閉

閉

これフカボリしてほしい

リクエストする

閉

2016年08月04日

〝おじいちゃんの方眼ノート〟量産化 作るのは「ジャポニカ」の会社

  • 154870

水平に開く自社製ノートを手にする中村輝雄さん

水平に開く自社製ノートを手にする中村輝雄さん

 今年1月に話題になった「おじいちゃんの方眼ノート」を覚えていますか? 都内の小さな印刷所の手作り商品で、特許をとったものの数千冊の在庫を抱えていました。それが、印刷所で働く男性の孫のツイートをきっかけに在庫が一掃したという話です。73歳の社長は「この技術を受け継いでくれる会社が現れてくれたら」と話していましたが、ついに現れました。手を挙げたのは「ジャポニカ学習帳」で知られるショウワノートです。

開いたときに水平になるのが特徴の方眼ノート

開いたときに水平になるのが特徴の方眼ノート

これまでの経緯


 話題の方眼ノートを作っているのは、東京都北区にある中村印刷所です。

 社長の中村輝雄さんは、近くで製本業を営んでいた中村博愛さん(80)が店をたたんだのをきっかけに、見開いたときにきれいに水平に開くノートの開発に二人で取り組みました。

 2年間かけて完成させたのは、コピーやスキャンした時に真ん中に黒塗り部分が入らず、見開きのギリギリまで書き込むことができるノート。この製造方法に関して特許もとりました。

 性能は評価されましたが、なかなか売れません。大量発注の話があって作ったものの、実際の注文には結びつかず、数千冊の在庫を抱えていました。

 「使ってもらえば、良さがわかってもらえるのに」。自分が作った在庫を見て罪悪感を感じていた博愛さんは、「これ、学校の友達にあげてくれ」と孫娘にノートをまとめて渡しました。

 受け取った孫娘は「学校じゃ、あんまりノート使う人いないしなー。そうだツイッターでやりとりしてる絵描きさんとか喜ぶかも」と思い、軽い気持ちでツイッターにノートのことを投稿しました。

 すると、使い方を指南してくれたり、今すぐ買える量販店を教えてくれたり、多くの人たちがコメントを寄せてくれて拡散。その後、ネットメディアや新聞、テレビに取り上げられて在庫は一掃。一気に人気商品になり、銀行からは融資の申し出まで来ました。

開いたときに水平になるのが特徴の方眼ノート

開いたときに水平になるのが特徴の方眼ノート

手を上げたのはショウワノート


 突然の人気を喜びつつも、中村さんは当時、withnewsの取材にこう話していました。

 「私たち2人の目が黒いうちは作り続けます、でも限界があります。この技術を受け継いでくれる会社が現れて、一人でも多くの人にノートを使ってもらえたら、というのが私の願いです」

 この記事が出た翌日、ショウワノートの開発部で「ジャポニカ学習帳」を担当している小原崇さんから、withnews編集部に電話がありました。

 「中村さんのお話に大変興味があります。ぜひお会いしたいので、ご紹介いただけないでしょうか」

 小原さんは中村印刷所に何度も通い、ときにはショウワノートの工場長も連れて、提携に向けて話し合いを重ねました。そして6月30日に、中村印刷の技術を採り入れたノートをコラボ商品として作ることが決まり、開発が始まりました。

「昆虫の写真が消えた」と話題になったジャポニカ学習帳

「昆虫の写真が消えた」と話題になったジャポニカ学習帳

出典: ショウワノート提供

過去には失敗も


 実はショウワノートは過去に、製本の際に糸や針金を使わない「無線綴じ」と呼ばれる製法で、ノートを発売したことがありました。しかし、強度が不十分で不良品を出すという苦い経験をしています。

 コラボ商品にゴーサインを出した、ショウワノートの片岸茂社長はこう話します。

 「ジャポニカ学習帳をはじめ、常に他社より一歩進んだノートを作り続けてきましたが、ここ数年は進化ができていませんでした。過去の失敗が一瞬頭をよぎりましたが、中村印刷所さんとコラボすることで、思い切ったチャレンジをしようと決めました」

 コラボしたノートは、きれいに見開ける特徴をいかした児童向けの学習帳で、2017年春ごろに発売予定です。現在は強度などの検証や、使ってみた感想のヒアリングなどを重ねています。

