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2015年07月16日

堀場雅夫さん死去、社是は「おもしろおかしく」 学生起業家の第1号

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堀場雅夫さん=2015年4月、堀場製作所提供

堀場雅夫さん=2015年4月、堀場製作所提供

 堀場製作所(本社・京都市)の創業者で、最高顧問の堀場雅夫さんが14日、肝細胞がんで死去しました。90歳でした。個人の研究所から上場企業を立ち上げた「学生ベンチャー第一号」と言われるカリスマ経営者。周囲の反対を押し切って決めた社是は「おもしろおかしく」。そこには、理系出身だからこそ行き着いた人生観がありました。

「吉本興業みたいやな」

 研究開発型ベンチャー企業の草分けで、分析機器のトップメーカーである堀場製作所。社是「おもしろおかしく」は、1978年、創業者の堀場さんの社長引退を機に決まりました。最初、役員会では「それ、ちょっと、おかしい思われますよ」と言われ了承が得られませんでした。

 それでも堀場さんが「おもしろおかしく」にこだわったのには、創業時までさかのぼる深い人間観がありました。

吉本新喜劇の舞台=2013年3月

吉本新喜劇の舞台=2013年3月

出典: 朝日新聞

「株式市場への上場を機会に、社是を決めようとしたんですが、役員会で『それ、ちょっと、おかしい思われますよ』といわれて了承が得られない。4年後の78年に社長を辞めるとき、せんべつ代わりに『おもしろおかしく』がやっと社是に決まったんですよ。その後もお客さんから『吉本興業みたいやな』とか、『いったい何やねん』といわれました。『いい社是やな』といわれるようになったのは、ここ2、3年ですよ」

出典: 1992年10月31日:堀場雅夫・堀場製作所会長(編集長インタビュー):朝日新聞紙面

「ドクター論文を書こうじゃないか」

 1953年、個人の研究所から立ち上げた会社だったため、人材不足に悩んでいた堀場さん。母校の京大で「自信のないやつは大企業に行け。うちのような中小企業こそ、能力のある君の実力を発揮できる場だ」とアピールすると、学生が続々と入社しました。

 しかし、何年かすると大企業に行った同級生は留学などの機会が与えられ博士号を取るのに、中小企業だった堀場製作所では、そんな機会がないことに不満を持つようになります。

 そこで堀場さんは「技術屋であるぼくもその気持ちはわかる。日々の仕事についてドクター論文を書こうじゃないか」と呼びかけます。

堀場さんが通った京都大学

堀場さんが通った京都大学

出典: 朝日新聞

「ところが、3、4年後、社内の雰囲気がおかしくなった。よく聞いてみると、大企業に就職した彼らの同級生は、研究所に配属されたり留学の機会を与えられて、博士号を取っている。その余裕のない中小企業はおもろない、という雰囲気が広がっていたんですね。技術屋であるぼくもその気持ちはわかる。そこで、日々の仕事についてドクター論文を書こうじゃないかと呼びかけたんです」

出典: 1992年10月31日:堀場雅夫・堀場製作所会長(編集長インタビュー):朝日新聞紙面

「生物である人間は神様が造ったもの」

 社長である堀場さんも論文を書きます。選んだテーマは血液分析で医学の博士号を取ります。そこで、「おもしろおかしく」につながる人生観を得ます。
 
 「それまでは『唯物』論者で、世の中の森羅万象は自然科学で説明できると思い込んでいたんですが、人間の体はどんな精密機械にも勝る。生物である人間は神様が造ったもの。その人間をなによりも大切にしようと思い、それがぼくの人生観につながったのかな」

堀場雅夫さん=2002年1月

堀場雅夫さん=2002年1月

出典: 朝日新聞

「そういった手前、ぼくも血液分析についての論文を書いて医学博士号を取ったのですが、その勉強の過程で、医学は自然科学と違うなと思い知らされました。それまでは『唯物』論者で、世の中の森羅万象は自然科学で説明できると思い込んでいたんですが、人間の体はどんな精密機械にも勝る。生物である人間は神様が造ったもの。その人間をなによりも大切にしようと思い、それがぼくの人生観につながったのかな」

出典: 1992年10月31日:堀場雅夫・堀場製作所会長(編集長インタビュー):朝日新聞紙面

「社長50歳定年説」言葉通りに

 「長期政権になると、取り巻きができる。まして、創業者であるぼくに『そろそろ辞めたらどうですか』と進言する勇気のある人はいません」

 ワンマン社長の弊害について心配していた堀場さんは「社長50歳定年説」を唱え、石油ショックの影響で3年ほど延長した53歳の時、潔く引退をします。

 「おもしろおかしく」という社是について堀場さんは「せんべつ代わりに『おもしろおかしく』がやっと社是に決まったんですよ」と振り返っています。

堀場雅夫さん=2010年6月

堀場雅夫さん=2010年6月

出典: 朝日新聞

「これではいかん。長期政権になると、取り巻きができる。まして、創業者であるぼくに『そろそろ辞めたらどうですか』と進言する勇気のある人はいません。そして、ワンマン社長の首を切るのは自分自身しかいないと確信するようになったのです。権力の座に長くいるものが心掛けなければならないことだと思います」

