MENU CLOSE

話題

写真を超えた鉛筆画、ぺン1本で描く女優たち 作者「身を削る思い」

こちらを優しいまなざしで見つめる女優の鉛筆画。まるで写真のようです。描いているのは富山市の会社員、古谷振一さん(52)。いまはうつ病を患い、休職中。病気と向き合う生活を支えているのは、「描くこと」だといいます。

女優の有村架純さんを描いた鉛筆画=古谷振一さん提供
女優の有村架純さんを描いた鉛筆画=古谷振一さん提供

こちらを優しいまなざしで見つめる女優の鉛筆画。まるで写真のようです。描いているのは富山市の会社員、古谷振一さん(52)。いまはうつ病を患い、休職中。病気と向き合う生活を支えているのは、「描くこと」だといいます。

【PR】手話ってすごい!小学生のころの原体験から大学生で手話通訳士に合格

目から描く。心や特徴を映しているから

有村架純さんの目=古谷さん提供
有村架純さんの目=古谷さん提供

古谷さんの絵は、まず目から描かれます。

「目はその人の心や特徴を映していると考えられます。だから一番最初に描いておきたいのです」(古谷さん)

眉や鼻、口と描く範囲を広げていき、髪が最後に残ります。一番やっかいなのは、この髪だとか。

「女性の髪型は長さも形も色もどれ一つとして同じものがなくつかみどころがありません。従って描くのには非常に時間がかかります。一般に似顔絵でよく目にするのは、この髪の毛をほとんど省略した絵ですが、私は省略せずきちんと描くようにしています」(古谷さん)

髪は女性の命と考え、丁寧に描いているそうです。

1日8時間描く。身を削り、絵に魂を込めている

自宅で、白黒の写真を参考にしながら描いている。天井からカメラをぶら下げ、動画撮影も=古谷さん提供
自宅で、白黒の写真を参考にしながら描いている。天井からカメラをぶら下げ、動画撮影も=古谷さん提供

誰にも邪魔されず、没頭できるから、絵を描くことが好きだという古谷さん。約30種類の濃さの異なる鉛筆を使い分けています。一度始めると、1~2時間は描き続け、集中すると1日8時間描くこともあるといいます。

「8時間も絵と向き合うと、足はむくみ目はかすみ、手に力が入らなくなります。昨年の一時期には目の網膜に異常をきたしたこともありました。ビデオ撮影のために照明を暗くすることもあるので、特に目への負担は大きいようです。いわば身を削って絵に魂を込めているような感覚です」(古谷さん)

ただ、絵への没頭は、体だけでなく、心にも影響を与えました。うつ病にかかったのです。

女優の石原さとみさん=古谷さん提供
女優の石原さとみさん=古谷さん提供

遺言状。旅立ちのとき、右手に鉛筆を持たせてください

今年1月。古谷さんのツイッターの投稿の様子がおかしくなりました。不安な心をのぞかせる記述が続きました。



この投稿から11日後。古谷さんは適応障害と抑うつと診断されました。

古谷さんが鉛筆画に本格的に取り組みだしたのは3年前です。知人の女性を描いたのがきっかけでした。地元のテレビや新聞で話題になり、取材への対応が相次ぎました。元々、一度に複数のことができないタイプ。精神的に追い込まれ、今年1月になり、電気回路の設計の仕事をうまく回していくことができなくなったといいます。

「自分の心の柱が仕事なのか絵なのかわからなくなり、会社を休んでしまいました。それがきっかけで一気にうつ状態になってしまいました」(古谷さん)

現在は心療内科に通い、薬で治療をしているそうです。

絵を描く。何も頭の中に入ってこない

新垣結衣さんの鉛筆画。たった2種類の鉛筆で描かれている=古谷さん提供
新垣結衣さんの鉛筆画。たった2種類の鉛筆で描かれている=古谷さん提供

絵がきっかけで、追い詰められていった古谷さん。それでも、今の自分を支えているのは、描くことだといいます。

「仕事に復帰できるかどうかはまだわからない状態ですが、心の状態は安定しています。薬によって安定しているとはいえ、仕事のことが気になるので、たまにイライラしたり心配になったりします。仕事に行けていない状況でそのような精神状態になると、とたんにうつの状態になってしまいますので、絵を描くことで気持ちを切り替えています。絵を描き出すと何も頭の中には入ってきません。絵を描くことで心を落ち着かせています」(古谷さん)

一度は捨てた道を、リタイア後に歩む。これが今の夢

中学生のころから絵が好きだったという古谷さん。絵の道を目指すことも考えましたが、プロとしてやっていけるイメージがわかず、夢をあきらめました。仕事を始めてからは、絵を描く余裕がなくなり、24年間、描くことから離れていました。

今、再び描いています。女優の桐谷美玲さんを描いた様子を早送りでおさめた動画はYouTubeでの再生回数が60万回を超えました。現在は、東京都内で個展を開く準備中だそうです。

「本業は頭をかなり使う仕事なので、せいぜいで65歳まで続けたらやめ、そのあとは絵を収入源にできれば良いと考えています。一度は捨てた道を、リタイア後に歩む、これが今の私の夢です」


関連記事

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます