MENU CLOSE

エンタメ

「日活ロマンポルノ」女性ファン増やすには? 生々しさから共感へ

中田秀夫監督による日活ロマンポルノの新作『ホワイトリリー』(C)2016日活
中田秀夫監督による日活ロマンポルノの新作『ホワイトリリー』(C)2016日活

目次

 映画好きからは「芸術」として認められている作品もある「日活ロマンポルノ」。でも、映画館に行けばほとんどが男性です。女性も楽しめるようにするにはどうすれば? 日活が新たに作った「日活ロマンポルノ・リブート」の作品を見た女性4人と、日活ロマンポルノをこよなく愛する映画専門記者(男)が、とことん語り合いました。(構成 朝日新聞大阪本社生活文化部・伊藤恵里奈)

【PR】「あの時、学校でR-1飲んでたね」
ロマンポルノを上映する新宿武蔵野館の入り口にある作品ポスター。ほかの作品と並んでいてもさほど違和感はない
ロマンポルノを上映する新宿武蔵野館の入り口にある作品ポスター。ほかの作品と並んでいてもさほど違和感はない 出典: 朝日新聞

「女性専用席があったら、心強い」

 今回、女性4人が新宿の映画館で見たのはの「風に濡れた女」(塩田明彦監督)です。

 

石飛編集委員

実際に映画館でロマンポルノをみた感想は? 男性客がほぼ9割でしたね。

 

ひかり

今回の映画館は、とてもきれいだったし、次からみにいく敷居が低くなった。まわりが男性で、自分たち女性が4人、目立ってなんだか気持ちよかったです。

 

ユリ

今まで一人で濡れ場を映画館でみたことは、ありませんでした。どこかで怖い思いがあるので。今日は男性が予想以上に多くて、びっくりしました。でも一人で来ていた女性もいたし、私も強い気持ちで次もみにいきたい。

 

アヤカ

隣りに座るのが変な男性だったら、嫌だなって思いました。女性専用席があったら、心強いですよね。一列だけピンクシートとか。女性一人で、周りが男性だらけでロマンポルノをみるって、やっぱり怖いですよね。

 

ひかり

ロマンポルノに誘えるような女友達がいればいいけど。もしくは、女性だけの日活ロマンポルノ部とか。
昔の日活ロマンポルノの名作ポスター。女友達を誘いづらいビジュアルだ ※ロマンポルノのブースは現在はありません
昔の日活ロマンポルノの名作ポスター。女友達を誘いづらいビジュアルだ ※ロマンポルノのブースは現在はありません 出典: 朝日新聞

「サブカル好きな人とはみに行けそう」

 

石飛編集委員

女友達って、やっぱり誘いにくいですかね。

 

リカ

会社の同僚には「ロマンポルノをみにいく」とは言えるけど、「一緒にいこう」とは誘えないな。だけど仲良くなった友達だったら来てくれるかも。

 

ユリ

私の周りの人は、絶対にきてくれないだろうな。

 

リカ

ユリさんは24歳だからかもね。年をとると変わるよ。

 

ユリ

これから周りの友達も、開花しますかね。

 

アヤカ

私が最初に古い日活ロマンポルノを映画館でみたのが、24歳の時だったんです。

 

ユリ

周りにファンが増えていくことを願います。

 

ひかり

サブカル好きな人とはみに行けそうですよね。

「昔の作品、タイトルからして生々しい」

 

リカ

昔の日活ロマンポルノの資料をみせてもらったけど、タイトルからして生々しいですよね。  「肉体犯罪海岸」、「トルコ風呂マル(秘)外伝」とか……。こんな映画で女友達を誘うのは、ちょっと無理かも。

 

4人

無理~。

 

石飛編集委員

昔の日活ロマンポルノって題名はすごいです。新聞記事にも書きにくいんですよ。中身はそんなに大したことがないのにね。今はタイトルからして、おしゃれになっていますよね。

 

リカ

映画のタイトルが「風に濡れた女」のような感じだったら誘いやすいです。ひたすら濡れ場ばっかりの物語を連想させるようなタイトルだったら無理かな。

 

ユリ

今回の作品は、アートっぽいですよね。ほかの作品の雰囲気もそうなんですか?

 

石飛編集委員

「日活ロマンポルノ・リブート」の新作5作はどれも作風が異なるけど、全体的に映画としてうまく作られていると思いますよ。
「ロマンポルノ・リブート」の宣伝ポスター。ピンクを基調にしており、女性やサブカル層に受けそう
「ロマンポルノ・リブート」の宣伝ポスター。ピンクを基調にしており、女性やサブカル層に受けそう 出典: (C)2016日活

「エロい映像をみるには、映画館しかなかった」

 

アヤカ

このポスターもおしゃれだし、「私たちのために作られている」って思えますよね。昔も今も、10分に1回濡れ場がある点では同じなんだけど、映画をどうみせるかで印象が違ってきますよね。

 

石飛編集委員

10分に1回の濡れ場を設ければ、自由に製作ができたんです。あとは監督たちが好き放題できたから、神代辰巳や曽根中生、後年になると相米慎二や根岸吉太郎ら気鋭監督がロマンポルノからうまれたんです。

 

アヤカ

濡れ場が多くても飽きないのは、見せ方が工夫されているからですよね。

 

石飛編集委員

男女の機微に分け入るような、キネマ旬報ベスト・テンに選ばれるような名作もあるんですよ。

 

リカ

Vシネマとは何が違うのですか?

