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IQ上位2%の人だけ入会可 高知能集団「MENSA」の実態とは
IQが高くないと入れない団体「MENSA」。秘密のベールに包まれた活動の実態に迫ります。
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IQが高くないと入れない団体「MENSA」。秘密のベールに包まれた活動の実態に迫ります。
知能指数(IQ)上位2%の者だけが入会を許される、国際グループ「MENSA」。メンバーはどんな人たちで、一体どんな活動をしているのでしょうか。謎に包まれた団体の実態を、JAPAN MENSAの竹市悟己議長と会員の坂本香苗さんに聞きました。
――元々は1946年に英国で生まれた団体だとか。
竹市)創設者は、ローランド・ベリルとランス・ウェアという二人の弁護士です。英国には乗馬だとかポロだとか、たくさんのクラブがあって、そのうちの一つとして出発したんです。
全世界で約12万8千人、日本では約2100人の会員がいます。46カ国に支部があり、100ほどの国と地域にメンバーがいます。テレビなどでの露出もあって、ここ2年ほど会員が急増しています。
入会テストの受験料は1万円するのですが、東京ではテストの度に必ず満席になるような状況です。
日本支部は過去にできてはつぶれを繰り返しており、最初に設立されたのは30年ほど前。その時は主に在日米軍など外国の方が主体だったようです。現在のJAPAN MENSAは2007年に設立されました。私は2代目議長で、2014年に就任しました。
――脳科学者の茂木健一郎さんやお笑いコンビ「ロザン」の宇治原史規さんが会員として有名ですが、ほかにはどんな方が在籍していますか。
竹市)当初、サラリーマンはほとんどいませんでしたが、今はどんどん増えています。大学の先生や創業社長、IT技術者、ヘアメークなど様々です。なかには不登校やニートだった人もいます。
MENSAに入って初めて自分が何者なのかを知った、という方は多いです。周りと話が合わず、学校の先生や友達、親から「お前の言っていることはわからない」と言われてしまう。「自分は馬鹿なのだろうか」と思っていた人たちが、「もしかしたら知能が高いんじゃないか」と気づくわけです。
知能の高い人は「こうして、こうして、こうなる」という話をする時に、間を飛ばして結論を言う人が多い。それで周囲から「何を言っているかわからない」と思われてしまうんですね。
また、自分が正しいと信じて疑わない姿勢が、「意固地」と受け止められてしまうこともある。しかし、そうした点は適合するように努力することで克服可能だと考えています。
――年齢や性別に特徴はありますか。
竹市)小学生から80歳代まで、幅広い世代の人がいます。男性が圧倒的に多く、男女比は9:1か8:2ぐらいです。女性が少ないのは、そもそもの受験者が少ないからで、合格率はあまり変わりません。
男性はIQが高い人から低い人まで広く分散しており、女性は真ん中に集中している。だから、ある数値で区切ってそれより上をとると、男性が多くなってしまうんです。
坂本)最初のオフ会に参加した時、私以外は全員男性だったのでビックリしました。男性はパズルが好きな人が多いのかもしれません。
――具体的に、どのような活動をしているのですか。
竹市)乗馬、ビリヤード、ダーツ、レーシングカート、ダイビング、スカイダイビングなど様々な活動をしています。私の主催でローカル線の旅をしたこともありますよ。青春18きっぷを持って集まって、10時間ぐらい電車に乗るんです。会員は好奇心の強い人が多く、どんな提案でも「面白い!」と乗ってきますね。
MENSAの活動目的には、
1.知性才能を、認知、育成し、人類の向上に役立てること。
2.知性の原理、性質、そしてその適用などを研究することを激励すること。
3.メンバーのための知的、かつ社会的活動を促進させること。
の3つがありますが、特に重視しているのは3番目です。とにかく、会員同士が集まることが大事。「○○の会」と銘打って、お酒を飲むことも多いです。
――やはり、高級ホテルの最上階のバーとかで……。
竹市)いやいや、学生さんもかなりの数いますから、大衆的な場所でやっていますよ。
――よく見たら、ホームページにも「イチゴ狩り」とか「飲み会」とか、平和な感じのイベント情報が載ってますね。何となく、頭のいい人たちが集まって世界征服を企んでいるようなイメージがありますが。
坂本)テレビのバラエティー番組などでは秘密結社感を出して紹介していただくことが多いですが、実態は飲み会大好きなサークルみたいな感じです。
竹市)ある程度秘密にしているのは、会員の個人情報の保護のためです。やはり、「IQが高い」ということで逆差別を受けることもありますから。「粋がっている」とか「賢いからってナメるな」と思われてしまう。そうした偏見もあり、特に女性はほぼ全員が会員であることを隠しています。
坂本)会員同士では何でも話せますが、それ以外にはあまり大っぴらにしたくない、という気持ちはありますね。
――出る杭は打たれる?
竹市)「出る」前に疎外されてしまうんですよね。
――会員はMENSAのどんなところにひかれるのだと思いますか。
竹市)少年期や青年期に周囲とうまくコミュニケーションがとれなかった人にとっては、それを取り戻す機会になっているのでは。
MENSAで同じような仲間と会い、遊びの会を組織する。そうやって人付き合いを訓練することで、社会に戻っても失敗しなくなる。
私はこれを「遊び直し」と言っています。広い意味での教育訓練機関としての役割も果たしているんです。
――そもそも、IQって何なんですか。
竹市)ある科目がよくできた人は、ほかの科目もできることが多い。学校の成績を左右する要因は何か。知能には共通性があるんじゃないか――というところから学者の人たちが色んなIQテストを考えました。数学や国語など、学業との相関関係はかなり高いと言われています。
知能には、流動性知能(パズルなどを解く力)と結晶性知能(経験や知識など)があり、前者が20代をピークに低下していく一方、後者はかなりの年齢まで上がり続けます。15歳と100歳で計算力を比べたら、100歳が負けるのは当たり前。ですから一般的なIQテストでは「年齢集団における上位何%」という形で比較しています。
IQというのは、IQテストのスコアに過ぎません。学力と幸福度にほとんど相関はないとする研究もあります。また、アイデアや企画力、創造性、芸術性などはキチッと測定することができません。
――今後の活動の展望は。
竹市)長期的には、会員数を1万人ぐらいまで増やしていきたい。また、MENSAの各国議長による最高会議「IBD」が、今年10月に日本で開催されます。滋賀と京都で、3日間にわたって会議や式典、パーティーなどを行う予定です。
〈たけいち・さとき〉 JAPAN MENSA議長。京都大学大学院卒。成基総研 フェロー。2011年MENSA入会、2014年より議長職を務める。
〈さかもと・かなえ〉 JAPAN MENSAオンブズマン。2014年に入会。昨年度までは広報担当。
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