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栗山監督「戦力外」から復帰 ドラフトの当たりくじ、必死の“対策”

昨年のドラフト会議。高山俊選手の交渉権を獲得したと勘違いし喜ぶヤクルトの真中監督(右)=岩下毅撮影
昨年のドラフト会議。高山俊選手の交渉権を獲得したと勘違いし喜ぶヤクルトの真中監督(右)=岩下毅撮影 出典: 朝日新聞

目次

 悲喜こもごものドラマを生んできたプロ野球ドラフト会議。注目のあの投手はどこへ? くじ引きでの勘違いから1年、ヤクルト・真中満監督はガッツポーズを取り返せるか。日本ハム・栗山英樹監督はくじ3連敗の屈辱を晴らせるでしょうか。運頼みとはいえ、くじを引く人選に頭をひねったり、下着の色にこだわったり…球団は、あの手この手で必死です。運命の会議は10月20日に開かれます。

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勘違いでガッツポーズ

 昨年のドラフト。阪神とヤクルトが高山俊選手(明大)を1位指名したため、抽選が行われました。ヤクルトの真中監督が引いたのは外れくじでしたが、ドラフト会議のロゴマークを交渉権確定の印と勘違いして当たりと思い込み、ガッツポーズ。ヤクルトが交渉権確定と発表されました。

 ところが確認の結果、阪神の金本知憲監督が当たりくじを引いていたことがわかり、訂正されました。金本監督は「ビデオ判定で本塁打に覆った心境」とにんまり。真中監督は「あのガッツポーズを返してください」としょんぼり。高山は今季阪神でレギュラーに定着し、新人王の有力候補です。逃した魚は大きかった、ですね。

ドラフト会議で使われる抽選のくじ。当たりは「交渉権確定」の印がある。
ドラフト会議で使われる抽選のくじ。当たりは「交渉権確定」の印がある。 出典: 朝日新聞
抽選を巡っては、2005年に辻内崇伸投手(大阪桐蔭高)、陽仲寿内野手(現・陽岱鋼=福岡第一高)の際にも同じような間違いがあった。このためNPBは当たりくじの表記を分かりやすく変更した。
2015年10月23日:最多安打の高山は阪神 プロ野球ドラフト会議:朝日新聞紙面から
高山俊選手の交渉権を獲得したことが分かり、あいさつのため壇上に進む阪神の金本監督=岩下毅撮影
高山俊選手の交渉権を獲得したことが分かり、あいさつのため壇上に進む阪神の金本監督=岩下毅撮影 出典: 朝日新聞

「戦力外」だった栗山監督が復帰

 日本ハムの栗山監督は大舞台に「復帰」です。13年のドラフト。松井裕樹投手(神奈川・桐光学園高)を外すなど3連続で1位のくじを外したことで、2年間くじの「戦力外」となっていました。

 しかし、今年は抽選となれば自らくじを引くことが決まりました。リーグ優勝の強運ぶりを発揮できるでしょうか。

帽子を取ってファンの声援に応える日本ハム・栗山監督。優勝の勢いそのままに、ドラフト会議でくじ引き3連敗の「リベンジ」を果たせるか
帽子を取ってファンの声援に応える日本ハム・栗山監督。優勝の勢いそのままに、ドラフト会議でくじ引き3連敗の「リベンジ」を果たせるか 出典: 朝日新聞

チームカラーの下着装着

 くじに強い男といえば渡辺久信・元西武監督です。09年に6球団競合の菊池雄星投手(岩手・花巻東高)を引き当て、翌年も6球団競合の大石達也投手(早大)を当てました。大石の時は、早稲田カラーのエンジ色の下着を身につけて臨みました。

 13年の広島は監督ではなく、担当スカウトが大瀬良大地投手(九州共立大)の当たりくじを引き当てました。高校時代から大瀬良を追い続けてきた田村恵スカウトの「自分が一番、見続けてきたので、絶対に当たると信じた」という熱い言葉が、感動を呼びました。田村スカウトもチームカラーの赤いパンツをはいて臨んだそうです。

