お金と仕事
テンガ発売10周年 累計4千万本のヒット商品 海外や医療現場でも
アダルトグッズ「TENGA(テンガ)」が7月7日、発売10周年を迎えました。いまではメード・イン・ジャパンを代表するヒット商品です。
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アダルトグッズ「TENGA(テンガ)」が7月7日、発売10周年を迎えました。いまではメード・イン・ジャパンを代表するヒット商品です。
カップ型の赤いオシャレなアダルトグッズ「TENGA(テンガ)」が7月7日、発売10周年を迎えます。卑猥(ひわい)で後ろめたいイメージだった男性用自慰具を、誰でも気軽に手に取れるさわやかな見た目の製品として売り出し、これまで累計4千万本を販売。現在は海外にも流通網を拡大し、いまではメード・イン・ジャパンを代表するヒット商品です。
テンガを販売するのは、その主力商品を社名に冠したアダルトグッズメーカー「テンガ」(本社・東京都中野区)です。同社は松本光一社長(47)が37歳のとき、1人で起業しました。
元々、自動車整備士をしていた松本社長が、紆余(うよ)曲折をへて転職した中古車販売会社に勤めていたときに「どうしても、ものづくりがしたい」と、3年間で1000万円の貯金をして脱サラしたのが始まり。当時、アダルトグッズは製品デザインもパッケージもマニア向けで製造元のメーカー名も書かれていないような粗悪なものが多かったそうです。
「男性なら誰もがする行為をアシストするものが世の中に普通のものとして受け入れられれば、革命を起こせる」と目をつけた松本社長。たった1人で素材や形状、デザインなど試行錯誤し約3年。誰もが手に取りたくなるもの、それを使うのが自然と思われるような製品を目指しました。
そして05年7月7日、5種類のテンガを発売。使い捨てで1個680円(現価格は750円)と高めの価格帯ながら、発売後1年間で100万本を出荷する商品となりました。
商品群を増やしていく上で参考になった一つは、歯ブラシだといいます。歯を磨くという誰もがする行為なのに、ユーザーは硬めの歯ブラシが好きだったり、軟らかめが好きだったり好みは様々。テンガも同じように嗜好(しこう)の数だけ種類を増やしたそうです。
「使い捨てじゃないものはつくってもらえないのか」という熱い要望を受けて、08年には洗って乾かして保管できるホールシリーズを発売。衛生面も厳しく考慮され50回使用可能です。
さらに「もっと手軽に楽しめるものを」をモットーに、卵型のパッケージ(500円)や名刺大のコンドーム型タイプ(198円)もつくりました。一方で「誰もが使えるものを」という企業理念のもと、13年3月には念願の女性用シリーズも発売しました。
松本社長がたった1人で始めたテンガは現在、従業員数約50人。年間売り上げ20数億円を超えます。
日本全国で購入でき、取扱店はドラックストア含めて約1万店。個室DVD鑑賞店やネット販売も含めると月50~60万本を出荷します。また、海外の販売網も拡大中で米・EU・中国を中心とした海外販売は全体売り上げの約30%を占めるそうです。
テンガは医療現場にも活用の場が広がっています。
独協医科大越谷病院(埼玉県越谷市)の泌尿器科では、強く握りすぎたり、床でこすったりなどの誤った自慰行為により、女性器内で正常に射精できなくなってしまった障害を持つ患者のリハビリツールとしてテンガを使用。ハードタイプから徐々にソフトなタイプに慣れさせたところ障害が治ったという治療報告もあります。
また、がんで前立腺を全摘出し、勃起障害に陥った患者のリハビリ治療に薬と併用し使われています。こちらも、性機能が回復した報告が学会誌に掲載されました。
身体障害者向けにも知恵をしぼります。例えば、握る力が弱い障害を持つ人には、カップと手のひらを結ぶ専用のベルトを用意。カップを握らなくても使用可能です。
この春には高齢化をにらんで、勃起力が落ちても使用できる外付け用の電動バキュームコントローラーを発売。広報宣伝部の工藤まおりさん(23)は「テンガ(カップシリーズ)はある程度の硬度がないと挿入できませんでしたが、バキュームの補助を得れば、勃ちが悪くなっても楽しめます」と説明します。
「革命を起こす」と野望を持って起業したテンガ。実際に認知度も上がり、テレビの深夜番組などで紹介される機会も増えました。
広報の工藤さんに「この10年で自慰行為に革命を起こしたと言っても過言ではないのでは?」と、水を向けると「まだまだです」と即答。テンガの調査では、現在のブランド認知度は男性では約60%。また使ったことがある人は約15%だったそうです。
「つまり世の中の40%の人は、テンガを知りません。知っていても85%の人は使ったことがありません。『性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく』という弊社の夢と使命をかなえるには、まだまだこれからです」。という工藤さん。自信に満ちた表情で、そう話してくれました。