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中国の受験、戸籍で決まる難易度 「地獄式」から「ハッピー式」まで
6月は中国の大学受験(高考)シーズンです。その後の人生を左右する大学入試、中国の受験生には、はんぱないプレッシャーがかかります。中国は本籍地によって試験の難易度が変わるという特殊な事情があり、ネット上では「地獄式」「悪夢式」「ハッピー式」など、独特なネーミングがつけられています。中国の入試とは、一体どのようなものなのでしょうか。
「ハッピー式」と言われている地域は2種類あります。
一つは、直轄市のような大都市です。中国は大学の定員が地域ごとに割り振られています。大学が設置されている場所、つまり地元の学生の定員枠は、その他の地域よりも多いのが一般的です。
その結果、北京大や清華大のような名門大学がある地域に住んでいる受験生は、他の地域の受験生よりも試験成績が低くても入学できてしまいます。北京・上海・天津などには「ハッピー式」の称号が贈られています。
もう一つ、チベットや青海省などの貧困地域も「ハッピー式」と呼ばれています。経済発展が遅れている貧困地域は「支援」という形で、試験成績が低くても受験生が入学できるよう優遇されています。
「ハッピー式」の反対が「悪夢式」「地獄式」です。
直轄市より人口が多く、進学熱の高い一方、地元に大学が少ない地域は、試験の難易度が高くなります。
浙江省、湖北省、湖南省は「悪夢式」と言われています。高校3年生になると、休日がほとんどなく、毎日の勉強時間は16時間以上、「無数」の宿題で詰め込まれるという、まさに「悪夢」のような日々が待ち受けています。
「悪夢式」より、さらに難しいのが「地獄式」です。その代表格、江蘇省についてはネット上で次のような感想が書き込まれています。
中国は試験問題も地域よって異なります。「ハッピー式」「悪夢式」「地獄式」の差はどんなものなのか。ネット上では次のような比較が、ネタとして拡散しています。
実際に出題された問題ではありませんが、「その通り」と、うなずくネットユーザーが少なくありません。
2016年5月、ある「事件」が起きます。元々、「悪夢式」「地獄式」と呼ばれていた江蘇省や湖北省などが、地元の受験生向けの入学定員を減らし、貧困地域と言われている西部の省などに「譲渡」する動きがあると報道されたのです。
中央政府の意向とも言われているこの報道を受けて、地元の保護者から猛烈な抗議が起きます。結局、地元政府が「大学入学枠」は変わらないという声明を出す事態になりました。
定員枠による不公平感から、ネット上では、保護者向けに大胆な「移住」アドバイスも広まっています。
ジョークの部分もありますが、「借読(読=勉強する場所を借りる)」と言われる、本籍地と勉強する場所を使い分ける手法は、教育熱心な家庭とって一つの選択肢になっているのも事実です。
地域の枠に縛られた中国の大学受験制度。急激な経済発展と一人っ子政策による進学熱の高まりが、不公平感に拍車をかけているようです。
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