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感動

「私には夢がありました」新人駅員が受験生へ 黒板の言葉が感動呼ぶ

センター試験のの2日間、JR郡山駅の改札内に黒板が設置されました。そこに書かれていたのは「受験生のみなさまへ」と題したメッセージでした

センター試験の期間中、郡山駅の改札内に設置された黒板
センター試験の期間中、郡山駅の改札内に設置された黒板 出典: JR郡山駅提供

目次

 センター試験があった今月16・17日の2日間、福島県にあるJR郡山駅の改札内に黒板が設置されました。そこに書かれていたのは「受験生のみなさまへ」と題したメッセージ。企画したのは、ともに23歳の女性駅員2人で、「教師になる」という夢を叶(かな)えられなかった経験をもとに書きました。2人は黒板にどんな思いを込めたのでしょうか? 詳しく話を聞きました。

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JR郡山駅の外観
JR郡山駅の外観 出典: JR郡山駅提供

「受験生のみなさまへ」全文


 試験初日の16日。午後3時ごろに、在来線の改札内に黒板が置かれました。そこには、こんなメッセージがありました。

平成28年1月 受験生のみなさまへ

いつもJR東日本郡山駅をご利用いただきありがとうございます。今、このメッセージを書いている私も、数年前はみなさんと同じように受験生でした。その頃、私には夢がありました。

学校ではもちろん、帰宅後もたくさん勉強しました。通学途中の電車での数分間も友だちといっしょに予習・復習。

時には、参考書を片手にうたた寝をして降りる駅を寝過ごしてしまうなんてこともありました。

そして迎えた試験当日。最後まであきらめず全力で取り組みました。

現在私は、駅員のひとりとして働いています。これから夢に向かうみなさんのために駅での仕事を通して微力ながらもお力添えができれば幸いです。そして、そのような仕事に出会えたことを誇りに思っています。

残念ながら、あの頃抱いていた夢は叶えることができませんでしたが、道はひとつではありません。

みなさんが今持っている夢や目標のために、ぜひ全力で取り組んでほしいと思います。きっと何かが見えてくるはずです。

郡山駅社員一同、心より応援いたしております。

郡山駅
センター試験期間中に設置された黒板
センター試験期間中に設置された黒板 出典: JR郡山駅提供

ネットで反響


 このメッセージの画像や全文がネット上にアップされ、大きな反響を呼びました。

 「いい計らいだね」
 「駅員粋じゃねーか」
 「うるっと来ました」
 「駅降りてこんなメッセージ見たら頑張れちゃう」

 毎年この時期になると、応援メッセージを設置する駅はあります。郡山駅の黒板が少し異なるのは、駅員自らの経験に踏み込んで書かれている点です。

 「私には夢がありました」
 「残念ながら、あの頃抱いていた夢は叶えることができませんでした」
 「道はひとつではありません」

 こうした言葉にはどんな思いが込められているのか? ともに営業係で入社2年目の吉田真美さん(23)と、1年目の大久保優香さん(23)に話を聞きました。

受験生に向けてこんな展示も
受験生に向けてこんな展示も 出典: JR郡山駅提供

2人に聞きました


 ――2人で作ったそうですね

 吉田さん「私自身、受験でうまくいったことがないので、応援できればと思って書きました。朝9時までの仕事を終えた後、2人で文章やレイアウトを何度も練って、完成までに6時間かかりました」

 ――なぜ黒板だったのですか

 大久保さん「最初は列車の遅れなどを知らせるホワイトボードに書いていたのですが、受験生に向けたメッセージなんだから黒板にしようと、変更しました。普段使われていなかった黒板を探し出すのが大変でした」

 ――2人の「叶わなかった夢」とは

 吉田さん「学校の先生になることです」

 大久保さん「外国人に日本語を教える先生になることです」

営業係の吉田真美さん(左)と、大久保優香さん(右)
営業係の吉田真美さん(左)と、大久保優香さん(右) 出典: JR郡山駅提供

込めた思いとは


 ――どんな思いを込めたんですか?

 吉田さん「私が込めたのは『今持っている夢は、今しか持てない』ということです。高校・大学と教師になるのが夢でしたが、今はこうして駅員として誇りを持って働いています。これから、いろんな世界に出て、いろんなものを見る機会があると思いますが、その時持っていた夢は決して無駄にはならない、ということが伝わればと思いました」

 大久保さん「『頑張って』って言葉は使いたくなかったんです。自分たちもそうだったように、受験生が頑張っているのはみんな知っていますから。これから何が起こるかわからないけど、目の前のチャンスをしっかりつかんでほしい、という思いを込めました」

 ――2人の今の夢は

 吉田さん「郡山駅から地域を盛り上げていくことです」

 大久保さん「これから車掌や運転士といった仕事を経験していくなかで、教わる立場から、きちんと『教えられる人』になることです」

 ◇ ◇ ◇

 試験2日目の17日朝、2人は駅で受験生にカイロやポケットティッシュを配りました。「話題になっているメッセージはどこにあるんですか」と聞かれ、少しうれしくなりながらも、自分たちが書いたことは内緒にして場所を案内したそうです。

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