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お金と仕事

テレビ通販でベンツ売った男の話術 台本なし、一瞬で距離縮めるテク

テレビショッピングでベンツを売った男がいます。台本なしのぶっつけ本番。その話術には、SNSの口コミ効果に通じる秘密がありました。

テレビ通販でベンツ売った道田真一さん。元々はモデルとして活躍していた
テレビ通販でベンツ売った道田真一さん。元々はモデルとして活躍していた

目次

 テレビショッピングでベンツを売った男がいます。台本なし、ぶっつけ本番の世界。「この人が言うなら買ってみよう」と思わせる話術には、親しみやすさと双方向という、ソーシャルメディアの口コミ効果に通じる秘密がありました。

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【動画】「この人からなら買ってみよう」300万円のベンツ、テレビ通販で売った男のトーク術

「7分に1回、商品情報」

 テレビ通販大手QVCでショッピングナビゲーターをつとめる道田真一さんは、この道12年のベテランです。親しみやすい笑顔で、あらゆる商品を売りさばきます。

 道田さんは「テレビショッピングは、テレビ局と商社と配送センターが一体になっている、変わった世界」と言います。千葉市の美浜区にある近代的なビルにあるスタジオ。道田さんらショッピングナビゲーターは、ここから24時間365日、通販番組を発信しています。

 番組には台本はありません。「一番、驚かれるところですが、24時間365日流しているので、台本作っていたら、成り立たないんですよ」と道田さん。商品情報など打ち合わせはしますが、ゲストとのやり取りなどは、基本、ぶっつけ本番です。

 「テレビドラマのように、ずっとチャンネルを合わせてもらうものではありません。だから7分に1回は商品情報を繰り返します」。商品によっては、薬事法など法律的な知識も求められます。「間違いがあると、全体の船が傾いちゃう。その責任は、出演者全員が自覚しています」

台本なしの生放送で商品を紹介する道田さん=2013年9月4日、QVC提供
台本なしの生放送で商品を紹介する道田さん=2013年9月4日、QVC提供

「お客さんの代わりに裏返す」

 そんな道田さん、2012年6月にテレビショッピングでベンツを売ったことがあります。

 「Aクラスのファイナルエディションというタイプでした。(ベンツを販売する)メルセデス社は、若い世代にアピールしたいという思いがあった。QVCの方も、テレビ通販でベンツのような商品を売る挑戦をしたかった。でも、正直『うまくいくのかな?』という気持ちはありました」と明かします。

 道田さんは、納得した上でベンツを売りたいと思い、工場に出向きテストコースで試乗も繰り返しました。「行き着いた目標が、買ってもらうかどうかは別にして、まずは販売店に足を運んでもらうということ。値段は実は国産車と変わらない。でも敷居が高いと思われている。ならば、自分の力で間口を広めたいと考えたんです」

 一方で、道田さんなりに、ベンツの持つクオリティーの高さも紹介しました。「例えばシートベルトの金具を固定させるスリッド。細かいですが、高級車ならではの装備だと思いました。普通のディーラはそういうところは、わざわざ言わない」。その視点は「洋服を売る時に似ている」と道田さんは言います。

 「ネット通販だと、裏地は見えない。テレビ通販は店頭で選ぶお客さんの代わりに自分が裏返したり、縫い目を確認したりできる。コールセンターに問い合わせが来れば、その場で答える。ベンツだって同じだと思いました」

 そんな道田さんの紹介によって、300万円するベンツがテレビショッピングで売れてしまいました。

ベンツA180(写真はアバンギャルド プレイリスト)=メルセデス・ベンツ日本提供
ベンツA180(写真はアバンギャルド プレイリスト)=メルセデス・ベンツ日本提供

「テクニックよりも親しみ」

 24時間流しているとはいえ、視聴者の集中力が続くのは短時間です。道田さんは「結局、多くのことは伝えられない」と、割り切ったうえで大切なことを絞って伝えています。

 「いっぺんに頭に入ること3つくらいです。例えば『うまい・早い・安い』。これを色んな表現で繰り返す。『おいしい・スピーディー・お得です』のように
番組中、ずっと言うようにしています」

 最も大事なことは何か。「嘘はばれる、ということです」と道田さんは強調します。

 「こいつ、いっつもしょうがないこと言っているな。でもこの人が言っているなら、買おうかな。そう思ってもらうには、テクニックよりも親しみが大事なんです。友達にすすめられているような感覚でしょうか。そこがネット通販など、ECサイトとの一番の違いなのかもしれませんね」

24時間365日番組を流し続けているスタジオ。現場で作業する人は意外と少ない
24時間365日番組を流し続けているスタジオ。現場で作業する人は意外と少ない

 テレビという昔ながらのメディアの中で、ソーシャルメディアの要素をおさえたトークを実践している道田さん。

 「同じ商品が色んなところで売っている中で、自分の番組で買ってもらうことの意味を考えます。番組中、イヤホンからは、受注の状況がリアルタイムに入ってきて、それをトークに反映させることもけっこうあります。一方通行に見える生放送ですが、けっこうインタラクティブなんですよ」

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