お金と仕事
たかの友梨をマタハラで提訴 女性社員「長時間労働で切迫早産」
エステサロン「たかの友梨ビューティクリニック」の女性社員が、妊娠中に“マタニティ・ハラスメント”があったとして、運営会社を相手取って慰謝料200万円を求める訴訟を起こしました。
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エステサロン「たかの友梨ビューティクリニック」の女性社員が、妊娠中に“マタニティ・ハラスメント”があったとして、運営会社を相手取って慰謝料200万円を求める訴訟を起こしました。
エステサロン「たかの友梨ビューティクリニック」の女性社員が29日、妊娠したのに適正な産休をなかなか認めてもらえなかったり、負担の重い職場で長時間労働を続けさせられたりしたとして、運営会社「不二ビューティ」(高野友梨社長)を相手取り慰謝料200万円を求める訴訟を東京地裁に起こした。女性社員は「お腹の張りと腰痛がひどかったのに、出産の3カ月前まで朝9時から夜10時まで働き、切迫早産になった」と“マタニティ・ハラスメント”を訴えている。
弁護団などによると、原告は都内の店舗で働いていた20代後半の女性社員。これまで首都圏を中心にたかの友梨グループの10以上の店舗で美容の施術をする「エステティシャン」として勤務してきた。去年12月に妊娠が分かり、店長らを通じて会社側に産前・産後の休暇取得などを相談したが、「4月以降に産休に入るか退職かを選ぶように」「産休に入るなら1年で復帰しないといけない」などと説明されたという。
労働基準法は、6週間以内に出産する女性が休業を求めた場合には産前休暇を与えるよう定めている。この女性社員は8月下旬に出産予定だったため、本来なら7月から産休に入れるところ、会社側の都合に従うよう促されたという。
さらに、法律上は子どもが1歳になるまで育児休暇を取ることが可能だが、出産から半年ほどで「フルタイムの正社員として必ず戻ってこなければならない」と会社側に通告された。産休の取得条件として子どもを必ず保育園に入れることが求められ、女性社員は5月下旬に「おうかがい書」と呼ばれる書類を高野友梨氏あてに提出させられた。女性の自宅近くの保育園を3つ以上書かされ、子どもを迎えに行けない時に代わりとなる人物の名前まで記載させられたという。
女性の代理人の佐々木亮弁護士は記者会見で「産休や育休をなかなかとらせないことが、妊娠した女性社員たちに退職を促すことにつながっている」と指摘した。
この女性社員は入社以降、長時間の残業が続き、今回の提訴では未払いの残業代約1400万円(時効とならない過去2年間)も求めた。残業は毎月80時間程度、最大で200時間も及んだ。勤務中は食事のための5~15分ほどの休憩しか取れなかったという。
女性社員は妊娠後に仕事の負担が軽くなるよう、フロントでの受付業務への配置転換を求めたが拒否された。出産予定日の3カ月前の5月になっても連日午前9時~午後10時半ごろまで12時間以上の勤務が続いたため、女性は胎児への影響を考えて、やむなく休職し、7月から産休に入った。女性は医師に早産にいたる可能性が高い「切迫早産」と診断され、2カ月ほどは自宅で絶対安静を指示されたという。代理人の小野山静弁護士は「妊婦を負担の軽い『軽易業務』に移さないのは、明らかな労基法違反だ」と述べた。
たかの友梨グループは売上高160億円(2013年9月期)、全国に120店舗があり、約800人の女性エステティシャンがいるという。原告女性を支援しているエステ・ユニオンの青木耕太郎執行委員は会見で「今回は結果的に産休は取得できているが、同じような状況で産休や育休が認めてもらえず、退職に追い込まれている女性が少なくない」と指摘した。
不二ビューティ側は取材に対し「訴状をみた上で適切な対応をしていく。これまでも団体交渉で誠意をもって対応してきた。団体交渉の中でマタハラの件も出たが、事実確認をした結果、そうした事実はなかったと認識している」と回答した。
たかの友梨をめぐっては同日、仙台店でも女性従業員2人(1人は退職)の残業代未払いがあったとして、約2年分の計1千万円の支払いをそれぞれ求める訴訟を仙台地裁で起こされている。