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#6 教えて!超常現象記者!

「世界が滅ぶ」マヤ予言はどこいった? 専門家が語る予言のカラクリ

専門記者がこたえます
専門記者がこたえます

目次

 「世界が滅びる」から「大災害が起きる」まで、今も昔もいろんな予言が生まれては消えていきます。少し前には「マヤの終末予言」っていう言葉をよく聞きましたよね。そういえばあれって、どうなったんだっけ? 専門家に聞きました。(朝日新聞東京社会部記者・原田朱美)

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皆神龍太郎さん
皆神龍太郎さん 出典: 朝日新聞

 皆神龍太郎さん(ペンネーム)です。
 超能力から、ネッシー、ツチノコ、死後の世界、生まれ変わり、水素水、ホメオパシーまで。超常現象かいわいのテーマを30年間取材し続けている、専門家です。(そして、朝日新聞社員です)
 超常現象に興味津々な若者たちを前に、語ってもらいました。

【超常現象を30年取材してるけど、質問ある?】
1.UFO編
2.フリーメイソン編
  前編 日常を知りたい
  後編 歴史を知りたい
3.ミステリーサークル編
4.ニセ科学編
5.心霊現象編
6.予言編(今回)

「マヤの終末予言」って、そういえばありましたよね

 

若者

ちょっと前まで、「マヤの予言」っていうのをよくネットで見ました。
世界が滅亡するとかなんとか。あれって結局、どうなったんですか?

 

皆神さん

ああ、ありましたねえ「マヤの予言」。
2012年12月21日か23日に「世界が滅亡する」という予言でしたね。なぜ、その日に滅亡するということになっていたのか覚えている人いますか? 

マヤ文明の石像
マヤ文明の石像 出典: 朝日新聞

 

若者

あれ? なんでしたっけ?

 

皆神さん

外れた予言のことなんて誰も覚えていませんよね。
そんな風に、みんな過ぎたことはすぐに忘れちゃうから、十年一日のごとくというか、雨後の竹の子のようにというか、新たないい加減な予言が次々生まれてくるわけです。

 

若者

なるほど(笑)

 

皆神さん

マヤの予言は、2012年末で、マヤの暦が終わってしまうからそこで世界が滅びる、というのが理由でした。
でもこれ「滅亡予言マニア」な方々が後になって勝手に言い出したことで、古代マヤ人は、この日に世界が終わるなんてひと言も言ってなかったんです。

 

若者

じゃあマヤの人たちにとったら「予言なんてしてないよ」って話なんですね。

 

皆神さん

ええ。そのことは、朝日新聞でも記事にしてもらいました。

「人類滅亡」予言について書いた朝日新聞記事(2012年6月30日朝刊)
「人類滅亡」予言について書いた朝日新聞記事(2012年6月30日朝刊) 出典: 朝日新聞

 

皆神さん

マヤの人々は非常に精巧な暦を作っていました。
いろいろな周期を持つ暦を作っていたのですが、その中でも約5130年と周期が大変に長い「長期暦」というのがありました。その暦は紀元前3114年8月11日に始まって、それから約5130年後に一巡目が終わるという暦でした。その終わりの5130年後に当たるというのが、2012年12月末だったというわけです。

 

若者

ずいぶん気の長い暦ですね。

 

皆神さん

我々が使っている西暦は、12月31日に一度終わるけど、ちゃんと次の日は1月1日になって新年が始まるでしょ? マヤの人々だって、長期暦の一巡目が終わったら、次の長期暦が新たに始まると考えていて、世界が終わるなんて思っていなかったようです。

長期暦よりさらに長い暦も見つかっているんですよ。例えば、2京8285兆年をさらに1兆倍する、という気が遠くなるような未来までの暦を刻んだマヤの石碑も見つかっています。

そもそも世界各国各民族ごとにいろいろな暦が使われていて、マヤの暦はそのうちのひとつに過ぎないのに、なんで世界中がマヤの暦に従って滅亡しなきゃならないんでしょう。
素朴に考えてもヘンでしょう?
マヤ予言は世界中の人々が振り回された(画像はイメージです)
マヤ予言は世界中の人々が振り回された(画像はイメージです) 出典: PIXTA

毎年、世界が滅んでいたようです

 

若者

しかし。古代マヤ人がまったく言っていないものが、なんで「終末予言」なんて騒がれるようになったんですか?

