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お金と仕事

上司の日本語がわかんない!「勝手に省略語」幼児との会話にヒント?

幼稚園の先生が「運動会、何か(種目)出るの?」と聞くと、園児は「おやつが出るよ」。子どもの勘違いのように見えますが、大人が「伝えたつもり」になっているのではないでしょうか。

広野幼稚園であった避難訓練の様子=京都府宇治市
広野幼稚園であった避難訓練の様子=京都府宇治市

目次

 幼稚園の先生が「運動会、何か(種目)出るの?」と聞くと、園児は「おやつが出るよ」。子どもの勘違いのように見えますが、大人が「伝えたつもり」になっているのではないでしょうか。悪意は無いけれど、話し手にとって当たり前の情報を省いて話す”勝手に省略語”――あれ、うちの上司にも思い当たるような…園児に学ぶ”勝手に省略語”対策について調べてみました。

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京都の幼稚園、幼児が理解しやすい言葉探求

・登園してきた園児に「(部屋に)かばんを下ろしてから遊ぼう」と話すと、園児は園庭でかばんを置こうとした。

・芋の絵を描いていた園児に先生が「(筆の使い方が)うまいね」と言うと、「おいしい、のほうがお行儀が良いで」と言われた。

・避難訓練前に「(室内にいる時は)上履きのままで走っていくのよ」と教えた。園庭で外履きで遊んでいた園児は訓練のサイレンを聞くと園舎に戻って上履きに履きかえた。

 京都府宇治市の広野幼稚園は1989年から、子どもらしい発想をエクセルファイルに5千件以上記録しています。

このうち大人の意図がはっきり幼児に伝わらず、大人の話し方がわかりにくいと判断した場合、「主語」「目的語」「修飾語」など、どんな情報が欠けていたのかを記入。運動会や避難訓練などの行事の前に過去の記録を見返し、先生の話し方を園児が理解しやすいように改善しようとしています。

広野幼稚園で記録している避難訓練時の園児の行動
広野幼稚園で記録している避難訓練時の園児の行動 出典:2016年9月17日:「幼児の勘違い、防災のヒントに 幼稚園が27年記録」:朝日新聞デジタルから

社会人、「上司もこればっかり」と反応

 この取り組みを9月17日付の朝日新聞で掲載したところ、インターネット上では幼児教育のプロとしての幼稚園の活動を評価する声のほかに、企業などの大人同士でも必要な視点という意見も目立ちました。

・「目的語、修飾語の欠落。上司もこればっかりで『?』となる」
・「理解できない側が『頭悪い』と言われがちだけど、『あれ』を多用する側こそ…」
・「新入社員や取引先とのやりとりでも大事」

 心当たりがある人は多いのではないでしょうか。

広野幼稚園が記録している園児の言動の例
広野幼稚園が記録している園児の言動の例

サラリーマン川柳でも鉄板のテーマ

 1987年から「サラリーマン川柳」を主催し、現在第30回の作品を募集している第一生命保険に「上司の話し方がわかりにくいことをネタにしたと思われる作品」が過去にあるかどうか聞いてみました。

わが上司 横文字多様で 意味不明(フィールドバック)
「私だ」と 電話で名乗る 役員さん(新入社員)

 やはりそれらしい句が過去に投稿されていました(カッコ内は投稿者の雅号)。また同社は今年春、若い世代の切り口に注目した20代限定企画「U-29サラ川グランプリ」を開催し、9月に結果を発表。投稿作品の中にはグランプリを逃したものの、こんな作品もありました。

了解です 言ってはみたが 理解不能(中途採用人)

 どの句も「もっとわかりやすく話してほしい!」といった部下の切実な叫び声を感じ取れそうです。

 しかし上司からは「それくらい知っていて当たり前だろう」「いちいち細かく説明していたら時間がなくなる」「わからなければ聞けばいいだろう」といった反論が聞こえてきそうですね。

「U-29サラ川グランプリ」でグランプリに輝いた川柳
「U-29サラ川グランプリ」でグランプリに輝いた川柳 出典:第一生命保険の「U-29サラ川グランプリ」ホームページ

歩み寄り 解決への道

 では実際の上司と部下はどう感じているのでしょうか。

 「U-29」の企画に携わった第一生命保険生涯設計企画課の井石純一郎課長(37)は「『中途採用人』さんの句は身につまされる思いで読みました。新人の頃、まさに私も同じ気持ちでした」と振り返ります。

 入社1年目で法人営業を担当。社内の会議で飛び交う商品名の略称や独特の社内用語の意味が初めはほとんどわからなかったといいます。

 「会議中は質問できず、何となくうなずいて過ごす。油断していると上司から『どう思う』と聞かれて、とりあえず『その通りだと思います』と答えるようなこともありました」と苦笑い。

 会議後、先輩に一つ一つ用語の意味を聞いたそうです。

第一生命保険の井石純一郎さん(左)と小林将大さん。小林さんは「U-29サラ川グランプリ」の選考係を担当した=東京都千代田区
第一生命保険の井石純一郎さん(左)と小林将大さん。小林さんは「U-29サラ川グランプリ」の選考係を担当した=東京都千代田区

 今では部下を持つようになった井石さんは逆の立場で悩みます。

 昨年、配属直後だった新入社員の小林将大さん(24)に企画書の作成を指示。「わかりました!」と元気よく返事をした小林さんが1週間後に提出した書類には、井石さんが本来求めていた内容が含まれておらず、2人とも頭を抱えました。

 井石さんは「もっと丁寧に説明すべきだった」。小林さんは「そもそもわかっていないことに気づいていない状態でした」と振り返ります。

 2人がとった解決策は「お互いに歩みよる」ことでした。井石さんは「細かい! と思われても、指示後に『どうなった?』と聞いて、軌道修正することもありました」。小林さんも指示の内容がわからなければ「一時の恥」として、すぐに聞き返すようになりました。

 これで一件落着……というわけでもないようです。「上司がピリピリしている時だと『ちょっとお時間よろしいですか』の一言でさえ、部下は声をかけにくいですよね。なるべく話しやすい雰囲気を作るように心がけていますよ」と井石さん。小林さんも隣でうなずいていました。

 嗚呼、がんばれサラリーマン。悩みは尽きません。

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