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96億円の資金調達、巨大質問サイトの実力…「バリ島のおすすめは?」

来日中の11月13日、東京・渋谷であったイベントで「Quora」について説明するアダム・ディアンジェロ共同創業者兼CEO
来日中の11月13日、東京・渋谷であったイベントで「Quora」について説明するアダム・ディアンジェロ共同創業者兼CEO

目次

 政治についての質問をしたら、バラク・オバマ前米大統領が答えてくれる? サイトを訪れる人が月2億人以上という知識共有プラットフォーム「Quora」(クォーラ)の日本語版が11月14日、正式オープンしました。最近では投資家たちから96億円もの資金を調達した、世界最大級の巨大Q&Aサービス。その実力は?

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【関連リンク】Quora(クォーラ)の日本語版サイト

豪華な回答者

 何か困ったことがあった際にネットに質問したら、詳しくて親切な人が答えてくれた――。ツイッターやフェイスブックが日本に上陸したてのころ、それは日常的な光景でした。

 ネットの技術や文化に慣れ親しんだ人たちの割合が多かった時代、今に比べると牧歌的な雰囲気でした。でも、ユーザー数が増えるにつれて間違った情報や、相手を攻撃するような投稿が目立つように。そんなネットの状況を嘆く人は少なくありません。

 クォーラは、アダム・ディアンジェロ共同創業者兼CEOらが2009年に米カリフォルニア州で創業し、翌10年に英語版サービスを始めました。「世界中の知識を共有し、その知識を広め深めること」を使命として、2016年以降、スペイン語、フランス語、ドイツ語、イタリア語にも対応してきました。

 ユーザーにはオバマ氏のほか、カナダのジャスティン・トルドー首相、米民主党大統領候補だったヒラリー・クリントン氏、フェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグ氏、ウィキペディア創始者のジミー・ウェールズ氏などがいて、日本人としては片付けコンサルタントとして米国でも人気の近藤麻理恵氏などがいます。

 「フェイクニュース」など、虚実入り乱れた情報が飛び交うネット空間。来日したディアンジェロ氏に、どう対策を取るのか聞きました。

クォーラ日本語版の画面イメージ
クォーラ日本語版の画面イメージ 出典: Quora

どんな実績がある回答者が答えたのかが分かる仕組み

 規模が大きくなることで、デマやフェイクが混ざらないのでしょうか? フェイスブックで初代CTO(最高技術責任者)を務めたディアンジェロ氏は「クォーラは逆に、スケールが大きくなると良くなるような工夫をしています」と自信を見せます。

 まずは実名主義で、その人が学業や仕事でどのような実績を積んできた人かが分かるようにしています。

 次に、何か質問への回答があったら、そのテーマについて専門知識を持っている人たちに対してその回答を示し、それを高く評価するか低く評価するかを選ぶ機能があります。

 そして、その高評価や低評価をつけたのがいったい誰なのか、も見えるようにしてあります。

 「こんな実績のある人がこういう高い評価をしているのならば、この回答は読む価値があるだろう」と判断される、ということです。

場を荒らすユーザーは締め出すことも

 質問と回答者を結びつける機能にも力を入れています。

 人工知能(AI)の一手法である機械学習などのアルゴリズムや、ユーザーから意見を踏まえて、「この質問については、この人に回答してもらおう」というふうに、回答者としてふさわしい人にその質問が表示されやすくなるような仕組みを作っています。

 それでも場が荒れそうな時はあります。

 ユーザーからの通報機能もありますが、ディアンジェロ氏は「本当にそれが問題だということなら、最終的にはその人を締め出します。他のプラットフォームに比べるとかなり高い基準でやっています。会議でも、他の人に対して敬意を表さないとか、その人がいることで会議の質が下がるというような人がいれば、次の時には招待しないとか、その場でご退場願いますよね。それと同じような形です」と話します。

