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2017年01月23日

ゾンビのように広がる長時間労働 「脱社畜ブログ」が決めた撤退基準

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著作を持つ「脱社畜ブログ」の日野瑛太郎さん

著作を持つ「脱社畜ブログ」の日野瑛太郎さん

 電通の新入社員が過労自殺した問題をはじめ、日本企業の働き方が厳しく問われています。長時間労働やハラスメント・・・働く人が勤め先に「壊されない」ための心構えは、あるのでしょうか。5年前から日本の働き方への疑問を発信している著名サイト「脱社畜ブログ」の管理人・日野瑛太郎さんに聞きました。

過重労働は企業の「殺人」

――電通の問題を機に、日本の働き方を見直そうという声が高まっています。

 働き方をテーマにブログを書いてきた私にとっても、衝撃を受けた問題でした。低賃金で人を使い捨てる「ブラック企業」や、仕事のやりがいばかりを強調して、企業が悪い待遇を正当化する「やりがい搾取」の問題は知られるようになりました。

 一方で、電通のようなハイステータス企業における激務は、やや文脈が異なる問題だと感じます。高い給与水準や社会的地位に見合ったものとして、激務であることが社会的にも「仕方のないこと」と見なされてきた面があります。

 しかし過労死や過労自殺は、いわば企業による「殺人」です。過重労働を放置してよい例外など無いことを、改めて社会に突きつけた問題でした。

明かりをともした電通本社ビル(中央)

明かりをともした電通本社ビル(中央)

出典: 朝日新聞

「撤退基準」を決めておく

――労働者が身を守るには、どのような心構えが必要ですか。

 どんな会社であっても、会社に入るということは、非常にギャンブル性の高いことだと皆が認識した方がいいと思います。名の通った大企業に入りさえすれば「勝ち組」になれて、あとは楽な人生が待ってると思ったら大間違いです。

 入社後にどこで何をさせられるか分からないし、どんな人と働くかも分からない。素晴らしい経験ができるかもしれませんが、とんでもなく悪い事態になるかもしれない。どちらに直面するかは職場や上司との相性など、運の要素も強い。なのに失敗したときにどうするか決めておかないのは、戦略として非常にまずい。

 株取引では値下がりしたら売り払う価格「損切りライン」を決めて大損を防ぎますよね。

 同じように「こういう状態になったら会社を辞める」という「撤退基準」を決めておくとよいと思います。積極的に会社を辞めろと言うわけではないですが、いざという時に「逃げる」という選択肢を持っていないと追い込まれた時に大変です。

著書では「定時退社」の重要性などを訴えている

著書では「定時退社」の重要性などを訴えている

「一個人」の自分みつめて

 心身を壊したり、家庭が崩壊しそうになったり、あるいは「徹夜を強いられた」といった具体的な内容でもいいと思います。どのような事態になったら今の会社を辞めるのか。仕事より自分の人生で優先したいものは何なのか。しっかりと頭の中で考えておく必要があります。

 ハードワークを続けているとプライベートがなくなり、自分の住む世界が全部会社をめぐる話になってくる。すると人生全体の評価まで、すべて会社での評価に基づくようになってしまいます。会社で酷い目にあうと自分自身の挫折になり、非常に追い詰められてしまう。

 しかし冷静になれば、会社から離れた自分もいる。常に「今の会社を辞めたらどうするか」を思い描き、一個人としての自分が見えるようにしておくべきだと思います。

「責任感」にとらわれない

――日野さんご自身も経験はありますか?

 大学卒業後、新卒でIT関連企業に入りましたが激務でした。ウェブサービスの運用を担当していて、ユーザーが増える深夜や休日にトラブルが多い。すると家でも、いつでもパソコンを開いて対応しないといけない。プライベートと仕事との境目が無い状態でした。

 会社が人生の全てにならないよう、開いたのが脱社畜ブログです。ブログというサイドプロジェクトを持てたことで、すごく気持ちが楽になりました。最終的にブログの収入が伸びたこともあり、退職を決断できました。

記者会見で謝罪する電通の石井直社長(中央)ら=2016年12月26日

記者会見で謝罪する電通の石井直社長(中央)ら=2016年12月26日

出典: 朝日新聞

 ――ただ、踏ん切りがつかない人も多いと思います。

 最終的な決断は退職だけでなく、窮状を会社に伝えたり、配置転換を求めたりと様々あると思います。ただ、いずれにしても会社員人生での挫折とどう折り合いをつけるかというのは、大きな壁になると思います。

 自分が逃げると周りに迷惑がかかると「責任感」から決断できない人もいると思います。しかし、結局体や心を壊してしまったら、周囲への責任など果たせません。まだ自分が壊れない方法を選んだ方がマシです。

 新卒で入った会社をやめると大変だと脅す人も多いでしょう。せっかくいい会社に入ったのにと周囲から言われるのもつらい。しかし、それは絶対に起きるノイズだと考えて、必要と判断したら粛々と逃げられるようにしておかないといけません。

「従業員目線」を忘れない

――見直し機運があるとはいえ、長時間労働は日本企業に蔓延しています。

 電通のような広告業界が代表的ですが、顧客の期待値をどう越え続けるかが生命線の企業では、死ぬほど働いてみせることが顧客の期待に応えるひとつの手段になってしまっています。社員が深夜にメールを返せば、それだけ顧客の信頼が上がります。仕事の結果以上に、仕事に取り組む姿勢が重視されてしまうわけです。

 こうした状況の中では、働く人は「従業員目線」を忘れないことが大切だと思っています。

――よく言われる「経営者目線」ではなく?

 はい。定時退社も有給休暇取得も、労働者の権利。なのに日本企業でよく聞かれるのは、仲間であるはずのほかの社員が「みんな忙しいのになんとも思わないのか」などと批判するケースです。

 現在、「勤務間インターバル制度」や「つながらない権利」が話題になっています。もちろん、これらの制度は非常に重要です。しかし、いくら制度が整っても、従業員目線を忘れて制度を尊重しない社員ばかりでは機能しません。ゾンビのように従業員同士が長時間労働を互いに広めていくのは、もうやめるべきだと思います。

      ◇

日野瑛太郎(ひの・えいたろう) ブロガー、ソフトウェアエンジニア。2012年に「脱社畜ブログ」を開設。月間約50万PVの有名ブログとなり、日本人の働き方への意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)、『定時帰宅。「働きやすさ」を自分でつくる仕事術』(大和書房)がある。


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