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トランプファミリー実力は? 名門大卒、支持者からは「芸能人」扱い
トランプ大統領の特徴の一つが、トランプファミリーの存在です。アメリカの国民にとって、大統領の家族が政治に関わることは「あり」なのか。なぜ、トランプ大統領は、こんなに家族に頼るのか。アメリカ在住のジャーナリストで作家の冷泉彰彦氏に話を聞きました。
――トランプファミリーに対するアメリカでの評判は?
「トランプ大統領の支持者から見ると、ファミリーは芸能人のような存在で『格好いい』という評価です。反対する人たち、例えばニューヨーク・タイムズを読んでいる人たちから見ると、そのキラキラさは『バカみたい』に映ります」
――イバンカ氏をはじめ有名大学を出ていたり、企業経営に関わっていたりします。本当の実力は?
「確かに大人になった子どものうち、4人中の3人はアイビーリーグのペンシルベニア大学卒です。次男のエリック氏も名門ジョージタウン大学卒です。ただ、トランプ大統領に反対する人たちは、コネとお金で入学しているという見方をする人もいます」
――トランプ大統領が中国と対立姿勢を示した際、娘のイバンカ氏と孫娘のアラベラちゃんが中国大使館のイベントに出席しました。
「イバンカ氏の夫、ジャレッド・クシュナー氏はユダヤ教徒で、イバンカ氏は彼と結婚するために、キリスト教からユダヤ教に改宗までしました。ユダヤ人社会や中国に対して、ファミリーを使って政治的バランスを取らせることはあるでしょう」
――イバンカ氏は政治家になるのでしょうか?
「イバンカ氏は、ものすごくトランプ大統領に可愛がられていますね。政治家への転身の可能性はゼロではありませんが、本人は、不動産だけでなく、ジュエリーやアパレル、ファッションなど、ビジネスに関心があると言っています」
――歴代のアメリカ大統領で、家族を重職に起用させることはあったのでしょうか?
「ほかの大統領ファミリーと比べて、トランプファミリーは格別な存在ではありません。例えば、ケネディ大統領の時は、弟のロバート・ケネディ氏が司法長官として支えていました」
「ヒラリー・クリントン氏も、夫のビル・クリントン氏が大統領の任期中、ファーストレディーでありながら政治に関与しました」
「反対派からは批判もされましたが、両者とも、結果的にその実力が証明されました。ファミリーが政治に関わること自体に、アメリカ人はそれほど反対しないようです。問題は実力があるかないかという点です」
――家族が政治に関わると、どんなメリットとデメリットがあるのでしょう?
「家族の起用よりも、トランプ大統領自身のプライベートに対する批判が大きいでしょう。大統領でありながら、ビジネスも続けている公私混同の問題です」
「本来なら財産を売るかどこかに委託経営しなければいけません。しかし、借金が多く売れなかったので、現在も息子たちに経営をさせています」
「訪米した安倍首相がトランプタワーに泊まりましたが、日本側がお金を出すことも出さないことも、おかしくなります」
「もう一つ、ドイツ銀行とのトラブルがあります。トランプ大統領の会社がドイツ銀行に約1000億円の借金をしています。しかし『返せません』と言っている。ドイツ銀行自体も経営状態が悪く、借金の問題がアメリカとドイツの関係に影響をする可能性があります」
――トランプ大統領は、なぜ、家族に頼るのでしょうか?
「トランプ大統領は、インナーサークル(内輪)の中で動く人で、信用する人が少ない。本当に信頼できるのはファミリーぐらいです。その結果、家族を重用することになっています」
<冷泉彰彦(れいぜいあきひこ)>米国在住の作家・ジャーナリスト 1959年生まれ。米コロンビア大学院修了。渡米して約20年、現地から日本と米国の今を観察している。
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