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アメリカとは違うのだよ…「移民歓迎」カナダ 実は“したたか”戦略
ベトナム戦争でも、激怒させた過去。
トランプ米大統領が、中東・アフリカ7カ国からの入国を一時禁止した後、ツイッターで「難民歓迎」の姿勢を打ち出し、話題を呼んだカナダのジャスティン・トルドー首相。お隣同士なのに、批判するようなことをして大丈夫なの? と心配になりますが、実はそこには、差別化をはかるカナダの生き残り戦略も透けて見えます。
移民社会で、英語を公用語とする北米の国――。日本では、米国とカナダに似たようなイメージを抱く人も多いのですが、同じ移民社会でも、その受け入れ方は異なります。
よく使われるのが、米国は「メルティング・ポット(るつぼ)」、カナダは「モザイク」という例えです。移民に対して「アメリカ」の価値観に溶け合うように求める米国に対し、カナダではそれぞれのルーツを生かし、尊重しあうことを目指しています。
原点は、1970年代から進めてきた「多文化主義」。導入したのは当時のピエール・トルドー首相、現首相の父です。
その背景には、米国という圧倒的な大国が隣にあり、差別化しなければ生き残れない、という事情もあります。「トルドー首相の移民歓迎は、戦略的側面もある」と、カナダと米国の関係に詳しい桜田大造・関西学院大教授は語ります。カナダのGDPや人口は米国の約10分の1。米国への人材流出も課題です。
「寛容さを打ち出すことは、マイノリティーの逸材を集め、産業を育てることにつながる。ヒト、モノ、カネの市場がオープンなことがカナダとっては望ましい」
#WelcomeToCanada pic.twitter.com/47edRsHLJ5
— Justin Trudeau (@JustinTrudeau) 2017年1月28日
それにしても、首相自らあんなツイートをして、米国との関係に影響はないのでしょうか。
過去には、ベトナム戦争中の1965年、当時のピアソン首相が米国でベトナム戦争に反対する演説をし、ジョンソン大統領を激怒させたこともあります。最近、米国が国交を回復して話題になったキューバとも、ずっと外交関係を維持してきました。
「国連などをベースにした多国間外交とのバランスを取りながら、譲れない部分では一線を画すしたたかさが、カナダ外交の特徴。とはいえ、米国との信頼関係は外交の重要な基盤であることは間違いない。トルドー首相も今後トランプ大統領とどうつきあうか、手腕が問われることになるでしょう」
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