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IT・科学

「YouTube」最初の動画が生まれた日 ファミレスで決まった巨額買収

YouTubeの最初の動画「Me at the Zoo」
YouTubeの最初の動画「Me at the Zoo」

目次

 2005年4月23日、YouTube(ユーチューブ)で最初の動画が投稿されました。ホームビデオを、ネットを通じて、友達にも見てもらいたい。そんな思いからはじまったサービスは、世界で10億人をこえる人が利用する巨大インフラに成長しました。その最初の一歩となった動画は「意外な場所」で撮られたものでした。

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2005年に誕生

 YouTubeは、2005年、アメリカのカリフォルニア州で、共同創設者であるチャド・ハーレー、スティーブ・チェンの2人によって生まれました

 当時、インターネット上には写真を無料で共有するサービスはありました。しかし、ファイルサイズが大きく、メールで送りにくい動画の共有サービスはありませんでした。

 無料で再生時にCMが表示されることもなく、特別な再生ソフトを必要とすることもない、画期的なサービスでした。すべて自前でシステムを構築することで低コストを維持し、実現させました。

YouTubeの共同創設者、チャド・ハーレーとスティーブ・チェン=ロイター
YouTubeの共同創設者、チャド・ハーレーとスティーブ・チェン=ロイター
自宅のディナーパーティーを撮ったホームビデオを、ネットを通じて、友達にも見てもらいたい。でも、誰もが簡単に使え、かつ無料のサイトはなかった。2人はそこに目をつけ、YouTubeをオープンする。どんなに長い映像でも無料、再生時にCMが表示されることもないし、特別な再生ソフトを必要とすることもない。当時としては、破格の「気前の良さ」だった。すべて自前でシステムを構築することで低コストを維持してきたという。
2007年3月19日:(表紙の人)YouTube共同創設者 チャド・ハーレー、スティーブ・チェンからアエラから
2005年2月 米国・カリフォルニア州で「YouTube」を創設。チャドはCEO(最高経営責任者)に、スティーブはCTO(最高技術責任者)になる。
2007年3月19日:(表紙の人)YouTube共同創設者 チャド・ハーレー、スティーブ・チェンからアエラから

「Me at the Zoo」

 気になる「最初の動画」ですが、撮影されたのは動物園です。

 「Me at the Zoo」というタイトルで、ゾウを前にチャド・ハーレーが19秒間、話しています。

 動物園のゾウというところが、気軽にアップできるYouTubeの特徴を現しています。

Every adventure starts somewhere, and YouTube’s began on Saturday, April 23, 2005, when "Me at the Zoo" became the first video uploaded to a new site no one had ever heard of. Captured at California's San Diego Zoo, the clip is a 19-second description of what exactly makes elephants so cool.
2015年5月28日:YouTube A to Z #HappyBirthdayYouTube:ユーチューブオフィシャルブログから
【動画】ユーチューブオフィシャルブログからリンクされている「Me at the Zoo」

創設者、カード限度額まで使い切る

 便利すぎるサービスだったために、利用者は爆発的に増えます。

 今では世界的な企業として知られていますが、当時は、共同創設者のチェンのクレジットカードを限度額まで使い切って、サーバーを維持する状態でした。

 テレビ局などからの著作権侵害への指摘も深刻化し、それらに対応する人も十分ではない状態でした。

サーバー代維持のためカード限度額まで使い切ったというスティーブ・チェン
サーバー代維持のためカード限度額まで使い切ったというスティーブ・チェン 出典: 朝日新聞
「でもね、ベンチャーキャピタルからの投資がもうちょっと遅かったら、僕のクレジットカードの限度額を超えてた」(チェン)
2007年3月19日:(表紙の人)YouTube共同創設者 チャド・ハーレー、スティーブ・チェン:アエラから
米国外からのアクセスが増えるのに、言語の対応もままならない。携帯電話に対応すれば、さらに市場が広がるのは目に見えていたが、それも手付かず。特に著作権侵害をめぐる法務問題に関しては、人を雇って対応する余裕が全くない。
2008年7月21日:津山恵子(現代の肖像)YouTube共同創業者兼最高技術責任者 スティーブ・チェン アエラから

デニーズでの秘密交渉

 2006年10月、YouTubeは、グーグルから16億5000万ドル(当時の円換算で2000億円)で買収されます。

 交渉は意外な場所で行われました。人目を避けるため、シリコンバレーのデニーズで、グーグルの共同創業者、サーゲイ・ブリン、ラリー・ペイジと接触していたのです。

 実は、この時、グーグルのライバルであるヤフーとも交渉をしていたことを、チェンはニューヨークの中米友好団体「百人会」でのインタビューで明かしています。

 インターネットの世界の勢力図を書き換える重要な決断の舞台は、「ファミレス」だったのです。

2000億円の買収交渉の場所は…「ファミレス」だった=ロイター
2000億円の買収交渉の場所は…「ファミレス」だった=ロイター
買収額は円換算で約2千億円に上るが、それだけの価値があるとみてのことだろう。国内のネット企業には、グーグルが映像分野で大きな影響を持つのを心配する声がある。
2006年11月18日:(ニュースがわからん!)動画投稿サイトなぜ人気? 無断投稿の締め出し、難題:朝日新聞紙面から
のちに百人会で明かしたが、実はスティーブらは同じデニーズで、前日にグーグルの最大のライバル、ヤフーとも交渉をしていた。インターネットの業界地図を塗り変えた会談が、ビデオの早回しのように展開していた。
2008年7月21日:津山恵子(現代の肖像)YouTube共同創業者兼最高技術責任者 スティーブ・チェン アエラから

