感動
「私には夢がありました」新人駅員が受験生へ 黒板の言葉が感動呼ぶ
センター試験のの2日間、JR郡山駅の改札内に黒板が設置されました。そこに書かれていたのは「受験生のみなさまへ」と題したメッセージでした
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センター試験のの2日間、JR郡山駅の改札内に黒板が設置されました。そこに書かれていたのは「受験生のみなさまへ」と題したメッセージでした
センター試験があった今月16・17日の2日間、福島県にあるJR郡山駅の改札内に黒板が設置されました。そこに書かれていたのは「受験生のみなさまへ」と題したメッセージ。企画したのは、ともに23歳の女性駅員2人で、「教師になる」という夢を叶(かな)えられなかった経験をもとに書きました。2人は黒板にどんな思いを込めたのでしょうか? 詳しく話を聞きました。
試験初日の16日。午後3時ごろに、在来線の改札内に黒板が置かれました。そこには、こんなメッセージがありました。
このメッセージの画像や全文がネット上にアップされ、大きな反響を呼びました。
「いい計らいだね」
「駅員粋じゃねーか」
「うるっと来ました」
「駅降りてこんなメッセージ見たら頑張れちゃう」
毎年この時期になると、応援メッセージを設置する駅はあります。郡山駅の黒板が少し異なるのは、駅員自らの経験に踏み込んで書かれている点です。
「私には夢がありました」
「残念ながら、あの頃抱いていた夢は叶えることができませんでした」
「道はひとつではありません」
こうした言葉にはどんな思いが込められているのか? ともに営業係で入社2年目の吉田真美さん(23)と、1年目の大久保優香さん(23)に話を聞きました。
――2人で作ったそうですね
吉田さん「私自身、受験でうまくいったことがないので、応援できればと思って書きました。朝9時までの仕事を終えた後、2人で文章やレイアウトを何度も練って、完成までに6時間かかりました」
――なぜ黒板だったのですか
大久保さん「最初は列車の遅れなどを知らせるホワイトボードに書いていたのですが、受験生に向けたメッセージなんだから黒板にしようと、変更しました。普段使われていなかった黒板を探し出すのが大変でした」
――2人の「叶わなかった夢」とは
吉田さん「学校の先生になることです」
大久保さん「外国人に日本語を教える先生になることです」
――どんな思いを込めたんですか?
吉田さん「私が込めたのは『今持っている夢は、今しか持てない』ということです。高校・大学と教師になるのが夢でしたが、今はこうして駅員として誇りを持って働いています。これから、いろんな世界に出て、いろんなものを見る機会があると思いますが、その時持っていた夢は決して無駄にはならない、ということが伝わればと思いました」
大久保さん「『頑張って』って言葉は使いたくなかったんです。自分たちもそうだったように、受験生が頑張っているのはみんな知っていますから。これから何が起こるかわからないけど、目の前のチャンスをしっかりつかんでほしい、という思いを込めました」
――2人の今の夢は
吉田さん「郡山駅から地域を盛り上げていくことです」
大久保さん「これから車掌や運転士といった仕事を経験していくなかで、教わる立場から、きちんと『教えられる人』になることです」
◇ ◇ ◇
試験2日目の17日朝、2人は駅で受験生にカイロやポケットティッシュを配りました。「話題になっているメッセージはどこにあるんですか」と聞かれ、少しうれしくなりながらも、自分たちが書いたことは内緒にして場所を案内したそうです。
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