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ミシュランより立ち食い寿司 中国の富裕層がはまる「ディープ日本」

レトロ感を演出した立ち食いすし店=東京都港区で、飯塚晋一撮影、2003年11月11日
レトロ感を演出した立ち食いすし店=東京都港区で、飯塚晋一撮影、2003年11月11日 出典: 朝日新聞

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 中国からの訪日観光客は「爆買い」などと呼ばれ、注目されました。最近では、高級化粧品や温水便座などの「モノ」から、温泉・花見やグルメなどを体験する「コト」にニーズが移ってきています。リピーターも増え、多様化していると言われる中国人観光客。立食のすし屋、2万円の革小物、下田港……今、ホットな「ディープ日本」について聞きました。

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超富裕層がならんでも食べるすし屋

 話を聞いたのは中国の旅行会社「伴米」の日本オフィス代表の隋坦(スエイ・タン)さんです。

 「伴米」はSNSを活用した旅行会社です。アプリ上で日本の観光に詳しくユーザーに影響力があるKOL(Key Opinion Leader)がすすめる観光ルートを提供しています。

 隋さんは「見慣れた風景の中から、いつもと違うものを見つける」ことにこだわっています。

 例えば、築地市場は外国人観光客に人気の高い観光スポットで、ガイドブックにはたくさんの人気店が紹介されています。しかし、まだまだ穴場があります。一度、築地を訪れた観光客に人気なのは「地元の人が行くようなお店」だと言います。

築地市場の場内食堂=東京都中央区築地、2016年2月10日
築地市場の場内食堂=東京都中央区築地、2016年2月10日 出典: 朝日新聞社

 その一つが、立ち食いのすし屋「すし兆」です。

 隋さんは「資産が数億元(数十億円)もある富裕層もはまっています」と明かします。

 「おいしいものと言えば、ミシュランの星つきレストランがあります。でも、資産家にとってミシュランに選ばれたレストランで食べることは、それほど貴重な体験にはならないのです。お金さえあれば、誰でもミシュランには行けるので」

 そんな富裕層にとっては、有名なミシュランよりも、穴場のスポットが魅力的に見えるそうです。

 「庶民の味、リーズナブルな価格で、本当に新鮮でおいしいものが食べられることは、富裕層がグルメであることを自慢できるのです」

 「すし兆」はネタが新鮮で、値段は1貫80円からと、お手頃です。立食も「ジャパニーズスタイル」と受け止められ新鮮に見えるようです。長い行列を待たされても文句は出ないそうです。

 「築地の穴場のお店に通うことは、『日本通』になった気分を味わえるようです」

縁起物が飾り付けられ、多くの観光客や参拝客でにぎわう仲見世通り=2017年12月26日午後、東京・浅草、長島一浩撮影
縁起物が飾り付けられ、多くの観光客や参拝客でにぎわう仲見世通り=2017年12月26日午後、東京・浅草、長島一浩撮影 出典: 朝日新聞社

グッチやヴィトンより浅草の革小物

 浅草も浅草寺、雷門、仲見世商店街など、有名なスポットがたくさんあります。

 富裕層の一人を案内した隋さんが、自身も愛用している革小物の専門店「大関」を紹介したところ「ありきたりのものではなく、自分に合ったものが選べる」と好評だったそうです。

 グッチやルイ・ヴィトンなどに比べれば、一見、地味で、価格も一つ2万円以上と安くはありません。ところが、ありきたりのブランド品よりも、ハンドメイドの職人の革小物の方が、富裕層の心に響いたそうです。

 隋さんによると、現在の中国の裕福層は「控えめなぜいたく」を好む傾向があります。歴史のある老舗、職人の手作りなど、ストーリーがあると、特別な思い出にもなります。そんな「体験」を求める人が増えているようです。

老舗洋食屋「グリル・グランド」、客が逃げる裏階段/浅草寺=東京都台東区、2004年1月23日
老舗洋食屋「グリル・グランド」、客が逃げる裏階段/浅草寺=東京都台東区、2004年1月23日 出典: 朝日新聞社

著名投資家が堪能した下田港

 東京以外に出かける訪日観光客も増えています。箱根・熱海は、すでに中国人にとってもなじみのある観光地になっています。今、人気が出ているのは、東京のからの交通の便がよく、ホテルなどの施設がそろっている伊豆です。

 隋さんが、中国の著名な投資家と一緒に伊豆に訪れた時のこと。その投資家は、黒船について「中国であれば、外国人の来航や開港などを屈辱な不平等条約と見るが、なぜか日本はペリーを英雄視しているだろうか」と疑問を持っていたそうです。

 そして、下田を見て回るうち、投資家は「『黒船来航』から日本が鎖国の状況を徐々に打破し、近代化国家を歩みはじめた。日本人がその結果を感謝し、また強い相手を尊敬していたではないか」と考えるようになったそうです。

 観光地としては「渋い」部類に入る下田ですが、投資家は色々な場所を丹念に見て回ったそうです。

 投資家を案内した隋さんは「中国の超裕福層は、買い物のモノだけでも、体験するコトだけでも満足しない。その土地の物語に興味を持つのでしょう。実は日本人も見逃していた魅力を、中国人観光客が再発見してくれることもあるかもしれません」と話しています。

下田港に寄港した豪華客船ル・ソレアル。手前を、黒船を模した遊覧船が横切った=下田市の下田港、2016年4月
下田港に寄港した豪華客船ル・ソレアル。手前を、黒船を模した遊覧船が横切った=下田市の下田港、2016年4月 出典: 朝日新聞社

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