 

皆神さん

無責任に、そういうことを騒ぐのが大好きな「滅亡マニア」の人やメディアがいるからです。世界が終わると警告してきた終末予言って、本当にいくらでもあるんですよ。
世界滅亡の予言をまとめた「終末予言年表」といった年表があるんですが、それら年表を見ると、平均して年に一回以上は世界が滅んでいた勘定になるようです。

 

若者

滅びすぎ(笑)

けっこう頻繁に世界が滅びているようです(画像はイメージです)
けっこう頻繁に世界が滅びているようです(画像はイメージです) 出典: PIXTA

「大地震発生を言い当てていた」系も多いですよね。

 

皆神さん

日本だと、地震予言が多いですよね。
「○○地震を言い当てた」とか。
でもあれって、いろんな予言を常に出しまくっているから、
どれかは当たるよねっていうことが多いんです。
関東だ、近畿だ、いや東北かも、今年かいやもしかしたら来年かもしれない、という具合に色々言いまくっておいて、実際にどこかで地震が起きたら「そうでしょう、東北だと思っていました」などと後出しじゃんけんをしているだけなことが多いです。

 

若者

えっ、あれって、そういう話だったんですか?

 

皆神さん

「当たった」とされる予言だけが注目されるから、さも本当に言い当てたように見えますけど、我々みたいに超常現象を検証している人間は、その人の言っていた過去の発言までトコトン調べます。

いまはネットに発信記録が残るから、比較的わかりやすいんですよ。大抵「なーんだ、あらかじめたくさん言っておいた中のひとつに過ぎないじゃん」ってことになります。少なくとも私が知る限り、余計なことを何も言わないで、大地震の日時、場所、規模をぴったりと言い当てたという「地震予言」はありません。

 

若者

なんだ、そうだったんですね。

 

皆神さん

「予言」じゃなくて地震「予知」ならば、研究者が真面目に挑戦しています。
それは、地震を引き起こすプレートの動きをいち早く察知したり、地震の前に空中に現れるという電磁波の異常を捉えたりしようとする科学的な手法によるものです。

ただ人によっては、「現代の科学技術では地震予知は無理」という人もいます。それくらい、「地震予知」は難しいものです。
黒沢大陸「『地震予知』の幻想: 地震学者たちが語る反省と限界」(新潮社)

 

若者

ネットでは、たとえば東日本大震災の時も熊本地震の時も、「実は予言されていた!」って本気にしている人がいました。

 

皆神さん

その当たったとする予言は、いつ誰がどのように予言を公開していたのか、たくさん言っていたことの中のひとつがまぐれ当たりしただけという可能性はないのかなどなど、本当に当たったといえるのかどうかの検証が必要なはずですよね。
でもこの一番大切な部分を、ほとんど誰もやってない。ただ、みんな当たった、当たったって後から騒ぐだけで。

朝日新聞デジタル「熊本地震後『予言』の検索が増加 デマは早期に収束」
2016年の熊本地震の際は、「予言」におびえる被災者が少なくなかった。

なんで自分も死ぬ「世界の終わり」を期待しちゃうんでしょう

 

若者

予言って、昔からありますよね。
親の世代はノストラダムスとか。

 

皆神さん

「ノストラダムスの大予言」という本が出された1973年ごろは、高度成長期も終わりかけ、オイルショックや公害問題などが騒がれて、「どうやらこれからは、今までのようにうまくはいかないらしい」という漠然とした不安が社会に広まっていました。
そういうものが反映されて、オカルトブームになったのかもしれません。あと「ノストラダムスの大予言」も、フランス語の原本には「1999年に世界が滅ぶ」なんて、どこにも書いてませんでした。滅びるに違いない、と日本で勝手に解釈して騒いでいただけなんです。

ノストラダムスの大予言
ノストラダムスの大予言 出典: PIXTA

 

若者

「世界が滅ぶ」って、自分たちも死んじゃうわけだから、それを楽しく話すのって、よく考えたら変ですよね。

 

皆神さん

人間って、基本的にヒマだったり、「ないものねだり」だったりするんです。
毎日毎日同じことの繰り返しでは、飽きてしまう。
非日常的な刺激を求めるわけです。

「人類滅亡」って、なんかドキドキするでしょ? 
女性だったら「恋愛でドキドキしたーい」とかいうのと似てるかも。
これが男だと、「俺は人生負け組だ」と沈んでいる人が、「こうなったら一発逆転、フリーメイソンに入って世界征服をめざす!」とか言い出したりするわけです(笑)

「扉の向こうにあるはずの知らない世界」に行ってみたいとか、退屈な日常を飛び出したい、っていう瞬間が人間にはあるんでしょうね。

――予言を求めてしまうのは、人間の性なのでしょうか。次回は「超能力」です。

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