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アラジンさんからの取材リクエスト

民間人の大使って、どうやって選ばれて就任しているの?給与や待遇は官僚と違う?



民間人が大使になるには? 給料は? アメリカでは意外と普通・・・

民間人の大使はどうやったらなれるのか。給料は? アメリカでは民間人の大使の方が当たり前な理由とは?

日米野球の始球式で球を投げるケネディ駐日大使(手前)と王貞治氏=2014年11月14日、井手さゆり撮影
日米野球の始球式で球を投げるケネディ駐日大使(手前)と王貞治氏=2014年11月14日、井手さゆり撮影 出典: 朝日新聞

目次

取材リクエスト内容

民間人が大使に就任するケースが最近散見されますが、どのようなプロセスで人選され、就任しているのでしょうか。給与や待遇といった身分的な点は、官僚が大使に就任するケースと違うところはあるのでしょうか。 アラジン

記者がお答えします!

 民間人の大使はどうやったらなれるのでしょうか。給料に違いはあるのでしょうか? 日本ではなかなか見られない民間人の大使ですが、アメリカでは、むしろ民間人が当たり前になっています。その理由とは?

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【動画】馬車で皇居に向かう民間人出身のケネディ駐日大使。天皇陛下にオバマ大統領からの信任状を届ける「信任状奉呈式」に臨んだ=2013年11月

丹羽氏の中国大使就任で注目

 民間人の大使が注目されたのは、丹羽宇一郎氏が中国大使になった2010年6月です。それまでアフリカなどで民間人の大使の前例はありましたが、主要国の大使としては、初めてのことでした。丹羽氏は、伊藤忠商事の商社マンで、1998年に社長になると中国企業への投融資に積極的に取り組みました。中国大使になる前は相談役でした。

丹羽宇一郎氏
丹羽宇一郎氏

大使の決め方、民間人も同じ

 大使は外務大臣の推薦により、内閣が決定、天皇によって認証されます。民間人の場合も同じです。丹羽氏の時は、2010年6月に当時、首相だった菅直人氏が内閣の目玉として起用を決めました。対中外交は歴史問題や共産党体制の特殊性などから豊富な知識と経験が必要とされ、大使は外務省の幹部経験者が歴任していました。「チャイナスクール」と呼ばれる省内の中国専門家の起用が続く中での民間人の起用は異例の出来事でした。

ルース駐日米大使(左)と握手を交わす菅直人首相=2010年6月22日
ルース駐日米大使(左)と握手を交わす菅直人首相=2010年6月22日

給料も同じ、だけど額は秘密

 大使の給料は民間でも変わりません。給料の額は「特別職の職員の給与に関する法律」で定められています。
 法律では、三号俸(119万8000円)、二号俸(105万5000円)、一号俸(93万1000円)の3種類が定められています。中国大使はどれに当たるのか。外務省に聞いてみたところ「それはちょっと答えられません・・・」という返事。他の国との関係で、ランク付けのように受け止められてしまう可能性もあるため、公開していないそうです。勤務地の仕事の大変さなど総合的に判断して決めているそうです。大使には、給与の他に、住宅手当なども経費として支払われます。

民間人大使のメリットは

 民間人が大使になるメリットとして、丹羽氏の時に注目されたのは経営者の視点です。中国国内での知的財産権の保護や、法令の解釈など、ビジネスの現場で培った経験を外交に活かせる点が注目されました。一方で、利権が絡む場面もあることから、丹羽氏の就任時には中立公正の立場を求める声も出ました。

 そんな丹羽氏でしたが、現場では思うように動けない場面もあったようです。2012年9月の尖閣諸島国有化をめぐり「計画が実行されれば、日中関係にきわめて深刻な危機をもたらす」と発言。この発言に対し、「国益に反する」と批判が起きました。当時の状況について、丹羽氏は2014年1月の取材に、こう答えていました。「政治が決めたことに、官僚は文句を言えないんだよ。官僚の限界だ」

国・チベット自治区ラサ中心部のチベット宗教画「タンカ」の店を見学する丹羽宇一郎氏=2011年8月20日
国・チベット自治区ラサ中心部のチベット宗教画「タンカ」の店を見学する丹羽宇一郎氏=2011年8月20日
尖閣問題では、東京都の購入計画に振り回された。そんなさなか、丹羽の発言が思わぬ騒ぎに発展する。英フィナンシャル・タイムズのインタビューでこう答えた。「計画が実行されれば、日中関係にきわめて深刻な危機をもたらす」。日本に伝わると、批判が渦巻いた。「尖閣は日本の領土。東京都が買っても対外的な問題にならない」というのが公式見解。当時の外相だった玄葉光一郎(49)は「政府の見解と違う。私の名前で注意した」と丹羽の発言を打ち消した。しかし、「国益に反する」と丹羽の更迭を求める声が野党からあがった。玄葉に注意されたが、釈然としない。日本の領土であるとの認識に違いはない。ただ、尖閣諸島を購入すれば中国が猛反発する、と現場から警告を発したつもりだった。
2014年1月4日:(逆風満帆)前中国大使・丹羽宇一郎:上 尖閣に始まり、尖閣に終わる:朝日新聞紙面から

アメリカは民間人が普通、現地の言葉も・・・

 ところで、アメリカが主要国に駐在させる大使は、民間人が多いのが特徴です。大統領の友人や多額の寄付をした支援者が就くケースが少なくなく、現地の言葉を話さない人も珍しくありません。
 その理由は、世界一の軍事力の経済力、情報発信力にあると言われています。国力を背景に、アメリカ大使は現地の大統領や首相、主要閣僚に簡単に会うことができます。日本をはじめ多くの国の大使が職業外交官で、駐在国の事情も言葉も必死に学んで情報収集に励むのとは対照的です。

 現在の駐日アメリカ大使は故ケネディ元大統領の娘キャロライン・ケネディ氏です。駐日アメリカ大使になる前に政治や外交の公職に就いたことありませんでした。ケネディ氏は2度の大統領選でオバマ氏を支持しており、その貢献により大使に選ばれたと言われています。

 駐米大使をつとめた藤崎一郎氏は、大使を退任した直後の2012年12月、次のように話していました。「米国大使も、それなりに大変なのだろうが、政府高官らに会うための労力が少なくて済むのは確かだ」

島第一原発1、2号機中央制御室を視察する、キャロライン・ケネディ駐日米大使(中央)=2014年5月14日、福島県大熊町、代表撮影
島第一原発1、2号機中央制御室を視察する、キャロライン・ケネディ駐日米大使(中央)=2014年5月14日、福島県大熊町、代表撮影
圧倒的な軍事力と情報発信力、衰えたといえども世界一の経済力。それを背景に、各国駐在の米国大使は大統領、首相、主要閣僚らに、簡単に会える。国会議員や経済人も、情報を寄せてくる。「米国大使も、それなりに大変なのだろうが、政府高官らに会うための労力が少なくて済むのは確かだ」と藤崎氏。
2012年12月5日:(窓・論説委員室から)米国大使は特殊? :朝日新聞紙面から

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