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2016年11月01日

不倫でも浮気でもない複数愛 33歳の私が見つけたポリアモリー人生

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不倫でも浮気でもない複数愛「ポリアモリー」を生きるきのコさん

不倫でも浮気でもない複数愛「ポリアモリー」を生きるきのコさん

 メディアで何かと話題になる有名人の不倫や浮気。ちょっと騒ぎすぎのような……でも、つい気になってしまうのはどうしてだろう。そんなことを考えていたら、複数の恋人を同時に愛する「ポリアモリー」という生き方があると聞いて、びっくり! お互いの関係をそれぞれが認め合っていて、単なる浮気性や二股じゃないそうです。どういうこと? にわかには信じられぬ思いで、当事者を直撃しました。

「恋人は2人、でも二股じゃない」

 ポリアモリーを自認し、そんな自分の生き方をネットで発信している女性、きのコさん(33)に話を聞きました。年上の恋人Aさんと同棲しているきのコさん。彼女のとある1日はこんな感じです。

 「いってきます」。朝、Aさんとキスをして出勤します。通勤電車の中でLINEメッセージを送ります。「おはよう。今夜会える?」。送った相手はもう一人の恋人Bさんです。Bさんとデートの約束をすると、今度はAさんと共有するグーグルカレンダーに「Bさんとディナー」と書き込みます。

 夜、Bさんとのデートを終えて帰宅すると、Aさんが「お帰り」と待ってくれていました。「あのね、Bさんが今日、こんなこと言ってたよ」。きのコさんは、Bさんと盛り上がった話をAさんにも伝えます。決して「報告義務」といった類いではなく、単なるおしゃべり。家族や友人に、恋人のことを話すような感覚に近いそうです。

 きのコさん、Aさん、Bさんはみな、お互いの関係を把握しています。「カレンダーに記入して伝えることは信頼関係を保つうえで大切なルール」と、きのコさん。ちなみに、Aさん、Bさんそれぞれにも、きのコさんとは別に、もう1人の恋人がいます。

別の恋人とのデートをオープンに話すというきのコさん ※写真と記事は直接、関係ありません

別の恋人とのデートをオープンに話すというきのコさん ※写真と記事は直接、関係ありません

出典:https://pixta.jp/

生きづらかった暗闇の10年間

 きのコさんは神奈川県在住。地元の九州の大学院を卒業後、大手機械メーカーに勤めて9年目になります。いまでこそポリアモリーを自認し、公言しているきのコさんですが、ここまでには、つらく長い道のりがありました。

 自分が他人と違うと感じ始めたのは大学に入ってすぐのころでした。初めての彼氏ができたのですが、すぐに別の彼氏もできてしまい、三股状態に。でも「本命」と「遊び」の区別はなく、それぞれに「本気」でした。「私は病気なのかな」。相手に対する罪悪感と、自分の本心を明かせないもどかしさに、思い悩む日々が続きます。

 このころ、ネットで偶然、「ポリアモリー」という概念を知りました。でも、「自分は違う。バレないうちに治さないと」と否定しました。彼氏以外の連絡先を全部消去したり、必死でしたが、複数の人を好きになる心は変えられません。27歳のとき、「この人が最後」と決め、初めて一緒に暮らしましたが、やがて同じ理由で破局してしまいました。

 自己嫌悪のどん底で、きのコさんは思いました。「ずっと変わりたいと思ってきたけど、これは私の生まれ持った性質。変われるものじゃない。もう私を許してあげないと、このままでは死んでしまう」。ツイッターの自己紹介欄に「ポリアモリーです」と、カミングアウトをしました。少し、肩の荷が下りた感じがしました。それから徐々に、恋人、友人、家族に対しても、「本当の自分」を語るようになりました。

