閉

閉

これフカボリしてほしい

リクエストする

閉

2016年06月05日

天龍の受け身に涙…プロレスという生き方が、こんなにも刺さるなんて

  • 5501

天龍源一郎さん(左)の引退試合。リングを去る父に、長女の紋奈さんは涙を流しながら花束を渡しました=2015年11月15日、東京・両国国技館 

天龍源一郎さん(左)の引退試合。リングを去る父に、長女の紋奈さんは涙を流しながら花束を渡しました=2015年11月15日、東京・両国国技館 

 大人になって、プロレスにはまりました。イケメンレスラーの台頭で、プロレスは今や女性の間でも人気で、「プ女子」なんていう呼び名もついてます。でも、自分が「プ女子」かと言われると、なんとなく違和感があります。私がプロレスにはまったのは、きっと、いろんな意味で「受け身」が必要とされる「プチ・中間管理職」になったから。(朝日新聞東京社会部記者・宮嶋加菜子)

タイガーマスクの華麗なプレーに会場を埋めた若者たちはカメラを構え、声援を送る=1983年3月6日

タイガーマスクの華麗なプレーに会場を埋めた若者たちはカメラを構え、声援を送る=1983年3月6日

出典: 朝日新聞

チームで仕事「凹む」日々

 今39歳。「キャップ」という名のもと、先輩や後輩の記者たちとチームを組んで仕事をすることが多くなりました。これまで1人で取材して一本の原稿を書くことが多かったのですが、チーム取材では、より良い原稿にするために、意見を交わし、議論を深めることが不可欠です。

 当然のことですが、思い入れが強ければ強いほど、意見が対立することもある。「これを書きたい」という記者の思いは、記者にとって「必殺技」です。限りある紙面スペースの中で、いかに伝えたいことを分かりやすく書ききるか。原稿の中の一文を削るか、削らないか。記者は皆、大事な原稿のために、必殺技を繰り出してきます。

 そして、その必殺技から逃げていては、チームは成り立ちません。分かってはいるものの、うまく相手の思いをくむことができず、凹むことが多くなっていきました。

全日本女子プロレスのヒールユニット、極悪同盟。中央はダンプ松本=1985年12月12日

全日本女子プロレスのヒールユニット、極悪同盟。中央はダンプ松本=1985年12月12日

出典: 朝日新聞

悶々としていた中に現れた「ミスター・プロレス」

 そんなこんなで悶々としていた昨年11月、引退興行を控えた「ミスター・プロレス」こと天龍源一郎さん(65)の取材で、1人娘の嶋田紋奈(あやな)さん(32)に出会いました。

 天龍さんと言えば、大相撲で前頭筆頭まで務め、逆水平チョップ、パワーボムといった必殺技を繰り出し、ジャンボ鶴田(故人)、藤波辰爾さん(61)、長州力さん(63)らとともに、1980年代のプロレス人気を牽引。入場曲の「サンダー・ストーム」の哀愁漂うメロディーを聞くだけで涙を流す人も多いはずです。

入場曲の「サンダー・ストーム」の哀愁漂うメロディーを聞くだけで涙を流す人も多い天龍源一郎さん

入場曲の「サンダー・ストーム」の哀愁漂うメロディーを聞くだけで涙を流す人も多い天龍源一郎さん

出典: 朝日新聞

戦う父を見つめた娘の言葉

 紋奈さんは中学生の時から、リング設営や音響を手伝うようになって、所属団体を変えながらも、故・三沢光晴さん、高田延彦さん(53)、棚橋弘至さん(39)といった時代を代表するレスラーとリングで戦い続けた父の姿を見続けてきました。

 紋奈さんは、プロレスが教えてくれたことがある、と言って、こう続けました。

 「プロレスは相手の必殺技を逃げずに受け止める競技なんです。相手の全力の技を受けて受けて、受け続けて、倒れて立ち上がった先に勝利がある。それは人生と同じだと思うんです。相手の人生から逃げずに、受け止める勇気を、父は私に教えてくれました」

「相手の人生から逃げずに、受け止める勇気を、父は私に教えてくれました」。そう語った天龍源一郎さんの1人娘、嶋田紋奈さん

「相手の人生から逃げずに、受け止める勇気を、父は私に教えてくれました」。そう語った天龍源一郎さんの1人娘、嶋田紋奈さん

出典: 朝日新聞

みんな泣いた、私も泣いた

 この言葉を聞いたとき、自分がまさにリングに立っているような気持ちになりました。

 天龍さんの引退試合は、ゆかりの両国国技館で行われました。相手は、新日本プロレスのエースでIWGP王者(当時)のオカダ・カズチカさん(28)。

 痛めた腰にはベルトを巻き、全盛時代とは比べものにならないけれどもパワー・ボムを決める天龍さん。オカダさんから強烈なドロップ・キックを何度も何度も決められ、リングに突っ伏しても立ち上がり続ける天龍さん。最後はオカダさんの必殺技「レイン・メーカー」を完璧に受け、リングに沈みました。