 09年からは一般ファンを1000人招待する「公開ドラフト」になりました。抽選結果が決まると歓声が起こったり、壇上でインタビューが行われたりと盛り上がっています。

花巻東高・菊池雄星との交渉権を得た西武の渡辺監督(右端)=杉本康弘撮影
花巻東高・菊池雄星との交渉権を得た西武の渡辺監督(右端)=杉本康弘撮影 出典: 朝日新聞
早大・大石達也投手の交渉権を引き当て、笑顔を見せる西武・渡辺監督
早大・大石達也投手の交渉権を引き当て、笑顔を見せる西武・渡辺監督 出典: 朝日新聞
こいのぼりを掲げて広島の指名を喜ぶ九州共立大の大瀬良大地投手
こいのぼりを掲げて広島の指名を喜ぶ九州共立大の大瀬良大地投手 出典: 朝日新聞

剛腕・正義はどこへ?

 「投手が豊作」といわれる今年。ナンバーワン右腕は150キロ超の速球を投げる田中正義投手(創価大)です。春に痛めた肩も治り、競合する球団は増えそうです。佐々木千隼投手(桜美林大)と柳裕也投手(明大)も1位候補です。

 高校生は「ビッグ4」に注目です。春の時点で評価が高かった藤平尚真(横浜高)、寺島成輝(大阪・履正社高)、高橋昂也(埼玉・花咲徳栄高)の3投手に、夏の甲子園を制した栃木・作新学院高の今井達也投手を加えて評価する声が高いです。

 社会人では山岡泰輔(東京ガス)の名前が挙がります。

創価大の右腕・田中正義投手。複数球団の1位指名が予想される
創価大の右腕・田中正義投手。複数球団の1位指名が予想される 出典: 朝日新聞
横浜・藤平尚真投手
横浜・藤平尚真投手 出典: 朝日新聞
甲子園で力投する履正社・寺島成輝投手
甲子園で力投する履正社・寺島成輝投手 出典: 朝日新聞
花咲徳栄・高橋昂也投手
花咲徳栄・高橋昂也投手 出典: 朝日新聞
夏の甲子園を制した作新学院・今井達也投手。スカウトの評価は急上昇中だ
夏の甲子園を制した作新学院・今井達也投手。スカウトの評価は急上昇中だ 出典: 朝日新聞
 中日の中田宗男スカウト部長は「藤平君は器の大きさを感じる。球に力がある。寺島君は角度があって、球の質がいい」。高橋は球持ちやフォークなどの変化球がよく、スカウトの間で高評価につながっている。
2016年9月21日:ドラフト候補、好投手ぞろい スカウト、見極め大詰め:朝日新聞紙面から

拒否、涙、強行……50年

 戦力均衡や契約金の高騰防止を目的に1965年に始まったドラフトには、様々なドラマがありました。野球協約の盲点を突いた「空白の一日」を利用して巨人と電撃契約した江川卓投手の「江川事件」は、社会問題になりました。

 甲子園で活躍した大阪・PL学園高の桑田真澄投手、清原和博選手は明暗が分かれました。巨人入りを熱望していた清原ですが、西武が交渉権獲得。その巨人が指名したのは早大進学を打ち出していたチームメートの桑田で、清原は涙を流しました。

1977年、クラウンライターの指名を受けて記者会見する法大の江川卓投手。クラウン入団を拒否し米国留学、翌78年のドラフト会議前日に巨人と電撃契約。これは無効とされ、ドラフトで交渉権を得た阪神にいったん入団後巨人に移籍
1977年、クラウンライターの指名を受けて記者会見する法大の江川卓投手。クラウン入団を拒否し米国留学、翌78年のドラフト会議前日に巨人と電撃契約。これは無効とされ、ドラフトで交渉権を得た阪神にいったん入団後巨人に移籍 出典: 朝日新聞
西武に指名されたPL学園の清原和博選手。巨人の指名は同じPLの桑田真澄投手。記者会見では、うつむき加減だった
西武に指名されたPL学園の清原和博選手。巨人の指名は同じPLの桑田真澄投手。記者会見では、うつむき加減だった 出典: 朝日新聞
ドラフト会議で巨人から1位指名された桑田真澄投手(右)は、早大受験を取りやめを発表、「巨人には昔からあこがれていた」と語り、一転、巨人入りへ
ドラフト会議で巨人から1位指名された桑田真澄投手(右)は、早大受験を取りやめを発表、「巨人には昔からあこがれていた」と語り、一転、巨人入りへ 出典: 朝日新聞

