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あれっ?オチがない、でも涙が… スペースワールド動画に意外な展開
今年いっぱいで閉園する北九州市のテーマパーク「スペースワールド」の新CM。これまでの路線を転換して、思わずグッとくる内容になっています。
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今年いっぱいで閉園する北九州市のテーマパーク「スペースワールド」の新CM。これまでの路線を転換して、思わずグッとくる内容になっています。
今年いっぱいで閉園する北九州市のテーマパーク「スペースワールド」。閉園を発表してから「なくなるョ!全員集合」というCMを流したり、魚5000匹を氷漬けにしたスケートリンクで批判されたことを逆手に「今年はなんと、普通のスケートリンク」とPRしたり、なにかと話題に上っています。そんなテーマパークの新CMが、これまでの路線を転換して、思わずグッとくる内容になっています。なぜなのか? 広報担当者に話を聞きました。
スペースワールドは1990年、新日本製鉄が八幡製鉄所の遊休地にオープンさせた施設です。
国内初の「宇宙」をテーマにしたレジャー施設でしたが、入場者数は低迷。2005年に民事再生法の適用を申請し、レジャー会社の加森観光(札幌市)が経営を引き継ぎました。
昨年11月には、約5000匹の魚を氷漬けにしたスケートリンクがインターネット上で「残酷」などと批判されて中止となり、注目を集めました。
その一方で、閉園が決まってからは積極的なPRを展開。
ザ・ドリフターズのコント番組を彷彿とさせる言い回しで、「なくなるョ!全員集合」と呼びかけるポジティブなCMを制作したり、スケートリンクの件を逆手にとって「今年はなんと、普通のスケートリンク。今年は何もいません!」というCMを流したり。
これらのCMに対して「自虐感半端ない」「やけくそ感最高ですよね」といった声が寄せられ、ネット上でたびたび話題になっています。
そんなスペースワールドの新テレビCM。園内のベンチに腰掛けたおばあさんが映っていて、その周りで来園者が楽しそうにすごしています。そして、こんな文字が画面に大写しになります。
「30秒CMなのに15秒の広告枠を買ってしまいました。完全版はWebでご覧下さい」
この時点ですでに笑ってしまいますが、これまでの流れからしても、きっとWebの完全版にオチがあるに違いないと期待が高まります。
いざ、YouTubeで動画を確認すると、期待を裏切られました。
動画の冒頭は、テレビCMに登場したおばあさんがベンチに腰掛けている場面から始まります。周囲で楽しそうに来園者がはしゃいでいます。
そっと見守るおばあさん。通りかかった青年の顔を見て、思わずハッとします。思い出すのは彼が幼かった頃のこと。
「わー、乗りたい!」と子どもが若き日のおばあさんのひざの上に乗ってきて、「ゴトゴトゴトゴト」とおばあさんが抱えながら、遊んであげたことを回想します。
青年が通り過ぎようとした時、思わず目を伏せたおばあさん。すると青年は立ち止まって「あのっ! 最後に乗ってもいいですか」と声をかけます。
大きくなった彼をひざの上に乗せて、昔と同じように「ゴトゴトゴトゴト」と揺らして遊ぶおばあさん。すると場面が切り替わり、青年がジェットコースターに乗っている様子が映されます。
実はこのおばあさん、スペースワールドの「ブギウギスペースコースター」だったのです。
歓声を上げながら楽しそうに乗車する青年。再び場面はベンチでたたずむおばあさんに戻ります。
整備員らしき男性がおばあさんの腰や肩をさすりながら「27年間お疲れさまでした」とお辞儀すると、おばあさんが笑顔でうなずき、動画は終わります。
この動画に対して、「完全版見たら泣いてしもた」「切ない。27年間お疲れ様でしたのセリフは涙がでますね」といったコメントが寄せられています。
これまでの路線と違う動画を制作したのはなぜなのか? 広報担当者はこう説明します。
「いよいよ最後が迫ってくるなかで、おちゃらけたものだけでなく、しっかり向き合ってもらえるものを作りたかったんです。それで開園当初からあるコースターを主人公にしました」
現在稼働しているコースターの中では「タイタンMAX」「ヴィーナスGP」「ザターン」の3つが人気ですが、あえて「ブギウギスペースコースター」を主役にしたそうです。
当初は「スペースコースター」という名前でしたが、6年後の96年に、前3両を前方向き・後ろ2両を後方向きの構成に変更したのを機に「ブギウギスペースコースター」と改名。開園から27年間にわたって親しまれてきました。
「地味なコースターではありますが、思い入れのある人がきっと多いだろうと思ったんです」
ネット上では「本当に閉園するの?」「リニューアル説もあるかも」といった声も上がっていますが、広報担当者はこう言います。
「閉園が決まっているからこそできるCMです。閉園することは既定路線ですから」