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お金と仕事

うつ体験公表したカナダの女性議員 激務でも「無理しない」生き方

うつ病の体験を公表したカナダの国会議員、セリーナ・セザル・シャヴァーンさん
うつ病の体験を公表したカナダの国会議員、セリーナ・セザル・シャヴァーンさん

目次

 自らのうつ病の体験を公表し、理解を広めようと活動している国会議員がいます。といっても、日本ではなく、カナダの話。国際開発大臣政務官を務めるセリーナ・セザル・シャヴァーンさん(42)は2016年9月、うつ病であることをブログで明かし、大きな反響を呼びました。3人の子どもを育てる母親でもあるシャヴァーンさんに、思いを聞きました。

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シャヴァーンさんが体験を公表したブログ(ハフポスト・カナダ版)

選挙後に症状、「なぜ私が……」

 コンサルタントとして活動していたシャヴァーンさんは2015年総選挙で当選して国会議員になりました。ヘルスケア・マネジメントのMBAも取得しており、健康問題の専門家でもあります。

 ブログによると、シャヴァーンさんは14年秋の補選で敗れた後、ベッドから出られない、シャワーや歯磨きができないといった症状が出て、うつ病と診断されました。当選後の16年2月、首都オタワでミーティングに限界が来て救急に駆け込み、そのまま電車で地元へ戻って数日間入院。その後も苦しい時期が数カ月間続き、同僚に攻撃的なメールを送ったり、夫と争う日々でした。

 その時の心境について、「素晴らしい仕事にも、家族にも恵まれているのに、なぜ私がこんなことになるのだろう、と自問し続けた。深く、暗い穴の中にいるよう。どんなに努力しても、その穴は深く、広くなっていくばかりで、永遠に抜け出せないのではと感じた」とつづっています。

インタビューに応じたシャヴァーンさん
インタビューに応じたシャヴァーンさん

自分を責めることをやめたら、変化が

 ある日、起きられない自分を怠惰だと責めることをやめ、「それでいいんだよ」と自分に語りかけた時、変化が。病気も自分の一部であることを認め、折り合いをつけることができるようになったといいます。

 今は体調に気を配りつつ、国際開発大臣政務官という激務をこなしています。5月にはアジア開発銀行の総会のために来日。分刻みのスケジュールの合間に、インタビューに応じてくれました。

インタビューに応じるシャヴァーンさん
インタビューに応じるシャヴァーンさん

体験を公表「予想以上の反響」

 ――体験を公表することに、ためらいはありませんでしたか

 もちろん、とても怖かった。ブログを投稿する直前、自分に問いかけました。「公表したことで、次の選挙で負けてもいいの」と。答えは「イエス」。政治家の仕事は、人を助けること。私のような立場の人間が体験をオープンにすることで、ほかの人たちも自分の不調に気づき、健康を気遣う機会になると思いました。

 ――反響は

 予想以上でした。多くの人たちから「助けてくれてありがとう」と声が届いた。体験の公表がこんなに意味を持つのは、心の病の場合、単に治療をするだけでなく、偏見とも戦わなければならないことの表れでもあると感じます。

 私の体験から伝えたいのは、自分が問題を抱えていることを認識し、自分は完全ではない、弱い存在だけれど、それでいいと認めることが大切だということ。調子が悪い時は5分休んでリラックスし、他の人に助けを求めてほしい。それから、セラピーでもヨガでも、自分を癒やす方法を試してみること。そうすれば、私のように3日間も入院する必要はなくなるでしょう。

インタビューに応じるシャヴァーンさん
インタビューに応じるシャヴァーンさん

多様性を重んじるカナダ、強さの源

 ――トルドー政権は、閣僚の半数が女性。元難民や障害者もいるなど、多彩ですね

 私がうつ病の体験を公にできたのは、そういう環境のおかげでもあります。

 トルドー首相は、女性が議論に加わることや、多様な視点を保つことの大切さを強く信じています。自分が何を知らないかをよくわかっていて、他者の経験や知識に敬意を払うことができる、優れたリーダーだと思います。

 カナダでは多様性を重んじており、それが国の強さの源だという共通認識があります。私自身、黒人であることや女性であることを長所だとは感じても、引け目に感じることはありません。

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カナダのトルドー首相=ロイター
カナダのトルドー首相=ロイター

無理をしない生き方「自分自身への責任」

 ――日本では女性の政治家が少ないのが現状です。変えられるでしょうか

 もちろん、女性が望みさえすれば。もし、「自分はできるだろうか」と不安があっても、挑戦してほしい。きっと大丈夫です。

 私の場合も、壁はむしろ、自分の自信。自分はちゃんと準備できただろうか、と不安になることはあります。そのたびに「イエス」と自分に言い聞かせています。

 環境作りも大切。「女性だから」という理由で選ぶのではなく、多様な経験を積んだ人の意見を取り入れるという視点が必要です。

 気候変動、高齢化など、多くの課題の解決のためには、違う視点の人たちが議論に参加することが求められます。性別だけでなく、民族や人種などの多様性を生かすことが、将来に向けた課題解決につながるのです。

 ――政治家と言えば多忙なイメージ。病気になった後、働き方は変わりましたか

 本当に忙しいです!でも、無理はしないようになりました。

 例えば、今回の来日後は、帰国後すぐに別の会議に出席する日程が組まれていたので、「一度地元に帰って、家族に会う時間を作りたい」と断りました。「私には仕事への責任もあるけど、自分自身への責任もある。自分の体のことはよくわかっているから」と。

 東京には、娘も一緒に来ました。トルドー首相自身も、外遊先に家族を同行させているので、引け目を感じることはありません。家族の存在は、バランスを保つのにとても重要です。

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