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IT・科学

28億円で「ユーチューバー」を買収 CNNが描く壮大な野望とは?

CNNが28億円を投じた、ケイシー・ネイスタット氏
CNNが28億円を投じた、ケイシー・ネイスタット氏 出典: ケイシー氏のYoutubeチャンネル

目次

 人気ユーチューバーの価値は28億円ーー!? 米国のニュース専門テレビ局CNNが、ニューヨークを拠点に活動するケイシー・ネイスタット氏(Casey Neistat)の会社を巨費を投じて買収しました。人材も設備も豊富な大テレビ局が、なぜユーチューバーを? 来日したCNN幹部に狙いを聞くと、「数カ月以内に新メディアを立ち上げる」と語りました。

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ファンは600万人超

 35歳のネイスタット氏は、2010年にユーチューブでチャンネルを開設。これまでに1000本超の動画を投稿し、670万人の登録者を抱えます。動画の累計再生回数は14億6000万回を超えています。

 ネイスタット氏は、独創的でスタイリッシュな「自撮り動画」を生み出してきました。

 たとえばドバイー米国間で偶然、飛行機の無償アップグレードを受けてファーストクラスに搭乗。片道242万円の座席のゴージャスさを自撮りした「THE $21,000 FIRST CLASS AIRPLANE SEAT」は、半年足らずで再生回数3150万回をたたき出しました。

 大雪のニューヨークを車に引っ張られながらスノーボードで疾走する「SNOWBOARDING WITH THE NYPD」は、約1年で再生回数1600万回。次々と大ヒット動画を生み出しています。

社会派の動画も

 また娯楽だけでなく、社会派の動画も数多く投稿しています。

 たとえばニューヨークの自転車専用レーンを「前に何があっても避けない」ルールで走行した「Bike Lanes by Casey Neistat」。駐車車両や工事資材に次々と激突して、レーンの走りにくい現状を告発した動画は、大きな話題を呼びました。

動画撮影アプリでは苦戦

 一方で、2015年に仲間とともに開発したスマホ向け動画共有アプリ「Beme(ビーム)」は、苦戦が続いていました。このアプリは体にスマホを押し付けるだけで撮影が始まり、撮影終了と同時に動画が共有されるユニークなもの。

 操作にスマホを見つめる必要がなく、動画撮影をより日常生活に溶け込ませる狙いがありましたが、人気のSnapchatやInstagramに押されて利用者が伸び悩んでいました。そこに現れ、Bemeの運営会社を買収してネイスタット氏を傘下に引き入れたのがCNNでした。

 ウォール・ストリート・ジャーナルは、買収額を2500万ドル(28億円)と報じています。ネイスタット氏は昨年11月に動画「i sold my company to CNN」を公開。「CNNと新しい会社を始める気持ちは?」との問いかけに、自らがバンジージャンプする映像で答えています。

CNN上級副社長に聞いた

 劣勢のアプリ運営会社に対して巨額にも思える買収劇。その狙いを今月来日したCNNのアンドリュー・モース上級副社長に聞きました。

――ネイスタット氏と、どのような計画を進めているのですか?
 いろいろなことを考えているが、数カ月以内に新会社を立ち上げ、新しいメディアブランドを展開する。ケイシー(ネイスタット氏)が加わり、ネットでビデオ記事などの配信を展開していく。

――ネイスタット氏にどのような可能性を感じているのですか?
 もちろん声の質もいいですが、何よりもネットを通じて作り上げてきた、オーディエンス(視聴者)とのつながりが素晴らしい。それは一つの芸術と言っていい。

CNN上級副社長のアンドリュー・モース氏=加藤丈朗撮影
CNN上級副社長のアンドリュー・モース氏=加藤丈朗撮影

――彼の力を使って、CNNのファンを増やしたいということですか?
 そうではない。CNNのファンを増やしたいなら、CNNの中でやればいい。

――えっ?CNNのためではないんですか?
 ケイシーの600万人超の登録者の中には20~30代の「ミレニアル世代」も多く、情熱的なストーリーテリングに惹かれている。彼らはCNNが全く情報を届けられていない人々だ。だからこそ新たなメディアブランドが必要で、CNNとは全く違うオーディエンスに届くものにしたい。

――買収金額が28億円とも言われています。高くはないですか?
 投資金額に見合う価値は、十分あると考えている。一つは、ケイシーのオーディエンスとのつながりに、それだけの価値がある。もう一つはBemeを作ってきた技術陣を引き込めたことだ。新メディアは彼らのテクノロジーをベースに作っていく。

――CNNの今後の方向性は?
 テレビネットワークだけでなくデジタルだけでもない、包括的なメディア企業となっていく。InstagramやFacebookでの発信にも注力して、オーディエンスとのつながりを生み続けていきたい。

日本でも存在感大きく

 日本でもユーチューバーの存在感は増しています。HIKAKIN(ヒカキン)は投稿動画の累計再生数が53億回、はじめしゃちょーは37億回。再生数でみると、ネイスタット氏を上回っています。

 子どもたちの「テレビ離れ」も指摘される中、彼らの人気を生かそうとするテレビ番組も出てきました。

 情報番組「めざましテレビ」(フジテレビ系)では今月から「YouTuberじゃんけん」のコーナーを始めました。毎週月曜日に人気ユーチューバーが登場して、オリジナルVTRを放送。視聴者に向けてじゃんけんもします。

 同番組の渡邊貴チーフプロデューサーは「ネットとテレビは融合できない? いいえ、その二つがコラボした時の相乗効果は計り知れないものがあると思っています! 」とコメントしています。

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