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沖縄人が嫌う男、キャラウェイ氏とは? 翁長知事の発言で注目

沖縄県の翁長知事が、管官房長官に対して「キャラウェイ高等弁務官と重なる」と発言し、注目されました。沖縄の人から恐れられたというキャラウェイ氏とはどんな人物だったのでしょうか?

大平正芳外相(右)と会談するキャラウェイ高等弁務官=1964年2月、東京・霞が関
大平正芳外相(右)と会談するキャラウェイ高等弁務官=1964年2月、東京・霞が関

目次

 沖縄県の翁長雄志知事が、菅義偉官房長官に対して「キャラウェイ高等弁務官と重なる」と発言し、注目を集めました。戦後、日本に復帰する前の沖縄で独裁的な政治をおこない、沖縄の人から恐れられたというキャラウェイ氏とは、どんな人物だったのでしょうか?

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沖縄の自治「神話だ」

 ポール・キャラウェイ氏は復帰前の沖縄の最高責任者である第3代高等弁務官として、1961年~1964年に沖縄に在任しました。陸軍中将だったキャラウェイ氏は、琉球政府のことは信用せず、数少ない親米派を重用しました。沖縄の自治権を「神話だ」と評した発言が残り、今も沖縄では批判的なトーンで語られています。

キャラウェイ米高等弁務官(左)=1962年6月
キャラウェイ米高等弁務官(左)=1962年6月
翁長氏は会談で、名護市辺野古での移設作業を「粛々と進める」とする菅氏について「問答無用という姿勢が感じられて、キャラウェイ高等弁務官の姿が重なるような感じがする」と述べた。高等弁務官は復帰前の沖縄の最高責任者で、3代目のポール・キャラウェイ氏は1961~64年に在任した。沖縄の自治権を「神話だ」と評した発言が残り、今も沖縄では批判的なトーンで語られる。
2015年4月7日:菅氏に「キャラウェイ重なる」 翁長知事発言、沖縄で共感:朝日新聞西部本社版から

「5FoolsよりTokyo6が怖い」

 キャラウェイ氏の沖縄への姿勢を現す言葉として象徴的な発言があります。

 「5FoolsよりTokyo6が怖い」

 「5Fools」とは、沖縄タイムズや琉球新報など地元有力者5人を指します。「Tokyo6」は、日本「本土」から来ている報道機関を指します。キャラウェイ氏は、「本土」のメディアを通じて、日本へ特派員として来ているアメリカメディアに沖縄の問題点が知られるのを、恐れていたと言われています。

「5FoolsよりTokyo6が怖い」。強権的な統治手法で知られたキャラウェイ高等弁務官(在任期間六一~六四年)の口ぐせだった。高等弁務官は、米国による沖縄統治のための政府(民政府)の最高責任者だった。「5Fools」とは沖縄タイムス社長や琉球新報社長ら琉球政府主席の公選を求める地元有力者五人。「Tokyo6」は日本「本土」から来ている時事、共同両通信、朝日、読売、毎日各新聞、NHKの特派員を指していた。
 民政府への批判が東京に伝わると、米国人東京特派員の知るところとなって記事になり、米国本国の反響などへの対応に追われるからだった。
 「外からの鍵」、沖縄以外のメディアが沖縄に目を向けるまでには戦後、長い時間がかかった。
1996年4月11日:メディアの役割 「復帰」まで関心薄く(沖縄 返還交渉と安保:5):朝日新聞ん紙面から

重用されたアメリカ留学組「金門クラブ」

 そんなキャラウェイ氏に重用されたのが、沖縄からアメリカへの留学制度を利用して留学した人たちです。留学生たちはサンフランシスコのゴールデンゲート(金門橋)にちなみ、「金門クラブ」という親睦会を結成しました。

サンフランシスコ湾にかかる金門橋。沖縄からの留学生たちはこの橋をくぐって米国へ入った=2013年6月19日、米サンフランシスコ市
サンフランシスコ湾にかかる金門橋。沖縄からの留学生たちはこの橋をくぐって米国へ入った=2013年6月19日、米サンフランシスコ市
 那覇市に住む著者の公認会計士、外間完和(ほかまかんわ)さんは七十二歳になる。琉球政府の金融検査部長として、不正の横行する金融界の浄化にらつ腕を振るった。沖縄が米国統治下にあった一九六〇年代前半のことだ。
 米国は沖縄統治の最高責任者に、強大な権限を持つ高等弁務官を置いた。「キャラウエイ」とは、独裁的な施政がいまも語り草になる三代目の高等弁務官ポール・キャラウェーのことだ。
留学生たちの「金門クラブ」(沖縄 アメリカの光と影:6):朝日新聞

「アメリカの走狗」と陰口

 金門クラブのメンバーは、重要な役職を与えられる人が少なくありませんでした。一方で、アメリカへの抵抗感が強い地元の人たちからは、批判的に見られる場面も少なくありませんでした。金門クラブは、「アメリカの親衛隊」と陰口をたたかれる存在になっていきました。

アメリカ軍楚辺通信所、通称「象のオリ」
アメリカ軍楚辺通信所、通称「象のオリ」
外間さんは、そのキャラウェーから、金融界粛正の指揮官役に抜てきされた。琉球大学の助教授で会計学が分かったからだ。迷った末に引き受け、腹を決めたように厳しい摘発を続けた。仕事ぶりにキャラウェーは満足した。
 そんな外間さんに、周囲の冷ややかな視線がついてまわる。
 「アメリカの走狗(そうく)とか、買弁とか、ひどい言い方をされました。実際、妻は一時期、外も歩けないほどだった」
2000年7月18日:留学生たちの「金門クラブ」(沖縄 アメリカの光と影:6):朝日新聞紙面から

翁長氏の発言、地元紙は「歴史的」

 そんな、キャラウェイ氏を、あえて持ち出した翁長知事の発言。沖縄タイムス、琉球新報の地元2紙は4月6日、会談を伝える朝刊1面のトップ記事で「キャラウェイ」発言を引用。琉球新報は一番大きな横見出しで「『キャラウェイ重なる』」とうたいました。松元剛報道本部長(49)は「沖縄と政府のとげとげしい現状を端的に浮かび上がらせた歴史的発言」としています。

 比屋根照夫・琉球大名誉教授は「問題を単純化して『辺野古か普天間か』と二者択一を迫る政府に対し、『沖縄の歴史全体を見てください。これ以上の基地はだめです』という思いを込めた痛烈な批判だったのでは。相当なメッセージだと受けとってほしい」と話しています。

初会談に臨む菅官房長官(左)と沖縄県の翁長知事=5日午前9時32分、那覇市内のホテル、上田幸一撮影
初会談に臨む菅官房長官(左)と沖縄県の翁長知事=5日午前9時32分、那覇市内のホテル、上田幸一撮影
出典: 朝日新聞

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