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「誰か来いや!」 熊本地震、カメラマンが伝えたかった「日常」

動けなくなった軽自動車。近くにいた男性が「誰か来いや!」と叫ぶと、ボランティアの若者らが集まり、車を押し上げた=4月17日午後3時56分、熊本県益城町、加藤諒撮影
動けなくなった軽自動車。近くにいた男性が「誰か来いや!」と叫ぶと、ボランティアの若者らが集まり、車を押し上げた=4月17日午後3時56分、熊本県益城町、加藤諒撮影

 熊本地震の発生直後、現地に入った朝日新聞のカメラマンは13人。連日、現地の状況を伝える写真が紙面に掲載されました。そして、膨大な数の「使われなかった写真」にも、被災地の人々の姿が記録されています。避難所で急きょ開かれた夜の上映会。めちゃくちゃになった自宅から見つけたボールを見つめる高校球児。弔いの花を供える女性。「アナザーカット」から見える熊本地震をお伝えします。

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亀裂の前で

 敷地に入った大きな亀裂の横で赤ちゃんを抱いて上空を見上げる女性。地面にあらわになった亀裂は、地震の爪痕を生々しく物語っています。

敷地に入った大きな亀裂の横で赤ちゃんを抱いて上空を見上げる女性=4月15日午前7時55分、熊本県益城町、朝日新聞ヘリから、森下東樹撮影
敷地に入った大きな亀裂の横で赤ちゃんを抱いて上空を見上げる女性=4月15日午前7時55分、熊本県益城町、朝日新聞ヘリから、森下東樹撮影

「最後の夏」

 地震は部活動に汗を流す球児の日常も壊しました。散乱した自分の部屋で、中学校の野球部コーチからメッセージが入った卒業記念ボールを見つけた高3生の後藤海斗くん(17)。高校は休校中で練習も出来ていません。「最後の夏。大会には出たい」

散乱した自分の部屋で、中学校の野球部コーチからメッセージが入った卒業記念ボールを見つけた高3生の後藤海斗くん(17)。高校は休校中で練習も出来ていない。「最後の夏。大会には出たい」=4月18日午前10時16分、熊本県南阿蘇村、遠藤啓生撮影
散乱した自分の部屋で、中学校の野球部コーチからメッセージが入った卒業記念ボールを見つけた高3生の後藤海斗くん(17)。高校は休校中で練習も出来ていない。「最後の夏。大会には出たい」=4月18日午前10時16分、熊本県南阿蘇村、遠藤啓生撮影

「誰か来いや!」

 各地からボランティアが駆けつけました。ガス復旧のために被災地を走行していた軽自動車が、アスファルトの割れ目にタイヤを落としてしまい動けない状態に。近くにいた男性が「誰か来いや!」と叫ぶと、ボランティアで民家の片付けのため鹿児島から来ていた若者らが集まり、車を押し上げました。

ガス復旧のために被災地を走行していた軽自動車が、アスファルトの割れ目にタイヤを落としてしまい動けなくなった。近くにいた男性が「誰か来いや!」と叫ぶと、ボランティアで民家の片付けのため鹿児島から来ていた若者らが集まり、車を押し上げた=4月17日午後3時56分、熊本県益城町、加藤諒撮影
ガス復旧のために被災地を走行していた軽自動車が、アスファルトの割れ目にタイヤを落としてしまい動けなくなった。近くにいた男性が「誰か来いや!」と叫ぶと、ボランティアで民家の片付けのため鹿児島から来ていた若者らが集まり、車を押し上げた=4月17日午後3時56分、熊本県益城町、加藤諒撮影

夜の上映会

 厳しい避難生活の中で笑顔を見せた子どもたち。夜、寝る前にアニメ映画の上映会が始まりました。余震への恐怖を少しでも和らげたいと企画されました。

夜、寝る前にアニメ映画を見て笑う子どもたち。余震への恐怖を少しでも和らげたいと企画された=4月19日午後7時27分、熊本市中央区の白山小学校、細川卓撮影
夜、寝る前にアニメ映画を見て笑う子どもたち。余震への恐怖を少しでも和らげたいと企画された=4月19日午後7時27分、熊本市中央区の白山小学校、細川卓撮影

花が好きだった

 花を供えたのは、水が入った石。地震で倒壊し、住んでいる人が亡くなった家の前で尾方勝子さん(71・右端)は「今日は暑いから」と言い、花が好きだったという故人を悼みました。

