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中国で日本アニメ38作品が姿消す 突然のネット配信禁止

中国文化部が日本のアニメ38作品について、インターネットでの配信を禁止しました。政府の対応には、中国のネット上でも批判的な声が出ています。

中国でネット配信が禁止された38作品に入った「DEATH NOTE」(c)大場つぐみ/小畑健/集英社(左)と「暗殺教室」(c)松井優征/集英社
中国でネット配信が禁止された38作品に入った「DEATH NOTE」(c)大場つぐみ/小畑健/集英社(左)と「暗殺教室」(c)松井優征/集英社

目次

 2015年6月8日、中国文化部(部は日本の省に相当)が日本のアニメ38作品について、インターネットでの配信を禁止しました。理由は「未成年者を犯罪に誘い、暴力や欲情、テロ活動を誇張する内容が含まれる」というもの。同時に、楽視、捜狐、百度など29のウェブサイトが、38作品に関連するコンテンツを提供したとして、警告・罰金などの処罰を受けました。また、「漫画島」など8つのマンガ関連サイトが閉鎖されました。中国政府の対応には、中国のネット上でも批判的な声が相次いでいます。

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「進撃の巨人展」のオープニングセレモニーで、巨人の模型の前でポーズを取るタレントの吉木りさ(右)と千原せいじ=2014年11月27日
「進撃の巨人展」のオープニングセレモニーで、巨人の模型の前でポーズを取るタレントの吉木りさ(右)と千原せいじ=2014年11月27日 出典: 朝日新聞

「進撃の巨人」上映禁止に

 38のブラックリストには「進撃の巨人」も入っています。そのため、13日に開幕する上海国際映画祭(日本映画週間)での上映が中止になりました。

【ブラックリストに入った38の作品】
1.残響のテロル
2. Blood-C
3.学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD
4.Ergo Proxyエルゴプラクシー
5.寄生獣
6.スカルマン
7.Anotherアナザー
8.インフェルノコープinferno cop
9. Afro Samurai
10.東京グール シーズン2
11.ソードアート・オンラインシーズン2
12.東京ESP
13.東京レイヴンズ
14.デビルメイクライ
15.ムネモシュネの娘たち
16.新妹魔王の契約者
17.進撃の巨人
18.コープスパーティー
19.ストライク・ザ・ブラッド
20.デスノート(Death Note)
21.DEADMAN WONDERLANDデッドマン・ワンダーランド
22.デート・ア・ライブシーズン2
23.PSYCHO-PASS サイコパス
24.デビルマンレディー
25.School Days(スクールデイズ)
26.エルフを狩るモノたち
27.エルフェンリート
28.ハイスクールD×D
29.百花繚乱SAMURAI GIRLS
30.だから僕は、Hができない
31.GIRLSブラボー
32.かのこん
33.はぐれ勇者の鬼畜美学
34.桜通信
35.暗殺教室
36.黒執事3
37.CLAYMOREクレイモア
38.ダンスインザヴァンパイアバンド Dance In The Vampire Bund

リストさらに拡大

 アニメのタイトルには「死体」や「亡霊」などの表現が目立ちます。未成年者の保護を目的にしている一方、年齢の区別をせず一斉に放送禁止したことは、中国国内でも波紋を広げています。特に「進撃の巨人」「寄生獣」「デスノート」は中国でも人気が高いだけに注目が集まりました。文化部は、今回のブラックリストに入っているのは一部の作品だけだとしており、リストをさらに対象を広げていく方針です。

寄生獣1巻(完全版)(c)岩明均/講談社
寄生獣1巻(完全版)(c)岩明均/講談社

胸の露出で再編集「不思議な光景」に

 娯楽作品への規制をめぐっては、2014年12月、中国のテレビ業界で一大事件が起こりました。中国の歴史上に唯一の女帝武則天を題材にしたドラマ「武媚娘伝奇」は、高い視聴率を記録しながらも、急きょ放送中止になりました。当時の世界観を再現することにこだわり、非常に華麗で露出度の多い衣装が特徴でした。中国で人気の高い範氷々のほかに、周海媚ら豪華な女優陣が話題を呼んでいました。

 しかし放送後まもなく、胸の露出が多すぎるという理由で、国家新聞出版広電総局が急に再編集の指示を出しました。
 その結果、2015年1月にドラマの放送が再開する際にテレビ画面に映ったのは、女優たちの顔にクローズアップされた画面ばかりで、首以下の部分はほとんどカットされるという不思議な光景でした。

 また、2015年2月に放送された「封神演義」では、主役の殷王朝の末代皇后である「妲己」の服装について、当局からの指示で映像が編集され、胸の露出は一切禁止されました。

「武媚娘伝奇」で注目された女優、ファン・ビンビン(范冰冰)=ロイター
「武媚娘伝奇」で注目された女優、ファン・ビンビン(范冰冰)=ロイター

ネット上、タイトル茶化して批判

 近年、中国のメディア産業は急速に発展しています。特に、ネットメディアのコンテンツはアダルト関連のものや暴力的なコンテンツも増えており、規制に対して、理解を示す声もあります。しかし、文化部や広電総局の検閲のやり方に対しては、疑問や不満を隠せない人が多いのも事実です。

 「武媚娘伝奇」の奇抜な編集について、ネット上では批判の声が絶えません。テレビ画面に「頭」だけが残ったことについて、ネットでは「大頭」と呼ぶようになり、ドラマのタイトルを茶化す人も相次いでいます。

「『武媚娘伝奇』より『武大頭の冒険』の名前が相応しい!」
「ドラマは『武大頭と彼女の友人たち』と呼ぶべきだ」

 さらに、このまま露出禁止を厳しくするならば、10年後の中国のテレビ画面はイスラム風で、女性たちはみんな黒い服とベールに包まれ、目しか露出できないのではないか、と中国の検閲制度を風刺するユーザーも。

逆に人気上昇も

 今回の日本のアニメのブラックリストについて、ネット上では様々な意見が出ました。完全に放送禁止にするより、年齢制限を設けるべきではないかという指摘や、日本のようにアニメを深夜に放送するべきだという意見もありました。

 一方、ブラックリスト入りによって、逆に人気が高まると予測するユーザーもいます。実際、「武媚娘伝奇」も検閲を受けた後に話題性が高まり、視聴率が上がりました。

「偉大な中国の復興」実現のため

習近平国家主席
習近平国家主席

 最近では、文化産業にも力を入れている習近平体制。2014年10月には北京で「文芸工作座談会」が開催され、文芸、演劇、音楽、舞踊、美術、書道、映画テレビの代表者72人が集まりました。習近平国家主席も自ら会議を司会し、参加者たちと会談しました。その中で、文芸(文化)は階級・政治と切っても切れない関係にあり、文芸も「中国夢(チャイナドリーム=偉大な中国の復興)」の実現のために役立たなければならないと、強調しました。

 この「文芸工作座談会」は、現在の文化産業の規制と関連すると考えられ、政府は今後も規制強化を続けると見られています。中国政府の態度は、中国のアニメファンはもちろん、アニメ業界にとっても目が離せない状況になっています。

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