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「あまちゃん」フィリピンで放送 「おしん」は苦戦…リベンジなるか

「あまちゃん」が、フィリピンで放送されることになりました。1990年の「おしん」以来25年ぶりですが、「おしん」はいまいち人気が出なかった過去が…

【写真左】「あまちゃん」の小泉今日子さん、能年玲奈さん、宮本信子さん(左から)、【写真右】「おしん」の泉ピン子さんと小林綾子さん
【写真左】「あまちゃん」の小泉今日子さん、能年玲奈さん、宮本信子さん(左から)、【写真右】「おしん」の泉ピン子さんと小林綾子さん

目次

 NHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」が、フィリピンで放送されることになりました。フィリピンで朝ドラが放送されるのは1990年の「おしん」以来25年ぶり。実は、苦労を重ねる「おしん」のストーリーはフィリピンでいまいち人気が出なかった過去があります。日本では放送終了後に「あまロス症候群」という言葉まで生まれた「あまちゃん」。25年振りのリベンジを狙います。

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初めての吹き替え版

 「あまちゃん」は10月からフィリピンで放送されます。これまでに、インドネシア、マレーシアなど10の国と地域で放送されていますが、今回は初めての吹き替え版で、タガログ語で放送されます。ドラマの挿入歌「暦の上ではディセンバー」「地元に帰ろう」のタガログ語版もリリースされます。

「あまちゃん」の主演・能年玲奈さん=NHK提供
「あまちゃん」の主演・能年玲奈さん=NHK提供

先輩に伝説の朝ドラ「おしん」

 「あまちゃん」の前、1990年にフィリピンで放送されたのが「おしん」です。日本ではドラマとして歴代最高の期間平均視聴率52.6%を誇り、60カ国を超える国で放送されています。

 山形の小作農の三女に生まれた谷村(結婚後は田倉<たのくら>姓)しんの一代記として創作された「おしん」。貧しくて小学校に行けずに奉公に出され、厳しい仕打ちにも我慢する姿が視聴者の心をつかみました。

 髪結い、露店での高級生地たたき売り、子ども服製造・販売とさまざまな商売で稼ぎますが、関東大震災で服工場がつぶれるなどの試練も続きます。長男が戦死した太平洋戦争後、魚の行商で出直し、50歳で経営セミナーに学んでスーパー経営に乗り出して、また成功します。

 これまでエジプト、インド、イランなど60以上の国・地域で放送されています。中国でも1985年から繰り返し放送されています。2008年、胡錦濤(フーチンタオ)国家主席(当時)が訪日前の記者会見で日本について「おしんの印象が深い」と語ったほどです。

海外からの観光客に人気のあるおしん像=山形県酒田市の市物産館
海外からの観光客に人気のあるおしん像=山形県酒田市の市物産館
もう一つは、全話での平均を表す期間平均視聴率で日本のドラマ史上最高の52・6%、最も視聴率が高かった回では平均62・9%の金字塔を打ち立て、世界各国で放送されている「おしん」だ。
2014年11月15日:(beランキング)もう一度見たい!朝の連続ドラマ 「あまちゃん」が歴史を変えた:朝日新聞紙面から
物語は1901(明治34)年に山形の小作農の三女に生まれた設定の谷村(結婚後は田倉<たのくら>姓)しんの一代記として創作。貧しくて小学校に行けずに数え年七つで奉公に出され、厳しい仕打ちにも我慢する姿が視聴者の心をつかむ。奉公先の酒田の米問屋から16歳で東京に飛び出し、髪結い、露店での高級生地たたき売り、子ども服製造・販売とさまざまな商売で稼ぐが、関東大震災で服工場がつぶれるなどの試練も続く。長男が戦死した太平洋戦争後、魚の行商で出直し、50歳で経営セミナーに学んでスーパー経営に乗り出して、また成功する。
2009年6月6日:(昭和史再訪)ドラマ「おしん」人気 58年4月~59年3月 現代育てた世代の物語:朝日新聞紙面から
人気は海外に広がり、これまでエジプト、インド、イランなど60以上の国・地域で放送された。貸し出しにあたる国際交流基金によると「途上国では家族愛がうけるし、努力や才覚で商売に成功する痛快な物語として楽しまれている」という。中国では85年から繰り返し放送され、胡錦濤(フーチンタオ)国家主席が昨年の訪日前の記者会見で日本について「おしんの印象が深い」と語った。
2009年6月6日:(昭和史再訪)ドラマ「おしん」人気 58年4月~59年3月 現代育てた世代の物語:朝日新聞紙面から