 

石飛編集委員

中身というよりも形の違いですかね。VシネマのVはビデオという意味。ビデオレンタル屋さんで貸し出すために作られたんです。エロいものもハードボイルドなものもありますから。

 

石飛編集委員

ビデオはロマンポルノより後の時代です。日活ロマンポルノがあった1970、80年代はまだ家庭用のビデオが普及しておらず、映画しかない時代。男性がエロい映像をみるには、映画館にいくしかなかったんですよ。当時は女性観客を来ることを、全く想定していなかったから、タイトルからポスターまで露骨にエロを全面に出していたんです。
「風に濡れた女」の汐里は、本能むきだしで欲望のまま暴れる。過激な内容の一方で、映像は洗練されている
「風に濡れた女」の汐里は、本能むきだしで欲望のまま暴れる。過激な内容の一方で、映像は洗練されている 出典: (C)2016日活

「みなさん、共感できましたか?」

 

石飛編集委員

だけど今そんなことしても、男たちはそんなにみにこない。ネットでもっと過激なエロい映像をみられる時代ですからね。

 

石飛編集委員

だから女性客にきてもらわないといけないから、「女性目線」を掲げているんです。僕は男性だから本当に女性目線になっているのかは分からない。みなさん、共感できましたか?

 

ユリ

濡れ場がよかった。

 

リカ

作品としては楽しめたけど、主人公をはじめ出ている人にに共感は……。ムラムラっとしたりは、全然なかった。

 

ひかり

男性が言う「オカズ」にできるかできないかといわれたら、できなかったです。

 

ユリ

私はワクワクしました。妄想というか、性欲がかきたてられるような作品でした。

 

石飛編集委員

監督がきいたら喜びますね。

 

アヤカ

私も。あのプチオッパイの女の子のシーンがあったから、よかったな。好きなセックスの場面があれば、「ごちそうさまです」って思えますよね。いつも映画みおわったあと、チケット代の1800円の価値があるか考えるけど、今回はOKです。

「自分の性癖を知ることになるかも」

 

石飛編集委員

ほかの4本もみたくなりましたか? 今回、この「風に濡れた女」も含めて5本新作のロマンポルノがあるんです。僕は全部みたんですけど、基本的に全部の作品で女性がリードしています。

 

4人

今作の主人公が最も強い女性なんですけど。

 

石飛編集委員

今作の主人公が最も強い女性なんです

 

リカ

映画館の予告編でみた「牝猫たち」。3人の女性たちが出てくるどんな物語か気になります。この作品は現実味がないけど、次の作品はリアルなものがみたい。

 

アヤカ

私は「リング」とかホラー映画で知られる中田秀夫さんの映画が気になります。

 

石飛編集委員

「ホワイトリリー」ですね。レズビアンの話です。

 

ひかり

百合系は女友達を誘いづらいなあ。

 

石飛編集委員

僕もバラ系の映画は男友達を誘いづらいです。

 

アヤカ

ロマンポルノの5作を全部みて、「これが私の1本」というのを選んでみたいですね。それって、自分の性癖を知ることになるかもしれませんね。

 

石飛編集委員

いろんなバラエティーがありますから。行定勲、塩田明彦、白石和彌、園子温、中田秀夫の5監督が参加していて、それぞれ個性豊かですよ。ぜひ見比べてみてください。


     ◇

 「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」は東京・新宿武蔵野館などで上映中。大阪・シネ・リーブル梅田など各地で順次公開。
【エロかアートか、復活「日活ロマンポルノ」】
【前編】「日活ロマンポルノ」はアートか?名作生んだ「10分に1回の法則」
【中編】「日活ロマンポルノ」女性たちの素朴な疑問 「AVと何が違うの?」
【後編】「日活ロマンポルノ」女性ファン増やすには? 生々しさから共感へ
2017年1月14日から公開の「牝猫たち」。「凶悪」や「日本で一番悪い奴ら」で知られる白石和彌監督による社会派ロマンポルノ
2017年1月14日から公開の「牝猫たち」。「凶悪」や「日本で一番悪い奴ら」で知られる白石和彌監督による社会派ロマンポルノ 出典: (C)2016日活
鬼才・園子温監督の「アンチポルノ」は2017年1月28日から公開
鬼才・園子温監督の「アンチポルノ」は2017年1月28日から公開 出典: (C)2016日活

関連記事

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます