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全員サングラス姿で合唱 ワクチン接種で苦しむ彼女と共に 宮古高校

沖縄県宮古島市にある県立宮古高校。先月行われた合唱祭で、3年生のあるクラスが「全員サングラス姿」で歌いました。その理由とは?

全員サングラス姿で歌った3年生のあるクラス
全員サングラス姿で歌った3年生のあるクラス 出典: 宮古高校提供

目次

 沖縄県宮古島市にある県立宮古高校。先月行われた合唱祭で、3年生のあるクラスが「全員サングラス姿」で歌いました。格好つけたかったわけではありません。クラスには子宮頸(けい)がんワクチンの副反応とみられる症状で光に敏感になり、サングラスが手放せない仲間がいます。「1人だけサングラスは嫌だろうと思って」。一緒に舞台に立つために、クラスメートが提案して実現しました。

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「15の夜」を熱唱


 9月25日、宮古島市のマティダ市民劇場で行われた宮古高校の合唱祭。あるクラスの35人がサングラス姿で登壇し、尾崎豊さんの「15の夜」を熱唱しました。見た目だけでなく、尾崎さんをまねてセリフを語る指揮の男子生徒のパフォーマンスもあって、会場は盛り上がりました。

 子宮頸がんワクチン接種後に苦しんでいる女子生徒は「みんなと歌って超楽しかった。楽しい思い出がつくれて良かった」と振り返ります。

尾崎豊さんのセリフをまねて笑いを誘った指揮の男子生徒
尾崎豊さんのセリフをまねて笑いを誘った指揮の男子生徒 出典: 宮古高校提供

子宮頸がんワクチン接種後に


 女子生徒は中学2年生だった2011年に子宮頸がんワクチンを接種。次第に頭痛や虚脱感といった異変があらわれ始め、高校に入ってからは手足のしびれなどで倒れ、保健室に運ばれることが増えました。

 プールの授業中に過呼吸を起こして溺れ、呼吸が止まったり、ロードレースの練習後、けいれんが続いて意識を失ったり。体調不良や入院もあって、なかなか学校へ通えなくなり、登校できても保健室で過ごすことが多くなりました。光に対しても敏感になり、学校でもサングラスが手放せません。

 しかも、気づいたのは接種から3年以上がたった今年1月。ワクチンの副反応を紹介するテレビのニュース番組を見たことがきっかけでした。

放課後、生徒から提案が


 宮古高校では毎年、体育祭、文化祭、合唱祭のどれかひとつを順番で開催しています。今年は合唱祭の年。当初、女子生徒は欠席するつもりでしたが、クラスメートに誘われて練習から参加しました。

 放課後の練習を終えた後、「サングラスで本番出るのは嫌だな」とこぼすと、隣にいた別の生徒が「じゃあ、みんながサングラスで出たらいいんじゃない」と声をかけました。すると周りの生徒たちも「いいね、曲の雰囲気に合ってるし」と応じました。

 でも、女子生徒はためらいました。「きっとサングラスつけたくない人もいるはず。それに、持ってない人は買わなきゃいけない。私のために無理しないで」。そう話すと、仲間たちはこう返してくれました。「大丈夫だよ。合唱祭終わったら絶対に『やってよかった』ってなるから」

 これを受け、担任の女性教諭は学内で事情説明に回りました。「私がしたことはこれだけ。女子生徒を練習に誘ったのも、サングラスをつけようと動いたのも、ぜんぶ生徒たち。リーダーがいるわけでもなく、おとなしいと思っていた生徒たちですが、しっかり成長していました」

合唱祭の様子
合唱祭の様子 出典: 宮古高校提供

「この一言で全部チャラになった」


 両親や祖父母から借りるなどして、当日は全員がサングラスを持参。登壇すると一瞬どよめいたものの、曲が終わると会場は大きな拍手に包まれました。

 本来、保護者は観覧できませんが、女子生徒の母親は特別に許可をもらって様子を見ていました。体はつらそうでしたが、笑顔を絶やさない我が子。終わった後、クラスメートと握手しながら、こう声をかけられていました。

 「ありがとう、おかげで一つになれた。最高のクラスになったね」

 その言葉を聞いた女子生徒は「この一言で、大変だったことが全部チャラになった」と思ったそうです。

 これから女子生徒は学校を休んで治療に専念します。「ワガママを言うと『接種前に戻りたい』『高校生活をやり直したい』と思います。でも、その思いはかなわないので、早く治療法が確立され、元気な身体に戻りたいです」

 合唱祭をやり遂げたクラスには次の目標があります。「みんなで一緒に卒業する」。女子生徒は今日も闘っています。

 ◇ ◇ ◇

 <母親のコメント>

 日々いろんな症状があり、つらい思いしている中でも「私のためにゴメンね」と経済的な心配をしたり、島外での治療のために「きょうだいに寂しい思いをさせている」と家族の心配をしたり、そんな娘です。今は高校の先生方や友達の理解・支えがあり、休みがちではありますが、何とか頑張って登校しています。体力的には辛いと思います。娘以上に副反応に苦しんでいる子は、たくさんいます。早急に治療法が確立されることと、国からの救済を願っています。そして、この記事を読んで、原因が分からずに苦しんでいる子が副反応のことに気づき、前に進むことが出来るならうれしいです。

 ◇ ◇ ◇

 <子宮頸がんワクチン>

 子宮頸がんは、性行為によるヒトパピローマウイルス(HPV)感染が主な原因とされる。2010年11月にワクチンに対する公費助成が始まり、13年4月、小6~高1の女子を対象に予防接種法に基づく定期接種となったが、接種後にけいれんや痛みなどを訴える人が相次いだ。

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