 発売発表を間近に控えた小原さんは、こう話します。

 「中村社長の『いい技術なんだから誰かに受け継いでもらって、一人でも多くの人にノートを使ってもらいたい』という言葉に感銘を受けました。中村印刷所の技術と思い、ショウワノートの持つ製造と販売のインフラを活かして、勉強のやる気が出てくるノートとして、広めていきたいと思います」

物語の書籍化も

8月10日に発売される書籍「おじいちゃんのノート 下町の職人魂がオンリーワンを生んだ」

8月10日に発売される書籍「おじいちゃんのノート 下町の職人魂がオンリーワンを生んだ」

出典: セブン&アイ出版提供


 方眼ノートをめぐる物語の書籍化も決まりました。タイトルは「おじいちゃんのノート 下町の職人魂がオンリーワンを生んだ」。

 企画したセブン&アイ出版の落合加依子さんは「おじいちゃん二人の職人魂に惹かれました」と話します。

 1月末、中村社長に出版の相談で電話したところ、「出版がどうのというのはよくわからないし、今はそれどころじゃないくらいノート作りが忙しいから勘弁してください」と断られました。

 諦められなかった落合さんは、中村印刷所のホームページを毎日欠かさずチェック。「生産能力も上がり出荷可能となりましたので、ご注文をお請けさせて頂きます」という文章がアップされたのを見て再度電話。直筆の手紙に、これまで手がけたノンフィクション本を添えて送り、書籍化のOKをもらいました。

 落合さんはこう話します。「製本をしている様子を見た時などは、まるで映画を観ているように感じて感動しました。取材や打ち合わせで何度も足を運びましたが、編集する側としても、この本に関わる毎日は、本当に楽しかったです」

 コラボ商品や書籍化が決まったことについて、中村社長は、こう話します。

 「皆さまのお力によってノートが世間に広がり、中村印刷所の再生が可能になりました。工場の設備を一新して、自前で作るノートの生産数を増やすことも決まっています。数を増やすことで値段を下げ、みなさまに還元したいと考えているので、これからも『ナカプリバイン』こと『おじいちゃんの方眼ノート』をよろしくお願いします」

 ◇ ◇ ◇

 セブン&アイ出版から出る書籍は8月10日発売です。この本には、一冊ずつ中村印刷所で手作りされた非売品「水平開きノート 四六判サイズ」がつくそうです。

〝おじいちゃんの方眼ノート〟量産化 作るのは「ジャポニカ」の会社
前へ
開いたときに水平になるのが特徴の方眼ノート
次へ
1/30
前へ
次へ

Adsby Google
Adsby Google

あわせて読みたい

モンプチ『ネコの輪郭にミシン目』の謎 販...
モンプチ『ネコの輪郭にミシン目』の謎 販...
鉄拳さん「昔、警察のお世話に」 漫画で描いた「暗い過去」感動呼ぶ
鉄拳さん「昔、警察のお世話に」 漫画で描いた「暗い過去」感動呼ぶ
詐欺バスターって何?
詐欺バスターって何?
Q&A
「ADはゴキブリ」と言われ… 28歳女性が語る過酷なテレビ業界
「ADはゴキブリ」と言われ… 28歳女性が語る過酷なテレビ業界
校閲ガール「うちなら不採用」 業界でも一...
校閲ガール「うちなら不採用」 業界でも一...
「この世界の片隅に」ヒット導いた“3つの非常識” 前作不振でも…
「この世界の片隅に」ヒット導いた“3つの非常識” 前作不振でも…
妻のへそくりで新車購入、愛と笑いの『誓約書』 素敵すぎて鼻血が…
妻のへそくりで新車購入、愛と笑いの『誓約書』 素敵すぎて鼻血が…
「医師でもウソ発信」 ネットの医療情報、現役医師が教える見抜き方
「医師でもウソ発信」 ネットの医療情報、現役医師が教える見抜き方
AV業界「ファン感謝祭」熱気むんむん 強要問題への取り組みは…
AV業界「ファン感謝祭」熱気むんむん 強要問題への取り組みは…
『この世界の片隅に』のんさんが語る「日常の感動」大好きな場面は…
『この世界の片隅に』のんさんが語る「日常の感動」大好きな場面は…
PR
コウメ太夫の現在地「毎日チクショー!!」 ジワジワくる1日1ツイート
コウメ太夫の現在地「毎日チクショー!!」 ジワジワくる1日1ツイート
ボブ・ディランの何がノーベル賞なのか? 中川五郎×萩原健太対談
ボブ・ディランの何がノーベル賞なのか? 中川五郎×萩原健太対談
PR

人気

もっと見る