戦地の映像も

 著作権侵害への訴えに対しては、違法ファイルの削除などで対応し、かつてYouTubeを訴えたテレビ局などの中には、公式チャンネルを開設する会社も出ています。

 影響を与えたのは、エンターテインメントの分野だけではありません。

 シリアの内戦では、政権軍と反体制派の衝突の様子が、次々と投稿されました。真偽が不明なものも含めて、世界中に衝撃を与えました。

 中国などYouTubeへの接続を禁止している国もあります。

シリア内戦で破壊された車両や崩れ落ちた建物
シリア内戦で破壊された車両や崩れ落ちた建物 出典: 朝日新聞
シリアの反体制組織の「地域調整委員会」は21日朝、ダマスカス近郊の東グータ地区で治療に当たる医師の声明を動画サイト「ユーチューブ」で公表した。医師が「被害は甚大だ。死傷者は大変な数になり、子供だけで50人に上る」と語った。
2013年8月22日:シリア反体制派「死者さらに」 国連調査団、入国の矢先:朝日新聞紙面から
中東の衛星放送アルジャジーラは1日、政権軍と反体制派との衝突が激化しているシリア北部の都市アレッポで、反体制派武装組織自由シリア軍とみられる武装グループが、政府側民兵とみられる数人を「処刑」する映像を放送した。ユーチューブなどネット上に流れているもので真偽や時期は不明。反体制派による処刑については、これまでもアサド政権側が主張してきた。
2012年8月3日:政府側民兵を「処刑」か シリア武装グループ:朝日新聞紙面から
海外旅行の際、「ああ異国に来たのだな」と感慨にふけるのはどんな時だろう。見慣れぬ街並みか、初めての食べ物か。中国の場合なら、それはインターネットに接続した瞬間かもしれない。フェイスブック、ツイッター、ユーチューブ、グーグル、Gメール、インスタグラム、ピカサ……。
2017年3月25日:(風 北京から)もう一つの万里の長城 古谷浩一:朝日新聞紙面から
政府が非公開にしたことには賛否両論ある。だが、ユーチューブへの投稿が、国民の知る権利に応える適切な方法だっただろうか。あの映像も全体の中の一部に過ぎない。たまたま入手できた保安官が、無責任な形でネットに載せた。一方で、海保という組織全体の情報管理の緩さ、認識の甘さも浮かび上がっている。
2010年12月24日:(社説)海保ビデオ ネット時代に残した課題:朝日新聞紙面から

1億回再生のピコ太郎

 最近、注目されているのはYouTuber(ユーチューバー)と呼ばれる、YouTube上で収入を得る人たちです。

 ユーチューバーの収入源は、再生数に応じたサイト内の広告料や企業とのタイアップ、イベントなどです。世界には年収1千万円超の人も数千人いるとされていますが、ユーザー数が10億人以上いる中では、ほんの一握りです。

 一方、2016年に話題になったのは「ピコ太郎」です。 再生回数が1億回を超えた「PPAP」は、世界中でネタにされました。

 2016年10月にあった日本外国特派員協会での会見では、「ミラクルが2万回起こった感じ」と本人も驚くほどの化け物コンテンツになりました。

ユーチューバーの収入源はサイト内の広告(再生数×0・1円程度)や企業とのタイアップ、イベントなど。ユーチューブの利用者は世界で10億人を超え、年収1千万円を超えるユーチューバーも数千人いるという。
2016年2月27日:口コミならユーチューバー 企業、動画依頼 タレントより身近、10~20代に影響:朝日新聞紙面から
「ミラクルが2万回起こった感じ」。先月末、日本外国特派員協会での会見でピコ太郎自身もおどけた。自称・千葉出身のシンガー・ソングライター。青森出身の芸人・古坂大魔王がプロデュースしていると主張するが、本人がピコ太郎であることは誰が見ても分かる。
2016年11月2日:(ニュースQ3)ピコ太郎の「PPAP」全米で話題、なぜ?:朝日新聞紙面から

高校生の8割が利用

 動物園の「ゾウ動画」から始まったYouTube。

 内閣府の2016年度の「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、高校生で84.1%、中学生で74%、小学生で60.5%が動画視聴にインターネットを使っていると回答。

 2020年に一部でサービスを始める次世代通信方式の「5G」では、今まで以上に気軽に動画が視聴できるようになります。

 インターネット動画は、今後、ますます、身近な存在になっていきそうです。

青少年のインターネットの利用内容は、高校生では、コミュニケーション(90.6%)、動画視聴(84.1%) 、音楽視聴(82.8%)が上位。中学生では、動画視聴(74.0%) 、ゲーム(72.8%) 、コミュニケーション(67.2%)が上位。小学生では、ゲーム(78.1%) 、動画視聴(60.5%)が上位。
青少年のインターネット利用環境実態調査 - 内閣府
総務省の有識者会議は13日、携帯電話のデータ通信が現在の数十倍速くなる次世代通信方式「5G」の実証実験を、2017年に始めることを決めた。世界に先駆け、20年の実用化をめざす。機器や技術をめぐる国際的な開発競争で、日本の通信会社やメーカーを有利にする狙いがある。
2016年5月14日:次世代通信「5G」、来年から実証実験 20年実用化めざす:朝日新聞紙面から

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