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脱サラ調教師、笠松競馬で最多勝 ピザ店から転身、馬主に営業メール
ピザ店長から地方競馬の調教師になった男性がいます。先月、笠松競馬では現役最速の500勝を達成しました。 異色の経歴ですが、ここ2年は年間最多勝を獲得。どうしてそんなに勝てるのでしょうか。 「ピザが馬に、お客さんが馬主さんになっただけです。馬主さんに喜んでもらう。サービス精神が勝因です」
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ピザ店長から地方競馬の調教師になった男性がいます。先月、笠松競馬では現役最速の500勝を達成しました。 異色の経歴ですが、ここ2年は年間最多勝を獲得。どうしてそんなに勝てるのでしょうか。 「ピザが馬に、お客さんが馬主さんになっただけです。馬主さんに喜んでもらう。サービス精神が勝因です」
ピザ店の店長から地方競馬の調教師になった男性がいます。4月、笠松競馬(岐阜県)の現役調教師では最速の500勝を達成しました。異色の経歴ですが、ここ2年は年間最多勝を獲得。どうしてそんなに勝てるのでしょうか。脱サラ調教師は言います。「ピザ店も調教師も根本は変わりません。勝因はサービス精神です」
最速記録を達成したのは、愛知県愛西市出身の笹野博司さん(44)。異例の転職後に好成績を残す理由はなんなのか。気になり、競馬場の脇にある厩舎を訪ね、話を聞きました。
なぜ、そんなに勝てるんですか? 単刀直入に聞きました。
笹野さんは「ピザ屋さんの経験が大きいですね。ピザが馬に、お客さんが馬主さんに変わっただけですね」とさらり。
ピザと馬って、同じものなんですか。
「経営という意味で一緒という意味です。店を経営することと厩舎を運営するノウハウは一緒です」
本当にそうなのか。
笹野さんは20歳の頃、ピザチェーンに就職しました。
「地元では初出店だったんです。自分でつくりあげていく、そういうのができると思って」
ピザを焼き、配達もしました。社員数人とバイト約20人を抱える店の店長にもなりました。
一番心がけたのは「お客様第一主義」。
「お客さんに喜んでもらうにはどうしたら良いか。まず電話の応対など接客が大事ですよね。そのためにはバイトに研修を受けてもらいます」
「ただ、うちはチェーン展開です。ルール以外の接客はできません。では、店長の自分はなにができるか。社員やバイトが働きやすい環境をつくる。それしかできないなと思いました」
具体的には、どうしたのですか。
「雰囲気を壊さないことです。バイトを注意しなければならないこともあります。その時はみんなの前でしからない。嫌になってやめてしまったら、それは店にとって大きなダメージです」
「楽しくそして、長く働いてもらう。まかないのピザを焼くとき、メニューにない組み合わせを作りました。パイナップルと塩気のきいたハムとか。わいわい作って楽しかったです。そういうことを大切にしていました」
管理職ゆえの苦労があったんですね。でも、それって、調教師も一緒なんですか。
笹野さんは27歳の時、あこがれだった調教師になろうと脱サラ。乗馬から始め、厩務員として10年の下積みを重ね、2012年に調教師免許を取得しました。
「厩舎を開業したとき、スタッフは私一人、馬1頭でした。でも今はスタッフ6人、騎手3人、馬46頭にまで増えました」
そんなにたくさん! 大所帯ですね。
「そうなんです。自分一人ではすべての馬の管理はできないので、スタッフなしでは何もできません。だからこそ、厩舎運営にも雰囲気作りが大切です。スタッフや騎手を人前で怒らない、それも同じですね」
とはいえ、厩舎の雰囲気を良くして勝てるのなら、誰にでもできそうですが。
「そこで大事なのが、馬主さんとの関係です。調教師になったとき、騎手経験もない自分には馬を預けてもらえる人間関係はありませんでした。だからこそ、預けてもらった馬主さんには電話やLINE、メールで頻繁に連絡を取り合うようにしています」
「ほかの調教師さんはどんと構えている方が多いと思います。接客業にいた自分には調教の技術もない。だから馬主さんの意見はどうなのか聞く。話を聞いて、意見が言いやすい関係を築く。気に入ってもらえれば、こいつに馬を任せてみようかな思ってもらえるじゃないですか」
自らの弱点を、転職前に培った強みで補った笹野さん。信頼関係を築いた馬主から力のある馬を任されるようになり、年間最多勝を2年連続で獲得しています。
でも、中央競馬の大きな壁には跳ね返されてきました。
これまで38レースに挑戦して、まだ勝てていません。
「これからも自分のスタイルを続けていこうと思います。ですが、中央で勝つためにはもっと馬を見る目や騎手を鍛えないといけないと思います。うちの馬で、うちの騎手で中央で勝ちたい。今はそんな夢をみています」
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