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沖ノ島、女人禁制・裸でみそぎ 本気で守られている「しきたり」
7月28日、福岡県宗像市の沖ノ島が世界文化遺産登録の国内候補に選ばれました。「神の島」と呼ばれる島には、今も、独特なしきたりが残っています。
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7月28日、福岡県宗像市の沖ノ島が世界文化遺産登録の国内候補に選ばれました。「神の島」と呼ばれる島には、今も、独特なしきたりが残っています。
7月28日、福岡県宗像市の沖ノ島が世界文化遺産登録の国内候補に選ばれました。「神の島」と呼ばれる島には、今も、独特なしきたりが残っています。島全体がご神体とされる沖ノ島。千数百年前からの祭祀(さいし)遺跡があり「海の正倉院」とも呼ばれています。
沖ノ島は、福岡県宗像市の沖合約60キロの玄界灘に浮かぶ周囲約4キロの孤島です。港を除く全島が宗像大社沖津宮の境内です。4世紀後半~10世紀初頭の大和王権による祭祀遺跡が確認されています。遺物は鏡や玉類、武器、馬具、装身具など8万点(国宝)に及びます。朝鮮半島製の金の指輪や中国製の金銅製竜頭なども発見されています。
2017年の世界文化遺産の登録を目指す候補として、国内から「『神宿る島』宗像(むなかた)・沖ノ島と関連遺産群」(福岡県)を推薦することを7月28日、文化審議会が決めました。政府は9月末までに暫定版の推薦書をユネスコ(国連教育科学文化機関)に提出し、閣議了解を経て、来年2月1日までに正式な推薦書を出します。
神域である島に入るにはしきたりがあります。神職がただ一人勤務する社務所横の浜で衣服を脱ぎ、首まで海に入って禊(みそ)ぎをしなければなりません。冬でも、このしきたりは守られています。
また島は女人禁制で、女性が入ることはできません。島内で見聞きしたことを漏らしてはならない「お言わず様」というしきたりもあり、一木一草も持ち帰ることは許されません。
島には、宗像大社から神職が交代でやってきて1人で島を守ります。絶海の孤島での時間をどう過ごすのか。ベテラン神職の1人は「最初は時間の使い方がわからず、参道の掃除ばかりしてた」と話します。「携帯電話も入らないし、『むこう』ではできないまとまった仕事ができる」。ひちりきなどの楽器を練習する人もいるそうです。
漁師が魚を献上してくることもあります。船に乗り込み、一緒に夕食を食べることも。漁師にとっても島は神聖な存在です。「島は神様そのもの」「魚の小骨がのどに刺さっても島の水を飲むと取れる」と信じられており、信仰は暮らしに根付いています。
北九州出身の写真家・作家、藤原新也さんは、2013年に「神の島 沖ノ島」(小学館)を出版しています。
藤原さんは、出版時のインタビューで、沖ノ島について次のように語っています。
「原子の光も自然の光。光そのものに罪はない。だが、それを人間が制御できると思い込んだ結果が今回の原発事故だった。沖ノ島には触れてはいけない禁忌の姿が残っている」
また世界文化遺産を巡っては「多くの人が知らない島の存在を知ってもらい、古代から続く考え方を子孫に伝えるのに役立つのであれば、世界遺産登録も悪くない」と述べました。
一方で、「ランク付けする世界遺産って西欧主導で作られたものでしょう? 西欧の目で評価されれば、自由平等や民主主義といった考えが入ってくる。女人禁制はおかしい、という意見も出てくるだろう」と指摘。
その上で「そういった場面で必要となるのが、日本人のDNAが培った自然への敬い、沖ノ島を守ってきた禁忌を貫く矜持(きょうじ)だ。いまは登録に一生懸命だが、へたしたらそこが戦いになるぞとの覚悟を持ってやらないと」と強調しています。
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