出典: 1992年10月31日:堀場雅夫・堀場製作所会長(編集長インタビュー):朝日新聞紙面

「イヤならやめろ!」ベストセラーに

 堀場さんが1995年に出版した「イヤならやめろ!」はベストセラーになりました。タイトルからは、経営者が部下をしかりつけるイメージがありますが、実際は逆で、会社が嫌になったら、社員はどんどん辞めるようすすめ共感を呼びました。

 また「81点のヒット商品」という独自のコンセプトも提案。変化の早い業界では、完成度よりもスピードが求められるため100点満点を求めない方がいいという発想でした。

堀場雅夫さん=2003年10月

堀場雅夫さん=2003年10月

出典: 朝日新聞

題名から、経営者が部下をしかりつけている図を想像するが、中身は逆で、会社がイヤと思ったら、どんどんやめろという意味だ。著者の経営哲学は一口にいえば「おもしろおかしく」ということに尽きる。会社がおもしろくなかったらサッサとやめるべし。ずるずると残っていては、お互いに不幸だ。ちょうど離婚を考えている夫婦のように、調停などに時間を費やすよりも早いとこやめて、次のチャンスを探すべし。

出典: 1995年12月3日:(核といのちを考える 被爆国から2015:3)堀場雅夫さん:朝日新聞紙面

「八十一点のヒット商品」というコンセプトも面白い。通常の商品は百点を求められるが、分野によっては時間が大切で、完成度は八十一点でもよい場合がある。半導体産業などがそれで、昨日までの主力商品が今日は不良在庫になってしまうという世界である。そうなったら、いままでの百点をとるための努力は、すべて水の泡となる。

出典: 1995年12月3日:(核といのちを考える 被爆国から2015:3)堀場雅夫さん:朝日新聞紙面

核兵器の現状に「嫌な感じがしています」

 1924年生まれの堀場さんは、戦時中、電波兵器の陸軍の研究所で電探(レーダー)の研究をしていました。原爆投下から1年後には広島にも入っています。通常の爆撃や焼夷(しょうい)弾と違う、破壊のされ方のひどさに驚くとともに「それでも人が生活を始めており、『人間ってすごいな』と感じた」そうです。

 核兵器について、最近も発言を続けていた堀場さん。2015年6月のインタビューでは次のように語っていました。

 「ダイナマイトを発明したノーベル。強力な武器があれば誰も使うのが怖くてけんかをしなくなると考えたと思うが、結局は「戦争の道具」になってしまった。核兵器も同じ。ロシアのプーチン大統領はウクライナ情勢をめぐり、使う準備をしたという発言をしましたね。手に入れたら、使いたくなるのが人間の本能。嫌な感じがしています」

復元された第2次世界大戦末期の局地戦闘機「秋水」。堀場さんが開発に関わっていた=2001年12月

復元された第2次世界大戦末期の局地戦闘機「秋水」。堀場さんが開発に関わっていた=2001年12月

出典: 朝日新聞

当時は戦争中。学生は軍事工場とかに行かされ、私は電波兵器の陸軍の研究所へ。実験場があった兵庫県伊丹市で、米軍のB29爆撃機を迎撃するロケット戦闘機「秋水(しゅうすい)」の電探(レーダー)を研究していました。

出典: 2015年6月9日:(核といのちを考える 被爆国から2015:3)堀場雅夫さん:朝日新聞紙面

理学部と医学部が被爆地に行き、私も1年少したって広島に入りました。通常の絨毯(じゅうたん)爆撃や焼夷(しょうい)弾でやられるのとは違い、破壊のされ方がひどかった。それでも人が生活を始めており、「人間ってすごいな」と感じました。

ダイナマイトを発明したノーベル。強力な武器があれば誰も使うのが怖くてけんかをしなくなると考えたと思うが、結局は「戦争の道具」になってしまった。核兵器も同じ。ロシアのプーチン大統領はウクライナ情勢をめぐり、使う準備をしたという発言をしましたね。手に入れたら、使いたくなるのが人間の本能。嫌な感じがしています。

出典: 2015年6月9日:(核といのちを考える 被爆国から2015:3)堀場雅夫さん:朝日新聞紙面


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