話題
赤い封筒を拾った男性は死者と…台湾、ガイド本にはない驚きの風習
台湾で道端に落ちている赤い封筒を拾うと、死者と結婚させられる……。ガイドブックにも載っていない風習、本当にあるの?
話題
台湾で道端に落ちている赤い封筒を拾うと、死者と結婚させられる……。ガイドブックにも載っていない風習、本当にあるの?
台湾で道端に落ちている赤い封筒を若い男性が拾うと、草むらから人が飛び出し結婚式を求められる……。この奇妙な風習は、一般的なガイドブックには載っていません。台湾に今も残る、死者と結婚させられる「冥婚」。日本のテレビ番組で取り上げられたことから話題になりました。中国大陸では、お墓参りの時、高級車のフェラーリ、ルイ・ヴィトンのバッグ、さらにiPhoneや愛人の模型を先祖に供える人も。伝統的な風習に現代のアイテムが入り込む、独特の文化が生まれています。
台湾の道ばたに落ちているという赤い封筒。拾った男性は死者と結婚させられる、と言われています。もし、男性が思わず拾ってしまったら……。その瞬間、隠れたところから遺族が現れ、故人の女性との「冥婚」が要求されるのです。これは「冥婚」と呼ばれる風習で、台湾で今も続けられています。
台湾静宜大学で台湾民俗文化を研究している林茂賢・准教授の話によると、台湾の「冥婚」は主に「若くて死んだ未婚女性」と「生きている男性の結婚」の間で行われます。赤い封筒は、その「冥婚」のために用意されたものです。
未婚のまま死亡した女性は「孤娘」(グーニャン)とも呼ばれます。家父長制度の下では「孤娘」は実家で祭られないため、家族に不利益をもたらす恐れがあるとも言われています。また、若くて死んだ女性をかわいそうに思う気持ちもあります。
「冥婚」には、生きている男性と結婚して、嫁がせるのが家族のためにも、女性のためにもなるという考えが反映されています。赤い封筒には、お金や、若い娘の写真、生年月日が書いた紙、髪の毛などが入っていることもあります。これらの品には男女の契りという意味も込められています。
林茂賢准教授によると、「冥婚」は既婚男性との間で行われることが多いそうです。既婚で子どもがいると、女性にも「名義上」子どもができ、供養してもらえると考えられているからです。
もし未婚男性の場合、「冥婚」した後でも普通の結婚はできます。ただし、「冥婚」のしきたりの中では、死者の女性のほうが「最初の夫人」になり、その後、結婚した妻は「後妻」になります。
死者との結婚式では、女性の位牌や遺骨が入っている香炉と結婚するのが一般的だと言われています。冥婚の儀式もほぼ一般の結婚式と同じで、規模はやや小さくなります。また、一般の結婚式は午前から行われるのに対し、冥婚は午後です。双方の両親や家族が出席し、結婚を祝います。冥婚した後も、毎年新年(旧正月の1月2日)に、夫が「妻」の実家に訪れ、「帰省」します。
林准教授は「冥婚の相手の男性にもメリットはあります」と言います。お金がなくて結婚できない男性は、「冥婚」することで結婚ができ、女性の実家から金銭的な援助をもらえることもあるのです。
「健康や仕事などが不調な男性は、運気アップのために、志願して『冥婚』を申し込む人もいる」と林准教授。冥婚は「妻」の神秘的な力で、仕事や健康の運気が良くなると信じる人もいるそうです。
林准教授は「一般的に赤い封筒を拾ってしまうと、男性もそれを何らかの『ご縁』だと思い、話を飲み込むほうが多い」と話しています。
中国大陸では、伝統的な風習に近代的な要素が入り込んでいます。
日本の「お盆」に当たる祖先を祭祀する日は、中国で「清明節」と呼ばれています。日本と同じように、お墓の掃除や、線香やお花を供えます。ただし、中華文化では死者への「お見舞品」を必ず贈ります。
「お見舞品」の定番はお金です。「あの世」でも通貨の流通があると考えられています。本物のお金ではなく、スズを薄くのばした「錫箔」の紙を馬蹄銀の形にして燃やすのが一般的です。農村部では、部屋や家畜を贈ることも少なくありません。すべて紙で作られたもので、燃やしてあの世へ送ります。
近年、この「お見舞品」産業が活況で、様々な商品が出現しています。例えば、錫箔の紙で馬蹄銀を折るのは非常に手間がかかるので、すでに印刷されたお供え用の貨幣が売られています。また、豪邸、高級車のフェラーリ、ルイ・ヴィトンのバッグ、最新型のiPhoneの模型、さらに「愛人」の人形なども、売られています。
1/12枚