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蓮舫問題「見るのが切ない」 母親が台湾人の音楽家RAM RIDERさん
民進党の蓮舫氏が戸籍情報の一部を開示したことに複雑な思いを抱いているミュージシャンがいます。日本人の父親と台湾人の母親をもつRAM RIDERさん(39)。V6やNegiccoなどへの楽曲提供で知られるRAMさんは、これまで政治的な発言はさほどしていませんでした。しかし、「二重国籍」問題で飛び交う激しい言葉のやり取りに違和感をおぼえ、ツイッターで「見るのが切ない」と告白しました。異なる意見を持つ人同士が歩み寄るにはどうすればいいのか? 話を聞きました。
「蓮舫さんの台湾籍についてのニュース、うまく言えないが報道で叩かれているのをみるのが切ない」
前回の民進党代表選のさなかの2016年9月上旬、RAMさんは自身のツイッターで、そんな投稿をしました。
この件についてはその月の下旬、連載を担当しているお笑い芸人の水道橋博士さん主宰の有料メールマガジン「メルマ旬報」でも、日本人の父親と、台湾人の母親をもつ出自を明かしながら、なぜそのように思うのか、などについて約6千字の長文を記しました。
蓮舫さんの台湾籍についてのニュース、うまく言えないが報道で叩かれているのをみるのが切ない。公人なので仕方ないが個人的には気の毒だな。帰化ならともかく二重国籍からの国籍選択はことの重大さに比べて書類はシンプルで、15歳を過ぎると22歳までに本人がやるしかない。親次第ってとこもある。
— RAM RIDER (@RAM_RIDER) 2016年9月7日
「自分の音楽は、音楽単体で楽しんで欲しい」という思いもあり、元々は政治関連について積極的には発言してこなかったRAMさん。
「メルマ旬報」では、「民進党を支持しているわけでもなければ、蓮舫議員の政治信条に特に共感しているわけでもない」とも記しています。
それでもなお、そうしたことを書かざるを得ない、と感じたのは、「自分自身に直接火の粉がかかる可能性を感じた」ためだそうです。
「スパイの可能性があるんじゃないか」「国益に反することをするのではないか」「とっとと戸籍見せろ」「出しただけでは終わらないぞ」
昔からの友人たちのソーシャルメディアへの書き込みを含め、二重国籍であることを理由とするこのような言説を目にしたRAMさん。自分と同じ国籍の異なる両親をもつ人間に対して、「日本の要職に就くのであれば、自分のアイデンティティーの半分を否定しないと受け入れないぞ、という土壌が日本の社会にある」と感じたそうです。
少子高齢化を原因とする労働力不足を背景に、移民の受け入れの是非が議論される中、将来的には日本に様々な国のルーツを持つ人たち、そしてその人たちと日本人との間に生まれた人たちが増えていく可能性があります。
そんな中で、日本人の両親を持つ人たちが、いわゆる「純血主義」に傾くとどうなるのか。
RAMさん自身は音楽家として活動していますが、もしかしたら社会問題に強い関心を持ち、政治活動をする人生もあったかもしれません。
自身の親族や、全く面識のない人たちも含め、日本以外のルーツがある人たちに「日本に不利益なことをする可能性があるから、出自を証明しろ」と突きつけるような社会になって欲しくない、という思いもあったそうです。
RAMさんの母親は、日本語が片言だそうです。子どもの頃、友達に「お前の母ちゃん、日本語変だな」と言われたことがあり、それが「恥ずかしくて、嫌だった」と言います。
もし彼女が欧米系で英語なまりの日本語であれば、「片言でも恥ずかしいとは思わなかったかもしれない」と考えます。
「アジアでは日本が一番上で、その他のアジア諸国出身の親を持つ子どもは、日本人同士の親から生まれた子どもよりも一段、落ちた扱いになる」
RAMさんは、幼い頃の経験から、そのような感覚を持つ人たちも日本にはいて「自分自身もその価値観の影響を受けてしまっていたためではないか」と振り返ります。
それが私立の中学・高校に通い、クラスメートを見渡すと、ブラジルやインドの血が入っている友人がいる。両親とも韓国人の同級生は日本語しか話せない。様々なルーツを持つ人たち同士で社会が成り立っていることを知ります。
その結果として、いわゆる台湾語も北京語も英語もできて、日本でビジネスをやっている母親のことを「すごい人だな」と敬意をもって見るようになったと言います。
今回の蓮舫氏の問題を受けてRAMさんが求めるのは、意見が違う人同士が歩み寄る社会です。
RAMさんは今回の問題が大事になった一番の根本は、「蓮舫氏の説明が二転三転したこと」に尽きると考えています。
だからこそ、与党を支持する人たちも、野党を応援する人たちも、そして特に支持政党がない人たちもみな、「戸籍情報の一部を公開する」という特殊な行為は「第一野党の党首」という特殊な立場だからやらざるを得なかったことなのだ、という共通認識を持って欲しい、と願っています。
「自分も半分のむから、あなたも半分のんで、ということだと思うんです」とRAMさん。
蓮舫氏が戸籍情報の一部を出したことについて、「僕は心底嫌だけれども、ただやっぱり政治家として、立場のある人としてあれをやったのは特殊なケースで、仕方のないことだということはのむので、一般の人が同じようなことを要求されないように、それは社会みんなで努力していきませんか、ということだと思います」と話します。
意見を異にする人たち同士の対立を解消するためには「自分と反対の意見を持つ人たちと話してみないとできない」と言うRAMさん。
そして、彼ら彼女らの意見を理解した上で「こっちの主張が1、2割くらい伝われば良し、としないとダメだな」と考えているそうです。
「結局、みんな恐怖心があるわけですよね。僕で言えば、半分は日本人ではないということで、いわれのない迫害を受ける可能性があるのではないか、という恐怖があるし、日本人同士の両親の子どもからすると、そういうルーツの違いとか二重国籍の人に対して、日本から何か持ち去られるんじゃないか、という恐怖がある」
そして、RAMさんは「そこはもう、対話で誤解をなくしていくしかないと思う」と強調します。
「男性も女性も、同性愛者の方でもトランスジェンダーの方でも、日本人でもハーフでも外国人の人でも、自分の言いたいことを言えて、職業の機会に等しく恵まれる社会が良いと思っています」
RAM RIDER(ラムライダー)1978年7月17日、東京生まれ。Perfumeをプロデュースする中田ヤスタカさんや、きゃりーぱみゅぱみゅさんもいる芸能事務所アソビシステムに所属。早稲田実業学校高等部(東京)時代から作曲の仕事を始め、浜崎あゆみさんなどの曲のリミックスや、V6、Negiccoなど著名アーティストへの楽曲提供で活躍。DJ活動や、自身がボーカルを務めるCDのリリース、ライブ活動も展開する。一般人の友人マツモトさんと対話形式で進めるインターネットラジオの音楽情報番組「オーディオギャラクシー」は現在、毎週火曜午後10時から、Mixlrというアプリなどで聞くことができる。
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