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アイドル界に新ジャンル「リキッド級」 知名度と親近感どっちも堪能

アイドル戦国時代の中、注目されているが1千人規模のライブを開ける人気がある「リキッドレベル」アイドルです。AKBでも地下でもない、その魅力とは?

ヒップホップアイドルという珍しい形で活動する「lyrical school(リリカルスクール)」
ヒップホップアイドルという珍しい形で活動する「lyrical school(リリカルスクール)」 出典: 朝日新聞

目次

 アイドル戦国時代の中、AKBのようなトップアイドルほどの知名度はないけれど、地下アイドルほどマニアックでもない、そんな立ち位置の「リキッドレベル」と呼ばれるアイドルが注目されています。コアなファン以外にも浸透しつつあり、これからトップアイドルに羽ばたこうとしている、成長中のポジションです。東京・恵比寿にあるライブハウス「リキッドルーム」が満杯になるくらいの、1000人規模のライブが開けるアイドルを指します。アイドルの醍醐味が全部詰まっていると言われる「リキッドレベル」の魅力とは何なのでしょうか?

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トップから地下まで、過熱するアイドル業界

 現在のアイドル業界は、2000年代の「不遇」と言われた時代を経て、これまでにない盛り上がりを見せています。新曲を歌うメンバーを決めるAKB48グループの「総選挙」は、毎年の恒例行事になりました。ももいろクローバーZは、東京ドームで大御所キッスとの共演を成功させました。

 トップアイドルが数万人規模のライブを次々と開く一方、数十人レベルのコアなファンが楽しむ地下アイドルも盛り上がっています。現在、都内で活動する地下アイドルは350組にのぼると言われています。2008年ごろは50組程度だったのが、AKB48やももクロの大成功もあって、2012年ごろに一気に増えました。

KISSの来日記者会見にゲストとして出席したももいろクローバーZ=2015年2月21日、都内、竹谷俊之撮影
KISSの来日記者会見にゲストとして出席したももいろクローバーZ=2015年2月21日、都内、竹谷俊之撮影
都内で活動する地下アイドルは350組にのぼる。ネットサイト「秋葉系アイドルチャンネル」の編集長、楠山幸英さん(34)によると、2008年ごろは50組程度だった。それが、やはり秋葉原などで地道な活動を続けたAKB48やももいろクローバーZの大成功もあって、12年ごろに一気に増え、競争も激化したという。
2015年2月13日:(記者推し!)地下アイドル 都内350組、会って話せて肩車も

トップアイドルへの登竜門

 トップアイドルと地下アイドルの間に位置するのが「リキッドレベル」のアイドルたちです。「リキッド」とは、東京・恵比寿にあるライブハウス「リキッドルーム」のことを指します。スタンディングで1000人ほどが入る大きさで、大物アーティストというよりは、ちょっと個性が強いバンドが多いことで知られています。

東京・恵比寿の「リキッドルーム」であったヤノカミのライブ。矢野顕子(左)とレイ・ハラカミ=2007年8月
東京・恵比寿の「リキッドルーム」であったヤノカミのライブ。矢野顕子(左)とレイ・ハラカミ=2007年8月

 「リキッドレベル」のアイドルをまとめると、こんなアイドルになります。

 武道館公演などビッグな目標に掲げて活動を続けてきて、いよいよトップアイドルへの道へ踏み出そうとしている。

 地下アイドルよりも規模の大きいライブを開くけれど、地下アイドル的なファンとの距離の近さがある。

 1000人くらいのキャパを単独公演で埋められて、トップアイドルとしても活躍できそうな個性がある。

ねぎっこ、目標のステージへ

 代表格が、新潟のご当地アイドル「Negicco(ねぎっこ)」です。2003年の結成から着実にファンを増やしてきました。2015年には「リキッドルーム」でのワンマンライブも成功させています。マネジャーの熊倉維仁さんはこう語ります。

 「できる範囲内でしっかりやってきた。その積み重ねで今がある。3月にあった地元、新潟の十日町駅のイベントも、どうなるかと思ったけれど、ファンの人たちが追いかけてきてくれた。ありがたい」

 ねぎっこは、地元での活動を軸に据えつつ、今年、初の全国ツアーをスタート。彼女たちが目標にしていた新潟県民会館大ホール(1730席)での単独ライブ(5月5日予定)を開けるまでに成長しました。

NGT48発足が明らかになった25日、東京都内でワンマンライブをしていたねぎっこも全国ツアーの日程を発表した=2015年1月25日、タワーレコード提供
NGT48発足が明らかになった25日、東京都内でワンマンライブをしていたねぎっこも全国ツアーの日程を発表した=2015年1月25日、タワーレコード提供