「ポリアモリー」を公言できるまでには長い道のりがあったという ※写真と記事は直接、関係ありません

「ポリアモリー」を公言できるまでには長い道のりがあったという ※写真と記事は直接、関係ありません

出典:https://pixta.jp/

アメリカで広がり、日本でも交流会

 きのコさんのように1対1の性愛関係が絶対とは考えないポリアモリーは、アメリカで広がっています。実態を研究し、著書にまとめた一橋大学大学院社会学研究科の大学院生、深海菊絵さんによると、ポリアモリーは1990年代に生まれた造語で、ギリシア語の「複数」(poly)とラテン語の「愛」(amor)に由来します。定義がはっきりと決まっている訳ではありませんが、お互いが交際状況をオープンにする点で、合意のない不倫や浮気とは異なります。不特定多数と性的関係を持つこととも違い、感情的にも深く関わり合う持続的な関係です。

 アメリカ都市部では、実践者が増加し、コミュニティーやサポートグループが形成。雑誌やテレビでも取り上げられ、専門のカウンセラーや弁護士も登場しているそうです。当事者と対話した深海さんは、「自分の気持ちやパートナーに対して、正直でありたいという考えの人が多いと感じた」と話しています。

 日本でも最近、SNSを通じて集まったポリアモリーの当事者や関心を持つ人たちによる交流会、勉強会が関東や関西で開かれています。

アメリカでは、ポリアモリーの雑誌やマニュアル本が出版されているという

アメリカでは、ポリアモリーの雑誌やマニュアル本が出版されているという

嫉妬の感情は?

 ポリアモリーの人たちは、恋人の恋人(メタモア)に対して、嫉妬を感じないのでしょうか。きのコさんに尋ねました。

 ある日、前述の彼氏Aさんに「新しい恋人ができた」と告げられたきのコさん。その恋人は、きのコさんが以前から知っているステキな友人でした。きのコさんとAさんとの交際はすでに数年がたち、話を聞いたときは、むしろ嬉しかったと言います。「Aさんに別の恋人ができても、私との愛情が崩れる訳ではないから」。Aさんが精神的につらくなったあるとき、その新しい恋人がAさんにあてた励ましの手紙を読み、きのコさんは感謝と感動で涙が止まらなかったそうです。

 一方、Bさんとは、交際して2週間後、別の恋人ができたと打ち明けられました。「えっ!早くない? まだ私との信頼関係が深まってないのに……」。そして、その恋人にも会わせてもらえず、不信感や嫉妬の感情が募ったと言います。結局、それらのことが影響してBさんとは最近別れてしまいました。

 一口にポリアモリーと言っても、様々な人がいるようです。中には、自分が愛されていないという不安から、複数の人に依存しているだけのように見える人も。
 「ポリアモリーの関係を続けるためには、双方に自己肯定感と信頼関係が欠かせません。私とAさんの間にも、当初は嫉妬や不安の感情がありましたが、正直に話し合い、時間をかけて乗り越えてきたからこそ、いまがあるのです」

 「嫉妬=悪ではありません」と深海さん。ただ、嫉妬を感じたら、パートナーやカウンセラーに相談するなどの対処法を通じて、嫉妬とうまく付き合っていこうとする姿勢が見られます。

実践するには相手への思いやりやコミュニケーション能力が求められるというポリアモリー ※写真と記事は直接、関係ありません

実践するには相手への思いやりやコミュニケーション能力が求められるというポリアモリー ※写真と記事は直接、関係ありません

出典:https://pixta.jp/

「いろんな愛の形があっていい」

 きのコさんが、自身のライフスタイルをネットに発信していると、「浮気を正当化するな」「気持ち悪い」というバッシングを必ず受けます。一方、「私もポリアモリーかも」「救われた」といった共感の声が寄せられることもあります。 「ポリアモリーな社会にしたいと思っているわけではありません。ただ、昔の私みたいに悩んでいる人が、ポリアモリーという性質や生き方があることを知って、少しでも楽になればうれしい」。発信を続ける大きな理由だと言います。

 「ポリアモリーなんて言っているのは、まだ本当の愛を知らないからだ」と告げられたこともあります。でも、きのコさんは思います。

 「愛に本当もうそもない。当事者でない第三者が、その人の倫理観でことさらに否定する権利はないはず。みんな違って、みんないい。そんな社会でありたい」

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