地震で倒壊し、住んでいる人が亡くなった家の前で手を合わせるボランティアや近所の住民ら。尾方勝子さん(71・右端)は「今日は暑いから」と水が入った石に花を供えた。故人は花が好きで庭を美しく飾っていたという=4月22日午前、熊本県益城町、福岡亜純撮影 ※朝日新聞名古屋本社紙面では使用
地震で倒壊し、住んでいる人が亡くなった家の前で手を合わせるボランティアや近所の住民ら。尾方勝子さん(71・右端)は「今日は暑いから」と水が入った石に花を供えた。故人は花が好きで庭を美しく飾っていたという=4月22日午前、熊本県益城町、福岡亜純撮影 ※朝日新聞名古屋本社紙面では使用

畳を切って救助

 永田裕昭さん(43)は、家具などに挟まれた妻の両親を助けそうと、救助隊が来るまでの間、畳などをのこぎりで切ったりして救助を手伝いました。「命があって何よりです」

1階部分が押しつぶされた妻の実家に入り、必要な物がないか探す永田裕昭さん(43)。4月16日の本震後、初めて中に入り、パソコンや衣類などを運び出した。14日の前震で、1階にいた妻の両親は家具や潰れた2階部分に挟まれ、救助隊に救助された。16日の本震で家はさらに傾いたという。永田さんは「救助隊が来る前、畳などをのこぎりで切ったりして救助を手伝った。命があって何よりです」と話していた=4月22日午後2時17分、熊本県益城町、西畑志朗撮影
1階部分が押しつぶされた妻の実家に入り、必要な物がないか探す永田裕昭さん(43)。4月16日の本震後、初めて中に入り、パソコンや衣類などを運び出した。14日の前震で、1階にいた妻の両親は家具や潰れた2階部分に挟まれ、救助隊に救助された。16日の本震で家はさらに傾いたという。永田さんは「救助隊が来る前、畳などをのこぎりで切ったりして救助を手伝った。命があって何よりです」と話していた=4月22日午後2時17分、熊本県益城町、西畑志朗撮影

「ようやくひと安心」

 熊本県阿蘇市では、放置された田んぼが目立ちます。黒川地区の佐藤邦博さん(41)の田んぼも水路が壊れ、4月30日にようやく水を入れることができました。「ようやくひと安心。でも周りのことや、これからのことを考えると、もっと早く復旧してほしい。まだまだ頑張っていかんと」。

熊本地震で田んぼに亀裂が入ったり、水路が壊れたりした熊本県阿蘇市で田植えが始まっている。黒川地区の佐藤邦博さん(41)の田んぼも水路が壊れ、4月30日にようやく水を入れることができた。だが、別の田んぼでは水路が修復されず田植えはあきらめている。周囲では、放置された田んぼが多く見られる。佐藤さん一家6人は地震後?日間ほど車中泊で過ごした。この日は家族総出で田植えを終えた。「ようやくひと安心。でも周りのことや、これからのことを考えると、もっと早く復旧してほしい。まだまだ頑張っていかんと」と話した。
熊本地震で田んぼに亀裂が入ったり、水路が壊れたりした熊本県阿蘇市で田植えが始まっている。黒川地区の佐藤邦博さん(41)の田んぼも水路が壊れ、4月30日にようやく水を入れることができた。だが、別の田んぼでは水路が修復されず田植えはあきらめている。周囲では、放置された田んぼが多く見られる。佐藤さん一家6人は地震後?日間ほど車中泊で過ごした。この日は家族総出で田植えを終えた。「ようやくひと安心。でも周りのことや、これからのことを考えると、もっと早く復旧してほしい。まだまだ頑張っていかんと」と話した。

熊本地震、カメラマンの動き

 発生時、別件取材で熊本市内にはカメラマンが1人いました。福岡市にいたカメラマン3人が直後に福岡・北九州から熊本へ移動。14日夜に、別のカメラマンが空撮。15日朝からは別のカメラマンが空撮をしました。

 東京からは3人が羽田→北九州の最終便に乗り、北九州からは車で熊本に。東京にいたもう1人は朝日新聞の社有機で北九州に午前2時ごろ到着、翌15日朝、空撮し、福岡に移動、社有ヘリで熊本市内に入ります。

 広島駐在のカメラマン1人は発生直後、車で広島から熊本へ。大阪の2人は15日朝、社有ヘリで伊丹→福岡。1人はそのまま空撮、1人は福岡から熊本へ向かいました。

 地上班は15日朝までに現地入りし、取材。その後、それぞれ、宿泊先で16日未明の「本震」を経験しました。

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