トップと地下、両方の魅力

 ファンにとっては、追っかけているアイドルが夢を実現しようとしているのを、後押しできる実感があります。一方で、まだトップレベルのアイドルではないので、握手会なども気さくに開く親近感があります。トップと地下、その両方の魅了を兼ね備えているのが「リキッドレベル」のアイドルなのです。

 「リキッドレベル」のアイドルは、音楽やパフォーマンス、ツイッターでのキャラクターなど、様々な切り口で自分たちを表現しており、男性以外の女の子のファンを集めることにつながっています。アイドルグッズの代表格、Tシャツには、普段着にも使えるおしゃれなデザインが用意され、女の子が着こなすシーンも考慮されています。ライブでは、女の子が行きやすいように専用エリアが設けられることもあります。

「ストーリーに自分も参加できる」

 「リキッドレベル」のアイドルに注目しているライターの塩澤彩さんは、こう語ります。

 「手が届かないレベルには行っていないけど、プロとして、それなりの規模のライブを開ける。その一方で、ツイッターなどでは、街で手軽に買えるような私物をアップしていたり、ファンでも真似出来るような親近感がある。何より、武道館のようなゴールに向かっているメンバーのストーリーに自分も参加できるのが、『リキッドレベル』の最大の魅力です」

地下アイドルと記念撮影をするファン=2015年2月3日
地下アイドルと記念撮影をするファン=2015年2月3日

企業も注目、専門レーベル

 「リキッドレベル」のアイドルには、企業も注目しています。タワーレコードはアイドル専門のレーベル「T-Palette Records(ティーパレット)」を立ち上げました。ねぎっこをはじめ「リキッドレベル」のアイドルが多数、所属しています。店内にはアイドルコーナーを設け、インストアライブも積極的に開き、ファンとアイドルをつなげています。


「『アイドル』の中に様々なジャンル」

 塩澤さんは、「リキッドアイドル」からは「現在のアイドルの特徴が見えてくる」と指摘します。

 「おしゃれなTシャツは、アイドルが物販にも力を入れている現われです。身近な存在であることは、ソーシャルメディアが発達した現在、重要なアイドルの要素です。単なるアイドルではなく、音楽・ファッション・キャラ…何か個性がないと、生き残れません。『アイドル』の中に様々なジャンルが生まれているのが、今の『アイドル』なのです」

「リキッドレベル」から羽ばたいたPerfume

 SPEEDに憧れてデビューしたPerfumeは、「リキッドレベル」から羽ばたいた元祖ともいえる存在です。テクノ路線になった2007年に出した「ポリリズム」が大ヒットした頃、ライブハウスに頻繁に出演し、当時のアイドルとは毛色の違う活動を重ねていました。そして、同じ2007年、「リキッドルーム」でのライブが大成功し、一躍、その名を知られるようになりました。

 個性的なアーティストが集まる「リキッドルーム」は、個性が重要な現代のアイドルにとっても、重要な存在と言えそうです。

「リキッドレベル」だった頃のパフューム。(左から)樫野有香(かしゆか)、西脇綾香(あ~ちゃん)、大本彩乃(のっち)=2007年8月24日
「リキッドレベル」だった頃のパフューム。(左から)樫野有香(かしゆか)、西脇綾香(あ~ちゃん)、大本彩乃(のっち)=2007年8月24日

注目の「リキッドレベル」アイドル

 塩澤さんが注目する「リキッドレベル」アイドルを紹介します。

【Especia(エスペシア)】
 大阪を中心に活動する5人組。80年代から90年代のディスコや、ファンクをイメージさせる音楽、ファッション、ビジュアルが特徴です。クールなキャラから、ちょっとマニアックなメンバーまで、個性の幅が広いのも魅力。


【BELLRING少女ハート(ベルハー)】
 黒いセーラー服で、サイケデリックやグランジロック風の曲を歌う6人組。ほんわかしたルックスと熱いパフォーマンスとのギャップで、注目を集めています。


【lyrical school(リリカルスクール)】
 ヒップホップアイドルという珍しい形で活動する6人組。アイドルでは一般的なコール(ファンが同じかけ声をして一体化する声援)のないライブは、性別や年齢問わず、気軽に踊れて盛り上がれると評判です。


【Negicco(ねぎっこ)】
 新潟県のご当地アイドル3人組。自然体のキャラが魅力で、新潟を中心にファンを増やしてきました。AKB48の姉妹グループ「NGT48」の新潟進出の際も「新潟可愛い子多いのでかなりいいグループになるのではと思います」と、持ち前の「戦わないアイドル」キャラで反応しました。


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