苦労話、肌に合わず…途中で終了

 しかし、そんな「おしん」がヒットしなかった国があります。フィリピンです。NHKによると、全297話のうち、提供したのは48話にとどまります。つまり全話放送せずに番組は終了してしまいました。貧しさや、ひどい仕打ちに耐えるストーリーが、フィリピンの人たちには合わなかったようです。

 なぜヒットしなかったのか。香港で番組制作会社を経営するケイコ・ハギワラ・バンさんは、1998年9月のインタビューでこう語っています。

 「例えば、日本のテレビドラマの『おしん』。苦労しているのに、じっと耐える。これは、主に北東アジアの国々で受けた。インドやフィリピンの人には理解できないでしょう。しんみり系よりラテンアメリカ系のドラマが受ける」。

 対照的に、1996年「マリマール」というメキシコのテレビドラマが大ヒットしました。結婚生活に破れた貧しいヒロインが実は大富豪の娘と分かり、巨額の遺産を相続。自分を捨てた夫に復しゅうするというストーリー。ヒロイン役の女優がマニラを訪れた際は、コンサート会場を人波が取り囲み、未明まで大騒ぎになりました。遺産相続で突然金持ちになる。「おしん」とは真逆のストーリー展開が、フィリピンのカルチャーに合っていたようです。

フィリピン・セブ島の「踊る囚人」。キレのある動きで観光客を楽しませる
フィリピン・セブ島の「踊る囚人」。キレのある動きで観光客を楽しませる 出典: 朝日新聞
「西欧のメディアは、アジアはひとつだと思って一本調子になりがちだ。実際は、違いがたくさんあって、ひとつの国ではない。例えば、日本のテレビドラマの『おしん』。苦労しているのに、じっと耐える。これは、主に北東アジアの国々で受けた。インドやフィリピンの人には理解できないでしょう。しんみり系よりラテンアメリカ系のドラマが受ける」
1998年9月15日:香港:上 独立プロ、100カ国へ発信(アジア発 メディア最前線):朝日新聞紙面から
何よりフィリピン人はそのストーリーに魅せられているように見える。結婚生活に破れた貧しいヒロインが実は大富豪の娘と分かり、巨額の遺産を相続。自分を捨てた夫に復しゅうする……。日本のドラマ「おしん」はアジアから中東にかけて爆発的にヒットしたが、当地では放映されたものの余り話題にならなかった。苦労に苦労を重ねて幸せをつかもうとするおしんの姿は共感を呼ばず、遺産相続で突然金持ちになる話に魅せられるところは、いかにもフィリピンらしい。
1996年8月30日:夢は「たなぼた」(特派員メモ・マニラ):朝日新聞紙面から

クドカン脚本の軽妙トーク、通じるか?

 「あまちゃん」は、「おしん」と同じ東北が舞台ですが、宮藤官九郎さんの脚本が持つ独特のユーモアがコアなファンを生み出しました。

 2013年10月、「あまちゃん」の放送が終わった直後のインタビューで、宮藤さんはドラマへの思いを次のように語っていました。

 「言おうとしたことは1週目でほとんど言っているような気がする。田舎の人は自分の住む場所のネガティブなところばかり言うけれど、主人公のアキからみたら全部新鮮に見える。そういうモノの見方っていうのかな」

 震災をテーマにしながらも、軽妙なトークを最後まで楽しませてくれた「あまちゃん」。ラテン系好きと言われるフィリピンでヒットするか注目です。

「あまちゃん」について語る宮藤官九郎さん=2013年9月23日、東京都渋谷区
「あまちゃん」について語る宮藤官九郎さん=2013年9月23日、東京都渋谷区 出典: 朝日新聞
――あまちゃんを通して描きたかったテーマとは。
特にこれというのは決めていなかった。ただ、言おうとしたことは1週目でほとんど言っているような気がする。田舎の人は自分の住む場所のネガティブなところばかり言うけれど、主人公のアキからみたら全部新鮮に見える。そういうモノの見方っていうのかな。
2013年10月1日:「じぇじぇ」ヒットの秘密 宮藤官九郎に聞く「あまちゃん」論:朝日新聞紙面から

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