話題
わいせつかアートか ろくでなし子が初公判で語った言葉の全文
わいせつか、アートか。作品が罪に問われた、ろくでなし子さんの初公判で彼女が語った言葉の全文です。
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わいせつか、アートか。作品が罪に問われた、ろくでなし子さんの初公判で彼女が語った言葉の全文です。
わいせつか、アートか。3Dプリンター用のデータを配布したり、女性器をかたどった「作品」を陳列したりしたとして、わいせつ物陳列などの罪に問われた漫画家のろくでなし子さん(42)=本名・五十嵐恵=の初公判で15日、東京地裁でありました。法廷で彼女が語った言葉(意見陳述)の要旨全文です(性的表現も含め、原文のままです)。
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起訴状に書かれている外形的な事実関係は争いませんが、女性器のデータ、女性器を元にしたわたしのアート作品は、「わいせつ」ではありませんので、私は無罪です。
わたしは女性器をモチーフにアート活動をしています。この活動をはじめて3年半が経ちました。多くの人には理解されない事ですので、わたしを罵る人もいました。インターネットでは攻撃され、ついには2014年の7月と12月、合計2回も逮捕勾留されてしまいました。
わたしがなぜ女性器をモチーフにしたり、女性器の名称である「まんこ」という三文字を発信し続けてきたかと言えば、女性であるわたしにとっては、女性器は自分の大事な体の一部分に過ぎないものであるにも関わらず、ここ日本においては蔑まれ、汚いものや恥ずかしいもの、いやらしいものとして扱われ、とてもおかしいと強く感じたからこそでした。
雑誌では女性器の名称が必ず伏せ字にされ、タレントがテレビでその名称を口にしただけで降板されてしまいます。おかしな事に、男性器の名称やセックスを煽るもっといやらしい表現や言葉に対しては、NGとされず、それらは電車の中吊り広告やインターネットに今日もあふれています。ここまで「単なる女性器にのみ」拒絶反応を示すのは異常であると思います。わたし自身も気づかずにそのおかしな風習に従って生きてきました。しかし、女性器とは、単に人間の女性の体の一部にすぎないものであり、そこから生命が生まれでてくる場所でもあるならば、蔑んだり、いやらしい場所などとみなす事はとてもおかしい話です。
わたしはなぜそんな風になってしまったかを考えました。その結果、女性器はまるで男性の愛玩物のように扱われているのが原因で、根底にあるのは女性差別であると思い至りました。
そこで、わたしの体でありわたしの物であるはずの女性器を取り戻すため、女性器のアートを本気で活動するようになりました。
わたしは、常にセックスや卑猥なイメージを結びつけられる女性器から、それらのイメージを払拭したくて、女性器をモチーフに、ユーモアあふれるたのしい作品を作りました。他の人にも女性器をモチーフにした作品を作成して欲しいと考えて、3Dプリンタ用のデータをアップロードしたURLを送ったり、CD-Rに焼いて渡したりしました。
現代美術にはアート・プロジェクトという概念があります。作品を制作することは勿論、作品制作のプロセスを重視したり、美術館やギャラリーから外に出て社会的な文脈でアートを捉えたり、アートを媒介に社会の意識を変えようとする取り組みを指す概念です。
わたしが、3Dプリンタ用のデータをアップロードしたURLを送ったり、女性器をモチーフにした作品を制作することは、アート・プロジェクトの一環です。
女性器をお菓子に模した「スイーツまん」、
ジオラマ人形をのせた「ジオラまん」、
ラジコンと合体させてリモコンで走る「リモまん」、
アーティストのレディガガさんをイメージした「レディガガまん」、
アーティストの草間彌生さんの作品にオマージュした「草間彌生にオまーんジュまん」、
暗闇で光る女性器の照明器具「シャンデビラ」、
iPhoneカバーにした女性器…(これは作ってみたらiPhoneが入らなかったので、正式名称は「iPhoneが入らないiPhoneカバーまん」です)、
女性器を船にした「マンボート」…。
これらのユーモラスな作品を作り続けることにより、わたしを支持してくれる人達はどんどん増えてゆきました。特に、同じ女性の支持者が増えたのは嬉しかったです。彼女達はわたしの作品を見て、「なぜその名前を言ってはならないのかと改めて考え、自分の体を大切に思うことができるようになった」と口々に言ってくださいました。わたしはそれらを励みに活動に邁進してきました。
そのような中、わたしは2014年7月と12月に2回も逮捕されてしましました。捜査機関の言うことには、わたしの活動や作品がワイセツだとの事ですが、わたしは、常にセックスや卑猥なイメージに結びつけられる女性器から、それらのイメージを払拭したくて、女性器をモチーフに、作品を作り、また、他の人にも作品を作って欲しいと考えていたのです。
わたしは、2度も逮捕勾留された事に対しては不当であると考え、今でも納得がいきません。
しかし、今、このように裁判所に対し、「女性器の3Dデータや女性器を元にした作品は本当にワイセツであるのか?」という判断を仰ぐことができる良い機会を得たと思っています。
最後になりますが、傍聴に来て下さった皆様には、お忙しい中、わたしの初公判を傍聴しに来て下さり、本当にありがとうございます。
これまで、ろくでなし子さんとは随分話をしてきました。彼女は、表現規制推進派ではありません。意見を異にする点もありますが、少なくとも、具体的な被害者のいない表現について、公権力が規制すべきではないという点で私と彼女の見解は一致しています。安心して彼女の裁判を応援して下さいw
— 山口貴士 (@otakulawyer) 2015, 4月 15