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中国人店員が戸惑う…家電量販店の「しきたり」日本人、毎日なんで?
家電量販店には多くの外国人買い物客が訪れ、様々な商品を買っていきます。店内にある免税カウンターは、そんな外国人買い物客で毎日、混み合っています。そして、爆買い客の応対をするのも、同じ中国人の店員です。美容グッズが飛ぶように売れる一方、以前、人気だった「あの商品」は下火に。家電量販店の免税店カウンターから見た日本について聞きました。
話を聞いたのは、中国江蘇省・蘇州市出身のミョウさん(22歳)です。父親の仕事の関係で、子どものころから日本人の知り合いがいて、大学は日本に進学したいと決めていたそうです。2013年に高校を卒業して来日、日本語学校を経て、現在は都内の私立大学の経営学部3年生です。
経済的には困っていないそうですが、家電量販店の免税カウンターは中国語だけでなく、英語も鍛えられるため、働いているそうです。
働きはじめて、まず、戸惑ったのは「唱和」(しょうわ)でした。
売り場に出る前に、接客用のあいさつ文を日本語、英語、中国語で話さなければならないのです。
「最初は慣れませんでした。一人で『唱和』し、小さい声しか出なかったです」
驚いたのは、日本人の従業員が数人グループで、大きな声で「唱和」をしていたこと。日本人の店員は「唱和」を通して、簡単な中国語を話せるようになっていたことを知ります。
ミョウさんは「中国にいた時から、日本のサービスが素晴らしいと聞いていましたが、『唱和』のような積み重ねがあったんですね。従業員たちの必死な働きを知りました」と話します。
実際に日本に来て、自分がサービスを提供する側になると「感覚が全く違った」そうです。
「日本人のお客さんは、とても真面目です。店員の自分もミスがないよう、常に緊張感を保たなければなりません。間違いがあれば、クレームが来てしまいます。中国だと多少の融通が利くし、お客さんも完璧なサービスをあまり求めていないですが……」
免税カウンターは同じ中国人を相手にするため、日本人ほど緊張はしないそうです。
「中国人のお客さんが気軽に声をかけてくれるケースもあって、働きやすい雰囲気です。同僚にはうらやましいと言われたことがあります」
忙しくなるのは10月の大型連休で、中国の建国記念日に当たる「国慶節」です。店内は中国語の看板や商品説明が至るとこにあり、中国人の買い物客であふれます。
免税カウンターの業務だけでなく、売り場で商品の説明をしたり、通訳の作業をしたりすることもあります。
「週末や祝日出勤の場合、給料も少し上がります。でも、仕事が多すぎるので、出勤したくない言う友人もいますよ」
今の量販店の免税カウンターでは約4カ月働いています。
「カウンターに来るのは約7割が中国大陸からのお客さんです。台湾と香港は合わせて1割から2割くらい。それ以外は、東南アジアと欧米という感じです」
買う物は国によって違いがあるそうです。
「東南アジアのお客さんは、歯磨き粉や防虫・殺虫剤関連の商品がよく売れます。欧米のお客さんは、量が少なく、大量買いはしませんね」
お店にある、いかにも日本っぽい富士山などのTシャツや和紙、筆などを買うのは主に欧米人のお客さんで、中国人客はほとんど買わないそうです。
中国人のお客さんは今も大量買いが多く「平均の購入額は、大陸からのお客さんが5から10万円、台湾や香港からのお客さんは、1から2万円くらいです」。
「100万円近くする商品を買った中国人のお客さんがいましたが、その時は、上司が出てきて免税手続きをしました」
免税店カウンターから見た中国人の人気商品は、どんなものでしょう?
最近、よく売れているのは、美容機器、エステ関係の商品。一つ3万円くらいはする美顔ローラーなどは女性客に人気があるそうです。
「お客さんは美容グッズの情報をインターネットでチェックし、口コミで評判のよいものを、実際の店舗で買うことが多いですね」
男性の人気商品は、ひげそりです。値段は数千円台などが多く、美容グッズよりは少しお手頃です。
最近、人気があるのは電動歯ブラシ。本体だけでなく、替えのブラシを4個か8個かセットで買って帰るお客さんが多いそうです。
意外な人気商品もあります。
オムロンの上腕式血圧計や、マッサージクッションなど、健康グッズも人気があるそうです。「中国人の健康意識の高まりと日本製品への信頼が理由だと思います。メイド・イン・ジャパンにこだわっており、他の国で作られたものだとわかると買わない人が多いです」。
日焼け止めクリームや、液体ばんそうこう、さらに目薬も人気です。同じ商品を10個、20個とまとめ買いをする人が多いそうです。
逆に、人気が落ちた商品もあります。酵素です。働きはじめた当初は、数十箱を買うお客さんもいたそうですが、今は、ほとんどいません。
「他の美容製品に目が奪われているでしょうか。ブームが過ぎてしまったという感じですね」
もう一つは馬油です。スキンクリームやローションなど馬油関連の商品も多く、中国人のお客さんの必須アイテムのような存在でしたが、いつの間、ぱったりと売れなくなったそうです。
「やはりブームということで、はやり廃りがあるのでしょう。これから寒くなりますので、馬油の売れ行きも少し回復するかもしれません」
現在は大学3年生のミョウさん。周りに就職活動を始めた同級生もいますが、大学院で経営学を学ぶか、MBAを目指すことを考えています。
将来的に日本で就職するかどうかはわからないそうですが、日本と関わる仕事はしたいと思っているそうです。
「家電量販店で働き出したのも、日本での仕事を体験してみたいという気持ちがありました。今後は、大手企業のインターンも探す予定です」と話しています
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