 満場の観客は、みんな泣いていました。私も、カメラレンズをのぞきながら、泣きました。プロレスに自分の人生を重ねる日が来るとは、想像もしていませんでした。

会場が泣いた、天龍源一郎さんの引退試合

会場が泣いた、天龍源一郎さんの引退試合

出典: 朝日新聞

プロレスあるある徐々に

 プロレス・ファンあるあるも、いくつか身につき始めました。例えば……。

▼毎週日曜未明のプロレス番組では、オープニングテーマに合わせて手拍子する
▼コンビニで週刊プロレスの表紙写真をチェックする
▼写真撮影では武藤敬司さん(53)の決めポーズをとる
▼試合開催日を「1月4日」と言わず「イッテンヨン」と言う
▼渋谷など人混みの中を歩くときは、長州力さんの入場曲が頭の中に流れる(長州さんの入場シーンと言えば、熱烈なファンの人混みをかき分けて、なので)……

 上級者は、うがいの時に、ザ・グレート・カブキさん(67)の必殺技「毒霧」(赤い液体を相手に拭きかける技です)を真似たり、挨拶がてらに胸に逆水平チョップをしたりするんですが、私はまだそこまでいっていません。

新日本プロレスのベンチマット。座席の固い会場での観戦や、プロ野球、ラグビー観戦にも大活躍です。空席時はライオンが牙をむき、席を取られる心配もありません

新日本プロレスのベンチマット。座席の固い会場での観戦や、プロ野球、ラグビー観戦にも大活躍です。空席時はライオンが牙をむき、席を取られる心配もありません

「トランキーロ、あっせんなよ!」

 今、とても気に入っているのが、新日本プロレスの現IWGP王者、内藤哲也さん(34)が小憎らしく言い放つ決めぜりふです。

 「トランキーロ、あっせんなよ!」。

 スペイン語で「焦るなよ」を意味するらしいのですが、職場で締め切りに追われているとき、心の中でこの言葉をつぶやくと、なぜかリラックスできます。

 まだまだ「受け身」は身についていませんが、プロレスを知って、人生が豊かになりました。今日も仕事、頑張ります。

プロレスが心に刺さる理由がよくわかる写真30枚
前へ
グレート小鹿さん(中央)と、ザ・グレート・カブキさんのタッグマッチ。当時73歳と67歳の戦いは「140歳対決」と注目されました=2015年11月15日、東京・両国国技館
次へ
出典:天龍プロジェクト提供
1/30
前へ
次へ

あわせて読みたい

グリコーゲンを極めたグリコの本気度がすごい!
グリコーゲンを極めたグリコの本気度がすごい!
PR
カネ余り、楽勝就活…バブル世代のイケイケな...
カネ余り、楽勝就活…バブル世代のイケイケな...
「コミュ障」なのにアナウンサーに…吉田照美が味わった絶句シーン
「コミュ障」なのにアナウンサーに…吉田照美が味わった絶句シーン
伊勢丹バイヤーを動かした一人の主婦の熱意...
伊勢丹バイヤーを動かした一人の主婦の熱意...
移民の店主がレシートに入れた「言葉」が話題に 「その勇気に感動」
移民の店主がレシートに入れた「言葉」が話題に 「その勇気に感動」
「ちゃんと叱ればいいのに…」が一転、母になって初めて分かったこと
「ちゃんと叱ればいいのに…」が一転、母になって初めて分かったこと
のんさんが惚れた「おなら」 人生の楽しみ方を知った映画とは?
のんさんが惚れた「おなら」 人生の楽しみ方を知った映画とは?
PR
のら猫が飛び蹴り?正拳突き? 話題の写真、撮影の「秘密道具」は…
のら猫が飛び蹴り?正拳突き? 話題の写真、撮影の「秘密道具」は…
打ち切り一転、ドラマ化の話 結果は… ある漫画のウソみたいな実話
打ち切り一転、ドラマ化の話 結果は… ある漫画のウソみたいな実話
『腕時計用カレンダー』根強い人気 数分で...
『腕時計用カレンダー』根強い人気 数分で...
盲導犬は可哀想な犬じゃない 犬の視点で理解求めるポスターに共感
盲導犬は可哀想な犬じゃない 犬の視点で理解求めるポスターに共感
『タイムスリップ写真』ネットで拡散中 雑誌の企画に思わずほっこり
『タイムスリップ写真』ネットで拡散中 雑誌の企画に思わずほっこり

人気

もっと見る