして眺めていた、本宮さんのツイート。ある時、ひときわ熱量の高いメッセージが混ざっていることに気付きました。「どんな動物観を持った人なのだろう」。直接聞きたくて、今回時間をつくって頂きました。

 「デグーをお迎えする」「きすけはペットでなく同居人」。一つ一つの言葉にあふれていたのは、動物への深い敬意です。違う生き物であるがゆえに、ともに暮らす上で避けられない困難。それを引き受けてきた立場からしか、発せられないものと感じます。

 捨てられたペットが野生化し、人を襲った末に安楽死させられるなど、動物を巡る痛ましいニュースが絶えません。そんな中、本宮さんの考え方に勇気づけられる人は多いのではないでしょうか。12年間、愛猫と過ごした経験のある私も、強く共感した一人です。

 巡り合えた命を、全力で愛する。そのことを実践する本宮さんの姿勢が、たくさんの人たちと共有されればすてきだな、と思っています。

(神戸郁人)

◆本宮佳奈(もとみや・かな)

 埼玉県出身の声優。代表作はアニメ「けものフレンズ」「けものフレンズ2」(フェネック)、実在の温泉を題材にしたクロスメディアプロジェクト「温泉むすめ」(有馬輪花)など。1月下旬には、ボードゲームが原作の朗読劇「文絵のために」に出演予定。

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