球団指名「最多選手」のその後

 最多球団指名競合選手は、1989年の野茂英雄投手、90年の小池秀郎投手で8球団です。近鉄に入団した野茂は1年目から最多勝、最優秀防御率を獲得するなど大活躍しました。小池は交渉権を得たロッテへの入団を拒否。社会人野球に進み、92年のドラフトで近鉄に入団しましたが、故障もあって長く活躍を続けることはできませんでした。

 近年は長野久義選手、菅野智之投手が他球団の指名を拒否してプロ入りを遅らせ、巨人入りの意志を貫きました。

1990年、ドラフト会議でロッテが交渉権を獲得した小池秀郎投手(亜大)
1990年、ドラフト会議でロッテが交渉権を獲得した小池秀郎投手(亜大) 出典: 朝日新聞
ドラフト会議の後、にこやかに記者会見する近鉄・仰木彬監督(左)と野茂英雄投手
ドラフト会議の後、にこやかに記者会見する近鉄・仰木彬監督(左)と野茂英雄投手 出典: 朝日新聞
08年のドラフトでロッテに指名されたホンダの長野久義選手。ロッテ入団を拒否し、ホンダに残留した
08年のドラフトでロッテに指名されたホンダの長野久義選手。ロッテ入団を拒否し、ホンダに残留した 出典: 朝日新聞
12年のドラフトで巨人から単独指名され、伯父の原監督と「グータッチ」する東海大の菅野智之投手(右)。前年のドラフトでは交渉権を得た日本ハムへの入団を拒否した
12年のドラフトで巨人から単独指名され、伯父の原監督と「グータッチ」する東海大の菅野智之投手(右)。前年のドラフトでは交渉権を得た日本ハムへの入団を拒否した 出典: 朝日新聞

日本ハム、過去にはソフトボール選手も

 最近は日本ハムの「果敢な指名」が話題になっています。11年には早大ソフトボール部の大嶋匠捕手を指名。12年は大リーグ行きを表明していた大谷翔平投手(花巻東高)を果敢に指名して口説き、獲得に成功しました。巨人入りを希望していた長野や菅野にもアタックしています(入団を拒否されましたが)。

 過去にはダルビッシュ投手、中田翔選手らの将来性を見込んで獲得し、今の常勝チームの礎を築きました。今年も周囲の予想を覆すような指名をするのか、目が離せません。

07年秋のドラフトで日本ハムから1位指名され、マスコットを持って野球部の仲間から祝福される大阪桐蔭の中田翔選手=諫山卓弥撮影
07年秋のドラフトで日本ハムから1位指名され、マスコットを持って野球部の仲間から祝福される大阪桐蔭の中田翔選手=諫山卓弥撮影 出典: 朝日新聞
昨年のドラフトで楽天に1位指名され、チームメートとポーズをとるオコエ瑠偉選手
昨年のドラフトで楽天に1位指名され、チームメートとポーズをとるオコエ瑠偉選手 出典: 朝日新聞
1992年のドラフトで、4球団が競合した松井秀喜選手の交渉権を抽選の末引き当て、ガッツポーズの巨人・長嶋茂雄監督(中央)
1992年のドラフトで、4球団が競合した松井秀喜選手の交渉権を抽選の末引き当て、ガッツポーズの巨人・長嶋茂雄監督(中央) 出典: 朝日新聞

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