 ディアンジェロ氏のポリシーは「いつも思いやりと敬意を」。投稿する時に、相手への敬意が感じられれば「どのような投稿でも大丈夫だ」とのことでした。

11月13日のイベントでは、来場者らがクォーラについてディアンジェロ氏(中央)に質問できる企画もあった=東京・渋谷
11月13日のイベントでは、来場者らがクォーラについてディアンジェロ氏(中央)に質問できる企画もあった=東京・渋谷

高品質を求める点、日本と合致

 クォーラは今年、投資家たちから8500万ドル(1ドル113円換算で約96億円)の資金調達をしました。主な収入源はこうした投資や、企業からの広告料収入ですが、ディアンジェロ氏は「日本では何年かは、広告はやらないです。とにかく非常に良い質のコミュニティー作りに専念したいので」と話します。

 こうした「質の高い」という表現は今回のインタビューで度々ディアンジェロ氏の口から出てきましたが、アジアで最初に日本語版を選んだ理由も、そこにあったそうです。

 「私自身、日本が好きで何度も来日しているのですが、日本の人はすごくハイクオリティーなものが大好きで、ものを作る時もなるべく完璧に作ろうとするし、作った上でまた改善する。質を重視する、という点で、日本人や日本文化ととても相性が良いと思いました」と語ります。

 「まだネット上にも公開されていないいろんな人たちの頭にある情報にアクセスすることができますよ」

クォーラをやってみた

 クォーラがどんなものか、まずはやってみないと分からないと思い、アカウントを取得してみました。

 最初は他の人たちのやりとりを覗くことから。「一人で起業するのは、複数人で起業するのと比較すると難しいですか?」という質問には、米シリコンバレーの投資ファンドの日本拠点である「500 Startups Japan」の沢山陽平マネージングパートナーが「難しいと思います。まず立ち上げ期にはやることが無数にあります。単純にリソースが足りません。また、社長の役割は究極的にはお金を集めることと人を集めることに尽きます。最初の共同創業者を集めるのに苦労している人が、100人目の社員を採用することができるかというとなかなか想像しづらいのではないでしょうか」などとアドバイスしています。

 次に、質問をしてみました。「休暇でバリ島に行きますが、ここは見た方が良い、食べた方が良い、体験した方が良い、というものは何かありますでしょうか?」(質問をしたのは、火山の噴火前)と尋ねましたが、なかなか回答がつきません。

 調べてみたら、どうやら、「3泊4日くらいで訪問するなら、どこの東南アジアの国がお薦めですか?」という似たような質問があり、そちらの方には回答がついています。日にちは詳しく、地域はやや広めに質問した方が回答しやすいのかもしれません。他の人たちの質問内容をチェックすることも必要なようです。

 逆に回答者にも挑戦してみました。私は、大学時代は東南アジアの歴史を専攻していました。「東南アジアの料理ではどこの国の料理がお薦めですか?特におすすめの料理も教えてください」という質問に、マレー系、中華系、インド系、西洋系と様々な食事が楽しめるマレーシアを推薦しました。すると、別のユーザーから高評価がつきました。自分の回答にリアクションがあるのは、やはり、嬉しいものです。

 クォーラに関する質問については、同社の日本コミュニティ責任者のフリーデンバーグ桃紅さんも回答しています。

 英語版と比べると、まだ質問数、回答数ともに発展途上なところはありますが、まずは身近な質問や回答からしてみると、ユーザー間のやりとりの面白みを味わえそうです。

朝日新聞社の単独取材に応じるディアンジェロ氏
朝日新聞社の単独取材に応じるディアンジェロ氏

 Adam D’Angelo 1984年8月14日生まれ。12歳でプログラミングを始め、ゲームなどを作っていたという。高校在学中の2001年に米国コンピューティングオリンピック8位入賞、02年国際情報オリンピックで銀メダル。カリフォルニア工科大学でコンピューターサイエンスの学士号を取得。フェイスブックでは06~08年にCTOを務めた。日本の自然や食べ物が好きで、好きな日本の食べ物はとんかつやウナギなど。

 クォーラは「人々が集まり、合意を形成する」という趣旨から、「議決に要する定足数」を意味する「quorum」という単語が由来になっている。

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